日本眼科学会:感染性角膜炎診療ガイドライン(第2版)
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感染性角膜炎診療ガイドライン(第2版)

巻頭言

 感染性角膜炎には、宿主の条件だけでなく、医療環境、微生物の三者が密接に関連しており、宿主の条件だけで決まる遺伝性疾患などよりも、病態は格段に複雑である。このようにさまざまな条件下に生じる多様な微生物感染に対応していく必要上、感染性角膜炎の診療においては一律な対応が行いにくい側面もあり、どうしても個々の医師によるcase by caseの対応ということになりがちであった。しかしながら、その複雑さゆえに、逆に全体の基本となる診断・治療の方針を定めたガイドラインの策定が必要であるとの判断のもと日本眼感染症学会主導で2007年に感染性角膜炎診療ガイドラインが作成され、日眼会誌の第111巻第10号に掲載された。しかし、ガイドラインは医学・医療の進歩に従って改訂を行っていかなければ、実態からかけ離れたものとなっていくおそれがあり、古いガイドラインのままでは逆にガイドラインに沿って行ったことにより、患者にとって不利益をもたらすことさえ起こり得る。そのため、感染性角膜炎診療ガイドラインについても改訂が待たれていたが、このたびようやく第2版として日眼会誌に載せていただく運びとなった。
 本来、ガイドラインは経験則ではなく、種々のevidenceをもとに構築されるべきものである。しかし、第1版が作製された時点では、特に我が国の角膜感染症に関するevidenceは決して十分とはいえず、多施設スタディを行う必要性が痛感された。その後、日本眼感染症学会でも、「重症コンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査」、「眼感染症起炎菌・薬剤感受性多施設調査」を行い、また、今回のガイドラインには間に合わなかったが、「真菌性角膜炎に関する多施設共同前向き観察研究」も現在進行中である。その他にも角膜ヘルペスについては免疫クロマトグラフィ法の多施設スタディが行われるなど、evidenceが蓄積されてきており、その一部を今回の改訂に反映させている。また、第1版の時点ではまだその実態に不明な点が多く、広く認識されていないということで見送りとなっていたサイトメガロウイルス角膜内皮炎について、その後さまざまなevidenceが積み上げられ、ガイドラインに記載のないこと自体が問題となるレベルになってきており、今回これを第2章に新たに付け加えることとなった。さらに、使用可能な抗菌点眼薬が変わったこと(具体的にはフルオロキノロン系が増え、それ以外の系統の点眼薬が発売中止で減少している)、抗真菌薬としてボリコナゾールが使われるようになったことなどにより、治療方針についても変更があった。
 本ガイドラインは臨床実地になるべく即することをめざしたため、最初の診断の項目を病原体別には分けず、臨床所見から入るような形式をとっている。これは、実際の臨床の現場では、患者の来院時にそれが何の感染であるか、あるいはそもそも感染かどうかも分かっていないはずだからである。今回の改訂ではこのような形式を踏襲して、第1版の多くの部分はそのままとして、それに小改訂を加える形をとっている。また、検査についても第1版同様、一般眼科医で施行できる範囲は限られていることを鑑み、最も基本となる塗抹検鏡以外は、ポイントのみを挙げるにとどめ、詳しい方法についてはAppendixとして巻末にまとめている。
 本ガイドラインは臨床所見から入る形式からも分かるように、教科書的な性格を合わせ持っており、その意味で実地に即して参照しやすいとの意見がある反面、本来は、教科書とは一線を画すべきガイドラインとしてはある意味まだまだ未熟といえるものである。したがって、今後も引き続き改訂を行っていき、いずれは大きくそのフォーマットを変えてガイドラインとして成熟させていく必要があると考えている。
 それに生かせるように、本ガイドラインについての忌憚のないご意見を、日本眼感染症学会事務局(folia@hcn.zaq.ne.jp)までお寄せいただければ幸いである。

2013年2月6日

日本眼感染症学会
理事長 井上 幸次

日本眼感染症学会 感染性角膜炎診療ガイドライン第2版作成委員会
委員長:井上 幸次
副委員長:大橋 裕一
委員(五十音順):浅利 誠志、石橋 康久、宇野 敏彦、木下  茂、塩田  洋、下村 嘉一、田川 義継、秦野  寛、松本 光希

執筆者(五十音順)
浅利 誠志、石橋 康久、稲田 紀子、井上 智之、井上 幸次、宇野 敏彦、江口  洋、大橋 裕一、岡本 茂樹、亀井 裕子、北川 和子、小泉 範子、下村 嘉一、白石  敦、鈴木  崇、外園 千恵、高村 悦子、田川 義継、豊川 真弘、内藤  毅、秦野  寛、檜垣 史郎、福田 昌彦、星  最智、松本 光希、宮崎  大

医療は本来医師の裁量に基づいて行われるものであり、医師は個々の症例に最も適した診断と治療を行うべきである。日本眼感染症学会は、本ガイドラインを用いて行われた医療行為により生じた法律上のいかなる問題に対して、その責任義務を負うものではない。

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