日本眼科学会:理事会から(109巻6号)
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Home会員のみなさまへ理事会から > 外保連実務委員からみた医療事情(109巻6号)
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外保連実務委員からみた医療事情

 会計担当理事であるので、前回の「理事会から」では日本眼科学会の財務状況を解説しましたが、今回はもう一つの担当である外科系学会社会保険委員会連合(外保連)の実務委員からみた、最近の医療情勢を考えてみたいと思います。外保連では、手術、処置、検査の各委員会と実務委員会があり、各委員会では手術、検査などを保険に収載するための調査や、いわゆる診療報酬点数に対する要求を具体的に検討しています。実務委員はそれらをまとめて、厚生労働省(厚労省)に陳情するための要望書を作成することになっています。

 外保連の手術委員会では現在、外科系学会に関連する施設を対象に各科のそれぞれの手術について、実態調査をしています。すなわち、厚労省に手術点数に関する要望をするとしても、ある一つの手術についての手術者数、看護師数、パラメディカルスタッフ数、手術時間、手術の難易度などが、実態とはあまりにもかけ離れているようでは、説得力に欠けるということで見直しをしています。今までは、各加盟学会が、これらを独自に判定して、そのまま要望として提出してきましたが、現状をみるとやや過大気味であるとの判断があったようです。実態調査の結果についての報告はまだありませんが、すべての眼科手術も調査されているはずです。白内障手術は簡単で、短時間でできるということばかりが強調される風潮が一部にありますが、実態調査の結果の解析に注意しないと、保険点数上困ったことになる恐れがあります。

 さらに、手術委員会ではもう一つの調査が進行中です。かねてより外保連では、手術点数に差をつける施設基準の導入に反対してきました。この制度は、乱暴にいえば手術件数が多い施設とそうでない施設との間に保険点数の差をつけるというものです。外保連は、手術点数は手術の質によって決めるべきで、手術件数ではないという立場であり、手術件数を施設基準を決定する大きな要因とすることに反対しています。しかしながら、反対、反対といくらいってみても根拠を示さなければ、説得力に欠けます。そこで外保連は、施設基準が対象となる手術についての実態調査を行うことにしました。すなわち、施設基準を満たす施設と満たさない施設での手術成績を比較しようとするものです。眼科領域では、角膜移植、涙嚢鼻腔吻合術、黄斑下手術など(硝子体茎顕微鏡下離断術・膜処理を含むもの、増殖性硝子体網膜症)の調査を行っています。外保連としては、手術成績に差がないことを期待しての実態調査ですが、期待どおりの結果が出るか不明です。この診療報酬点数に施設基準という制度が導入されたことにより、実際の医療現場では2つの弊害が生じたと思います。一つは、個人ないし地方病院の中で、施設基準の対象となる手術を止めてしまった施設が出てきたことです。よく見受けられるのは、大学病院から硝子体手術のできる医師を派遣してもらって、地元の患者に手術を提供していたが、手術点数の減少によって、採算面から医師の派遣依頼を断念してしまったため、地元患者はわざわざ遠い病院まで出向かなくてはいけないという事態に陥りました。患者にとって病院へのアクセスが悪くなり、時間的、経済的、身体的負担が大きくなり、大変不幸なことが起こりました。もう一つは、手術基準を満たすためにある施設では手術件数を無理に増やすということが起こりました。すなわち、手術の適応を拡大したり、手術術式を変更することによって、手術件数を増やした訳です。手術の適応を決めるということは、絶対適応と比較適応という言葉があるように、必ずしも明確な線引きがあるわけではありません。その適応基準を少し拡大すると手術適応となる例が増加することになります。極端な例としては新聞紙上を賑わした富士見産婦人科病院の例があるかも知れません。新聞報道によると、当時の病院長は、手術適応にかなっているとして、医師の資格停止に反論して訴訟を起こしています。このように施設基準の導入は、結果的には医療費の増大につながり、厚労省が目ざした目論見とは大きく違った結果となっていると思います。

