日本眼科学会:緑内障診療ガイドライン
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ガイドライン・答申

緑内障診療ガイドライン

巻頭言

 緑内障は40歳以上の5.8%前後が罹患し、適切に治療されなければ失明に至る重篤な視機能障害をもたらす疾患である。現在の高齢化社会において緑内障は中途失明原因の第二位をして占めており、その診断・治療・管理を適切に行うことは、人々の生活の質の保持の上だけではなく、社会の医療負担の増加を抑制する上でも極めて重要である。
 緑内障は純粋な疾患単位ではなく、症候群と理解されるべきであり、その診断と治療、管理に際してはしばしば長期にわたる経過のもたらす錯綜した臨床所見を整理する知識と思考能力が要求される。
 このような背景を考慮し、日本緑内障学会は眼科医が日常診療の場で緑内障に対して適切な診断・治療を含む医療行為を行うことを助けることを目的として本ガイドラインを作成した。
 本ガイドラインは現在の緑内障診療の基準とされるべき在り方を体系的に示すことを試みたものである。しかしながら、本ガイドラインは個々の臨床状況での医師の判断を束縛し特定の方向づけを強制するものではない。本ガイドラインを参考とすることにより、診療レベルの向上とともに診療間の差異が減少することが望まれる。一方、ガイドラインがあまりに重視され臨床医の個々の状況への個別的対応を制約し今後の進歩の診療の場への導入に対する臨床医の柔軟さを損ねることがあってはならない。
 本ガイドラインが我が国の緑内障診療の向上に資することがあれば関係者一同の喜びはこれに過ぐるものはない。

2002年9月

日本緑内障学会
理事長 北澤 克明

日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会
委員長:阿部 春樹
委員(五十音順):桑山 泰明、白柏 基宏、白土 城照、谷原 秀信、山本 哲也

日本緑内障学会緑内障診療ガイドラインの執筆者および執筆協力者
執筆者(五十音順):阿部 春樹、北澤 克明、桑山 泰明、白柏 基宏、白土 城照、谷原 秀信、山本 哲也
執筆協力者:八百枝 潔

緒言

 緑内障は我が国における失明原因の常に上位を占め、社会的にも非常に重要な疾患である。1988〜1989年にかけて、我が国7地区で行われた緑内障調査によると、40歳以上の緑内障患者は推定3.56%であった。さらに2000〜2002年に行われた詳細な緑内障疫学調査(Tajimi Study)では、病型別では、いわゆる原発開放隅角緑内障が0.32%であったのに対し、正常眼圧緑内障は3.60%と原発開放隅角緑内障の11倍強の結果であった。したがって、我が国では、緑内障は決して稀な疾患ではなく、また、正常眼圧緑内障が予想以上に多いことが示された。さらに、同疫学調査において、緑内障の新規発見率は89%であったことから、我が国では、未だ治療を受けていない緑内障患者が多数潜在していることも明らかとなった。
 緑内障の中で最も多数を占めている原発開放隅角緑内障や正常眼圧緑内障の視神経障害および視野障害は、基本的には進行性であり、非可逆的である。これらの緑内障では、患者の自覚なしに障害が徐々に進行するため、その早期発見と早期治療による障害の進行の阻止あるいは抑制が重要課題となる。
 近年、緑内障に対する診断と治療の進歩は目覚しく、新たな診断および治療手段が多数臨床導入され、緑内障の診断と治療は多様化している。しかしながら、個々の症例に適した診断および治療手段を選択し、早期診断と早期治療を行い、さらにquality of life(QOL)あるいはquality of visionを考慮した疾患の管理を長期にわたって行うことは、必ずしも容易ではない。また、診断と治療の様々な選択肢を駆使しても、障害の進行を阻止あるいは抑制できない症例が少なからず存在しており、大きな問題となっている。
 特に最近の医療の技術革新に伴って、治療水準の維持と向上が重視されており、治療の質を向上させる目的から、近年緑内障診療ガイドライン作成の必要性が高まってきた。さらに、患者と医療者側のコミュニケーションや、治療の選択とその情報の共有化、そしてチーム医療においてガイドラインが有用であるとされている。その他に社会的な背景として、医療のグローバル化への対応や医療経済の観点から医療資源の効率的利用による医療費の節減が求められている。
 このような背景のもとに、日本緑内障学会では、緑内障診療ガイドラインを作成した。本書では、まず緑内障の診断と治療に関する要点を「フローチャートで示した後、「緑内障の定義A「緑内障の検査A「緑内障の分類A「緑内障の治療総論A「緑内障の病型別治療」の5章に分けて解説を加えた。本書が日常の緑内障診療の一助として広く活用され、役立つことを期待する。

医療は本来医師の裁量に基づいて行われるものであり、医師は個々の症例に最も適した診断と治療を行うべきである。日本緑内障学会は、本ガイドラインを用いて行われた医療行為により生じた法律上のいかなる問題に対して、その責任義務を負うものではない。

ガイドライン:緑内障診療

フローチャート(124k)
第1章 緑内障の定義(36k)
第2章 緑内障の分類(260k)
第3章 緑内障の検査(352k)
第4章 緑内障の治療総論(484k)
第5章 緑内障の病型別治療(388k)

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