日本眼科学会:どう乗り切る? 地方の危機(110巻11号)
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どう乗り切る? 地方の危機

 小泉構造改革の一環として、国立大学の独立行政法人化が平成16年度に施行された。公務員の数は名目上減ったが、運営交付金を国から交付されるという基本構造に何ら変化はなく、企業並みになるかと期待された規制緩和も遠くはかなき夢であった。その反面、経営改善、自助努力というスローガンの中、運営交付金は毎年1%ずつ削減され、競争的資金枠の拡大に伴って、旧帝大を頂点とするピラミッド構造がますます顕性化している。

 この変革の最中、医学部にはもう一つの嵐が吹いた。言わずと知れた新医師臨床研修の義務化である。この措置により、大学病院に所属する研修医数が激減したことは周知のとおりである。都会の大学への影響は比較的少ないが、地方の大学にとってはまさに泣き面に蜂の状況である。都会への流出現象に拍車がかかり、後期研修医の数は東北・北海道、中国・四国、九州の各地方で軒並み半減してしまった。結果として、地方の大学の医局制度は脆弱化し、地域医療は随所で崩壊寸前となっている。対策として、地方大学の医学部定員枠の増加、地方への医師派遣システムの構築といった構想も出ているようだが、後手、後手に回っている感は正直否めない。地方大学に奉職する一人の教官として、事態が好転することを祈るばかりである。

 当然ながら、事情は眼科においても同じで、先にあげた地域における研修医数の減少には目を覆うものがある。ちなみに、平成18年度の眼科後期研修医の数は総計315名であるが、都道府県別にみれば、0名の県が8つ、1名の県が7つもあり、すべて地方に集中している。反面、東京、神奈川、愛知、京都、大阪などの都市部における後期研修医の数は207名(全体の65.7%)にも達し、バランスは大きく崩れている。

 この事態を憂慮し、日本眼科学会は、大学病院での研修のあり方を今一度見直す目的で時限の特別委員会(委員長 京都府立医科大学 木下 茂教授)を立ち上げた。一人前の眼科医になるには豊富な臨床経験を積む必要があるし、そうした修練の場としては大学病院およびそれに準ずる基幹病院がベストである。ただ、そうした病院側も、研修の質を標準化し、レベルの高い眼科医を生み出す仕組みを構築する必要がある。その第一歩として、各施設に研修カリキュラムの提出を義務付け、大学病院における一定期間の研修を専門医取得の必須条件に組み入れる案が委員会から答申され、今春の評議員会にて了承された。結果、一部基幹病院を含む91の施設が承認を受け、新たな研修医教育制度が来年度からスタートすることとなった。まだまだ制度として未熟ではあるが、研修レベルの標準化に先鞭をつけた点で一定の評価はできるだろう。

 しかしながら、この措置で地方大学の苦境が救われるというわけではない。もともと地方から都会へと向かう研修医の流れを堰き止めるまでの制度設計ではないからである。平成14年度の数字で恐縮だが、保険診療請求全体に占める眼科の報酬額が4%であるのに対し、眼科医数は全体の5%と比率には大きな不均衡がある。これは、診療報酬が低く評価されているためとも理解できるが、見方を変えれば、眼科医数が多すぎるとの解釈も成り立つ。問題は、日本眼科学会が適正な眼科医数と地域バランスについて、深く検討してこなかった点にあるのかもしれない。眼科医療の健全なる発展を念頭に、個々の大学の研修医数に適切な上限枠を設け、全国レベルでのマッチング制度の導入を真剣に検討する時期に来ているのではないかと思われる。

 ポスト小泉政治の課題は格差社会の是正であるとされ、特に、地方の再生が大きな合言葉となっている。これは眼科においても然りである。もしこのままの状況が続けば、優れた人材が地方で育たなくなるばかりか、地方大学の指導者を希望するものもいなくなることだろう。こうした地方における眼科医療、眼科研究の地盤沈下をいったい誰がどうやって支えていくのか?どうすればこの危機を回避できるのか?窮状の打開に向け、今、眼科医全体で議論を煮詰めていく必要がある。

財団法人日本眼科学会
理事 大橋 裕一

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