 さて、現在の医療行政は、国家財政のほとんど破綻状態の中で、改革が求められています。内閣府の規制改革・民間開放推進会議は、「民間でできることは民間で!」をスローガンに小さな政府を目指した改革を行おうとしています。身近なところでは車検制度の見直しがありますが、社会のあらゆる分野に提案をし、実行を迫っています。医療分野でも効率的な運営を求め、いわゆる混合診療の導入、医療法人を通じた株式会社などの医療機関経営の参入、中央社会保険医療協議会(中医協)の在り方(医療分野における価格決定のメカニズム)の見直し、医療計画(病床規制)の見直し、医薬品の一般小売店での販売、外国人医師・看護婦の円滑な受け入れ、社会保険の民間開放の推進、などを求めております。昨年末のいわゆる混合医療導入をめぐっての厚労省とのやりとりは記憶に新しいと思いますが、「特定療養費制度」を廃止し、「保険導入検討医療(仮称)」と「患者選択同意医療(仮称)」に再構築することで一応の決着をみました。眼科では、いったい何が起こるのか?といいますと、とりあえず将来保険に収載することを前提として、現在では健康保険に収載されていない検査(光干渉断層計、視神経乳頭形状解析、その他多数)について、検査料を自己負担(自費)で請求してよいということになりそうです。そして、2〜3年間の期間を経た後、有効性と安全性が確認されたら、保険に収載するというものです。ただし、その実際の細かな内容については今後つめて行くことになりますので、どの検査が対象になるか、また、検査が許可される施設の線引きなどはまだ明らかになっていません。外保連は、混合診療の導入によって、一部の自費診療が可能となるにしても、医療費が増大するという理由で、新しい検査や技術がいつまでたっても保険に収載されず、自費の検査・技術ばかりが増えてしまうことを危惧しています。

 今さらいうまでもなく、極端な税収の伸びは期待できない中で、平成17年度予算の一般歳出47兆2,829億円の中で社会保障関係費が20兆3,808億円(43.1%)を占めていて、総医療費も毎年1兆円ずつ増加しているとことから、経団連や経済同友会は、これ以上の、医療費の伸びは抑えなくてはならないと、政府に働きかけていますし、新しい老人保険制度も考えているようです。これからますます高齢化社会になるにつれ、疾病を持つ患者は当然増えるでしょうし、自然に医療費が膨らむのは当然と思われます。そこで総医療費の増加を抑制するとなれば、保険点数を下げるか、患者を減らすか、医療の質を落とすか、などが考えられます。規制改革・民間開放推進会議などは、効率の高い医療をすべきだとして、今の出来高払いの医療給付を止めて、定額性や包括医療にすべきだとか、また薬剤や医療機器の価格が外国に比較して非常に高いことも問題視しています。

 いずれにせよ、今後は個々の保険点数が上がることはないと思われる中で、やはり医療従事者も無駄を省いた効率的な医療がますます求められてきそうです。経済が活性化し、国の財政も潤沢であれば、過去のように老人医療の無料化などができ、誰でもが水準の高い医療を平等に受けられるでしょうが、ここまで財政が悪化すると事態は深刻です。今後の税金や保険料の引き上げなどで、国民の負担もますます増大する中で、来年度の医療改革では、介護保険、医療保険全般の方向性が示されると思います。このような厳しい医療状況に対応するために、日本眼科学会と日本眼科医会は、一体となって日本眼科社会保険会議を設立し、眼科の問題、特に診療報酬問題に関する唯一の意思決定機関として位置づけました。従来の眼科医会と眼科学会は診療報酬も含めた保険の問題に関しては、別個にそれぞれ外保連、日本医師会、厚労省などと対応してきましたが、意見を集約して一本化して事に当たることになりました。したがって、眼科医内での意見や利害の食い違いがあっても、国民皆医療保険制度を維持することを最大の命題として活動することが求められていると思います。そのためには、社会に対する啓蒙の一つとして、日常の診療の中でも、患者に今後の危機的な医療状況を説明し、皆の健康を守る医療制度を守ることを強調することが大切です。

財団法人日本眼科学会
常務理事 竹内  忍

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