日本眼科学会:世界に誇れる日本の眼科医療(112巻9号)
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世界に誇れる日本の眼科医療

 昨年の6月から日本眼科学会理事を務めさせていただいています。あっという間に1年が過ぎました。理事になって大きく変わったのは、これまでは評議員として日眼総会や臨眼で評議員会が開催される学会前日の水曜日午後に沖縄から到着していればよかったのですが、理事会が水曜日の午前中に開催されるので火曜日の夕方には学会開催地のホテルに宿泊していなければならず、以前より時間がタイトになった点です。それはそれとして、日本における眼科医療の素晴らしさについて最近、いろいろ経験しましたので触れてみたいと思います。

 緑内障学会のプロジェクトとして緑内障疫学調査が平成12年〜13年に岐阜県多治見市で行われ、さらに平成17年〜18年には沖縄県の有人離島である久米島町で行われました。私自身、緑内障学会の評議員として多治見スタディーと久米島スタディーの両方の検診業務、疫学調査に参加させていただき、ベンチワークとは異なる広いフィールドでの臨床研究に触れるというこれまでにない経験をさせていただきました。多治見市は名古屋市からJR中央線の特急で30分くらいの地方都市で、県立病院、市民病院と大きな総合病院が2つあり、医療面ではかなり恵まれた地域といえます(最近の地域医療の混乱が及んでなければ今でも)。

 一方、久米島町は那覇から西へ約100kmの東シナ海にある人口9,000人ほどの小さな島で、車で1周しても1時間くらいしか掛かりません。島には小さな公立病院(久米島病院)がありますが、医師は常勤2、3名(内科が中心)、あとは那覇から週に何回か専門診療科の医師が日替わりで診療業務に当たっているという決して恵まれた医療環境にはありません。眼科はこの病院が平成12年に開院して以来毎月2回(隔週)、琉球大学眼科から出張によって診療を行っていました。島内の眼科患者は急患であれば、1日5、6便飛んでいる50人乗りのDHC50という、昨今話題となっているボンバルディア社製の小型飛行機か、JTAの飛行機(これは朝晩2回)を使って那覇の眼科医院にかかっていました(飛行機所要時間約30分)。また、時間に余裕のある住民は久米島港から那覇泊港までを約4時間で結ぶカーフェリーを利用していました。実は、赴任した直後の平成10年に、沖縄県で行っている離島医療事業(専門医のいない離島を順番に数年に1回程度巡回診療を行う事業で、琉球大学眼科には年に2、3回の依頼がある)で久米島に1度診療に行ったことがありました。当時はまだ公立病院はなく、早朝に飛行機で出発し、夕方まで診療しましたが、100名以上の島民が眼科検診を無料で受けられるということで朝早くから列をなしていました。手術が必要な患者は那覇市内の病院、開業医、あるいは大学病院に紹介し手術を受けていただきました。しかし、往復の旅費、滞在費など離島の住民の収入を考えると非常にコストの高い医療を受けざるを得ない状況がそこにありました。

 ところで、失明、ロービジョンの原因や頻度はその国の眼科医療の普及度やレベルをかなり的確に反映していると考えられます。多治見スタディーにおけるこの失明、ロービジョンの頻度は先進諸国に較べても圧倒的に低い値であることが報告されました1)。では離島の久米島ではどうだったのでしょうか?実は久米島における失明、ロービジョンの頻度は先進諸国とほぼ同程度であることが今回の久米島スタディーで判明しました2)。これは何を意味しているのでしょうか。発展途上国における失明やロービジョンの原因の多くがいまだに白内障と感染症です。つまり、久米島では白内障による失明やロービジョンの頻度は、ほぼ先進諸国と同程度であることが示されたのです。また、離島というハンディにもかかわらず感染症による失明も先進諸国のそれにひけを取らないくらい低かったのです。日本の離島(これは久米島だけに限らないと信じていますが)における眼科医療は先進諸国にひけを取らない医療が、しかも適切なコストで提供されていたためであると考えられます。

 最近、厚生労働省は元気がありませんが、こと眼科医療に関しては僻地や離島に至るまで十分な医療を眼科医とともに提供してきたことに十分自信を持ってよろしいのではないでしょうか。一方で、今回6か月という期間限定ではありますが琉球大学眼科から常勤を派遣し、検診期間中に眼疾患が見つかった場合は希望者に対し公立久米島病院で手術を行いました。主に白内障手術でしたが、約400眼の手術が行われました(検診参加者の1割強!!)。失明やロービジョンに至らないものの、住民の多くがこれらの疾患でハンディーキャップを抱え、さらにquality of visionの低下を来していたことも事実です。今回、疫学調査と並行して行った手術を含めた眼科医療の提供は、今後の離島医療(僻地医療ではありません)のあるべき姿を考えるうえで官民を含めて一考に値するものではないかと考えています。

文献
1)Iwase A, Araie M, Tomidokoro A, Yamamoto T, Shimizu H, Kitazawa Y;Tajimi Study Group:Prevalence and cause of low vision and blindness in a Japanese adult population. The Tajimi Study. Ophthalmology 113:1354-1362, 2006.
2)仲村 優子,酒井  寛,澤口 昭一,岩瀬 愛子,富所 敦男,新家  眞:久米島スタデーにおける視力障害の有病率と原因.日眼会誌(臨時増刊号):317,2008.

財団法人 日本眼科学会
理事 澤口 昭一

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