日本眼科学会:理事会から(110巻12号)
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理事会から

理事会から

 日本眼科学会の事務局から本欄への原稿を提出するようにいわれましたが、私自身はただの理事であり特別な業務を担当しているわけではありません。したがって、この“理事会から”という原稿を書くことは、総説や論文を書くよりも難しいものでした。理事会の現在の考え方を代表する立場にありませんので、意見としてではなく私が日頃考えている日本眼科学会について、私見を述べさせていただきます。

 日本眼科学会は日本眼科医会とともに私たち眼科医の所属する基本的な団体であります。日本眼科学会は大学を中心とする眼科学研究の研鑽の場で、日本眼科医会は開業医の先生方を中心とする眼科診療の実際的な問題点を解決する団体であると、一般には理解されていると考えます。中間的な立場に勤務医の先生方がおられますが、今まで多くの勤務医は大学の人事異動の中で動いておられて、日本眼科学会の一翼を大学とともに担って来られたと思います。近年では、大学とは別に独立して眼科診療の実践に貢献されている勤務医が増えてきています。現在のように勤務医が過半数を占める状況になりますと、日本眼科学会と日本眼科医会の役割や違いが曖昧になってきているように感じます。

 また現在我が国では、新しい臨床研修制度の施行と国立大学の独立行政法人化という二つの大きな改革が同時に進行しており、さらに医療費抑制という政策の中で眼科そのものの位置づけが揺らいでいるというのが現状ではないかと考えます。国立大学の法人化に伴い大学の性格が大きく変化してきています。このことは特に地方の大学で顕著です。同じ大学の中でも附属病院という社会に開かれた部局と、学生と教職員が中心で4月時点の入学・進級した陣容で一年間を過ごす他の学部や部局とでは考え方が大きく異なります。医学部臨床系では教員として雇用され給与が支払われていますが、実際は医師として診療行為を行い、またその診療行為に対して医師としての責任を果たすことが要求されています。組織の形態の違いや待遇に関して何も配慮がなく、ただ独立行政法人化されたため、現在の医学部附属病院における中心的な問題はどれだけ医療収入を上げるかであり、研究よりも診療が大学での最も大切な業務になってきています。かつてのように視覚器の形態や機能を追求し、さまざまな眼疾患の病態を明らかにして新しい検査や治療法を見出そうとする大らかな学問的環境はほとんどなくなりつつあります。したがって、大学に勤めることの魅力は半減してきています。現在、一般に社会から批判されているほどには医局(この概念はもうほとんどなくなり死語に近いと思いますが)には力も命令権もなく、ただ個人が将来収入を上げるために必要な眼科診療技術(検査や手術)や知識を身に付け、そして市中の病院や自らの眼科診療所で地域医療を行うための単なる通過組織になってきています。現実には、新しい卒後臨床研修制度が追い打ちをかけたといえるでしょう。このように今まで眼科学の発展を支えてきた大学を取り巻く環境が大きく変化していることも、眼科学を志す人口の低下につながり、日本眼科学会総会への出席者数の減少につながっていると思います。

 一方で、臨床研究も基礎医学研究も社会的な規制が大きく被さってきています。今までのように研究者の思いつきだけで研究を行うことは許されていません。今日では臨床研究の倫理性や方法の正当性などをあらかじめ審査されてから研究が開始されます。このことは動物を用いた研究でも同様で、研究計画をあらかじめ提出して承認を受ける必要があります。臨床研究であれ基礎医学研究であれ、あらかじめ研究計画を立てデータを集積していく能力が必要となり、医療の実践とは異なるスキルが要求されます。アメリカの医学教育は4年生のカレッジの卒業生がMedical Schoolに進学する制度ですので、少なくともすべての医学生は科学的研究のやり方や考え方(方法論)について4年間教育されています。しかし我が国では、高等学校を卒業してすぐに医学部に進学し、さらに昨今のearly exposureとやらで十分な科学教育を受けずに早くから医学知識の教育へと入るわけですから、科学的な研究というものを全く経験していない医師が養成されてきます。卒業後、医師になってからの臨床研究や基礎医学研究の計画の立案、実施あるいは報告のやり方が十分に訓練されていないことは単にカリキュラムの問題ではなく、残念ながら現在の教育制度ではやむを得ないことです。医療技術の習得が最優先され、現在では医療の原理原則を示す医学への情熱がそがれているのではないかと懸念されます。

 私たちが毎日処方している薬剤や日々の診療に必要な診断・検査機器、あるいは手術機器の開発には、10年単位の時間が必要です。特に薬剤の開発は、研究室で臨床的な応用が可能かなと考えた段階から20年あるいは30年という年月を経て、はじめて誰にでも処方できる薬剤となるのです。今日の診療は数十年前の先人の研究に依存しており、また今日の研究は10年あるいは20年先の臨床医の診療の糧となるのです。ここに、日本眼科学会が現在の標準的な診断と治療法を指導するとともに、将来実を結ぶであろう研究を地道に育てていく使命があると考えます。昔から言われているように“医学なくして医療なく、医療なくして医学なし”という言葉を今一度銘記して、今後の日本眼科学会の進むべき方向を明確にする必要があると感じています。現在は大学の環境の変化と臨床研修制度の変化の中で悲劇的な状況であり、日本眼科学会にとって逆風であるからこそ今一度、しっかりと理念を持って医学と医療のバランスという観点から考えるべき時期ではないでしょうか。

財団法人日本眼科学会
理事 西田 輝夫

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