日本眼科学会:科学者の適正な研究活動における学会の役割(110巻10号)
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科学者の適正な研究活動における学会の役割

 科学の世界で研究者の活動成果としてその業績の価値を決めるのは学術発表、論文の質です。科学者の社会的名声も富も学術発表、論文によって明らかにされる成果で決まりますので、当然、その質において激烈な競争が存在します。これが公正に行われれば研究の発展に寄与するのですが、競争が公正に行われない場合には科学の発展が阻害されます。特に研究における競争が研究費獲得競争に繋がる現実があるとますます激烈になります。研究費には政府からの公的な研究費(文部科学省や厚生労働省など)、企業やその設立する財団からの研究費がありますが、いずれも公的なものです。医学を含めて生命科学が研究費のかかるビッグサイエンスとなった現代において私財をなげうったぐらいでは研究はできなくなってきているのが現状で、公的な資金を獲得することで研究の質が決まる側面もあります。研究費の獲得が公正に行われ、日本における科学技術研究が順調に発展することが日本の国力に直接関係します。内閣府の総合科学会議の策定する科学技術基本計画にもとづいて重点研究分野が決定されますが、平成18年度から5年間の第三期科学技術基本計画の内容としてはライフサイエンス、IT、環境、ナノ・材料の重点4分野という枠は維持しつつ、その中の特定領域のみを重点化する方針とのことです。そして、このような巨大な政府資金をつぎ込む代わりといってはなんですが、研究不正についての議論もかなりやかましくなっています。公的な研究費の運用についてルールを守り、研究成果の発表も公明正大にやってくださいということです。

 今後の激烈な研究での競争、そして研究費獲得競争のなかで眼科学の分野でこれまで以上に日本眼科学会のプレゼンスを高めるためには組織的な動きが必要になってくると考えます。この際に眼科学の必要性と日本の眼科学会が世界をリードしているということを如何にアピールするかがポイントになるように考えます。われわれの眼科学、視覚科学の分野での研究の重要性はいうまでもなく、これまでの日本眼科学会の活発な活動や日本における眼科研究のレベルの高さからマスコミへの露出も多いと考えます。このような活動をさらに進めていき、他の学会へのアピール度も増していく必要があると考えます。その一つの起爆剤が学会のあり方に関する大きな変革です。学会の大きなアピールの場は学術総会ですが、その運営を学会長と一緒に行う日本眼科学会総集会プログラム委員会が活動を始めています。この活動は、2002年、田野保雄教授、当時の日本眼科学会理事長の発議で「新あり方委員会」が作られ、その検討結果をもとにしたプログラム委員会が活動するというシステムであり、総集会の運営が大きく変わることになりました。この経緯は初代プログラム委員会委員長の坪田一男教授(慶応義塾大学眼科)により日本眼科学会雑誌第110巻9号に掲載されました。これにより、学術総会の活性化を目指しています。そこで発表される個々の研究のレベルを向上させる取り組みは各研究機関(大学眼科など)が単独または共同研究で行うことであり、学会が介入する部分はあまり大きくないと考えますが、必要なサポートの第一は眼科における研究が適正に行われていることを担保するために社会にむかって説明責任を果たすシステムの整備をすることです。たとえば日本産科婦人科学会では体外受精の倫理問題がありマスコミに学会としての正式な見解をタイムリーに公表していました。眼科では幸いにして倫理的に問題になることがなく過ぎていますが、体制は整えていると考えます。さらに、社会にむかっての説明責任を問われているのが研究費の適正な運用、研究成果の発表に際しての適正な運用(要するに論文捏造などの防止)です。研究成果が特許の取得などに繋がり、ひいてはすぐ研究者の生活レベルにも直結するアメリカで、ベル研究所における高温超伝導に関するデータ捏造、論文の偽造の事例が報告されています。NHKの番組で紹介されましたのでご覧になった方も多いと考えますが、ドイツ出身の若い、おそらく本来は才能にあふれた物理学の研究者がノーベル賞級の仕事をNatureなどの超一流誌に連続して発表し、一躍時代の注目を浴びました。しかし、実験に再現性がなくその信憑性が学会で疑問視されましたが、なかなかデータの捏造であることを証明できなかったとのことです。ある2つの論文のグラフが倍率を変えただけのものであることを知らせる怪電話(内部告発?)があって、グラフのゆらぎまたは誤差(?)のところまでぴったりとあったことが分かり、「あし」がつきました。データの捏造、論文の偽造を見破るのはこれほどに困難であることを世界の科学界は思い知りました。また、公的な研究費の運用についてはルールから逸脱する事例がマスコミでも報道され、社会的な関心が高いことを示しています。論文の公明正大な発表や研究費の適正な運用を担保することは個々の科学研究者に要求されており、本来、研究者の自立的な倫理感、良心だけが最初で最後のよりどころでした。孔子も「君子は独人を慎む」(「大学」)といっています。そして、実は内部告発でもないと上記のような論文捏造や研究費不正運用はなかなか発覚しません。文部科学省でもこの事態を重く見て研究における研究活動の不正防止の対策を立て(「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」2006年科学技術・学術審議会)、各大学にも研究の不正防止および研究費の適正使用のためのルール作りを促しています。研究者の倫理感の醸成、告発者の保護、実際に発覚した場合の罰則などが対策ですが、研究者個人の心の中の問題が大きく、システムのみで不正を100%予防するのはかなり困難でしょう。それに基本的には不正防止の取り組みは個々の研究者の所属する研究機関(大学など)がまずは取り組む必要があると考え、学会としてどこまで関与するべきかというと今後の問題です。学会の役割として、研究費不正運用防止に寄与することについては極めて困難でしょうが、論文捏造については1)学会員における常日頃からの研究に関する倫理感の育成、2)疑惑の論文が出た場合の独自の検証システムの構築、3)論文における不正が発覚した場合の罰則の明確化(一定期間学会への演題採用停止、学術誌への投稿を受理しないなど)が考えられます。上記に紹介したベル研究所の例でも、学会の研究レベルが高く、自由な論議が常態として行われている場合、追試ができないなどでデータの質が検証されることで学会の自浄作用が働き、それがきっかけとなって是正措置がとられることも期待できます。日本眼科学会においても高いレベルの自由な学術論争が学術総会や学術誌で行われていることが不正を防ぐのに大きな貢献をすると考えます。これは各研究機関のみでは困難なことであり、学会の存在意義としてその役割をアピールできると考えます。

財団法人日本眼科学会
理事 山下 英俊

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