日本眼科学会:眼科医の地域格差(112巻11号)
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眼科医の地域格差

 初期臨床研修制度導入以降、地方の病院は深刻な医師不足に見舞われています。そしてその中で最も深刻といわれているのが産科、小児科です。マスコミでも「妊婦のたらい回し」、「お産難民」という言葉が聞かれるようになってきました。最近の若い医師は、過酷な勤務や訴訟リスクがあるこれらの科を避け、皮膚科や眼科に流れているという議論があります。最近の若い医師が眼科にどんどん流れてきているというのは本当でしょうか。最近10年間の日本眼科学会会員数の推移をみてみると(表1)、平成16、17年の2年間、初期臨床研修制度導入の影響で新入会が激減し、会員総数も減少しています。そしてこの2年間の後、会員数は少しずつ増えてはいますが、新入会員数は昔のレベルに戻ってないどころか、むしろ年々減少傾向です。日本眼科学会では毎年眼科医数動向調査検討委員会がこのことについてアンケート調査をしています。その結果は本誌第112巻1号に松村美代眼科医数動向調査検討委員会委員長が「談話室:平成19年度眼科医数動向調査報告」で詳しい報告をされています。これをみましても、最近の大学への入局者数は初期臨床研修制度が義務化される前よりも減少しています。眼科医になる若い医師は増えているどころか、以前より減少しているのが現状だと思います。それでも産科や外科の一部では会員の実数が減少しているところもありますが、眼科医は一応年々増加しています。平成10年から18年の間に日眼会員数は12,178人から13,690人へと11.0%増加しましたが、医師の総数も248,611人から277,927人へと10.5%増加しています。眼科医数は医師総数と同じくらいの伸びで増加しているのが実情で、産科医が減った分だけ眼科にどんどん流れてきているということはありません。緩和ケア、終末期医療、リハビリなど新しい分野で働く医師が増えてきて、医師の実数が需要に追いついていないのが最近の「医師不足」の根本原因で、医師が特定の科に流れる「医師偏在」というのは誤りだと思います。

表1 日本眼科学会会員数の推移
平成10年度 日眼会員12,178 新入会499 医師総数248,611
平成11年度 日眼会員12,429 新入会418
平成12年度 日眼会員12,670 新入会381 医師総数255,792
平成13年度 日眼会員13,094 新入会586
平成14年度 日眼会員13,393 新入会460 医師総数262,687
平成15年度 日眼会員13,594 新入会379
平成16年度 日眼会員13,567 新入会131 医師総数270,371
平成17年度 日眼会員13,515 新入会86
平成18年度 日眼会員13,690 新入会329 医師総数277,927
平成19年度 日眼会員13,840 新入会306

 ところが、眼科医が多い、眼科は人が余っているというネガティブなイメージは一般の人ばかりでなく、他科の間でも広がっています。これにはいくつかの理由があると思います。眼科の特殊性としてまず、病院勤務医と開業医の割合が他科と大きく違っている点があります。医師全体の63.9%が病院従事医師であるのに対し、眼科は38.7%(厚生労働省統計表9のデータより計算)と、もともと眼科は開業医の役割が大きかったのですが、これが町を歩いていると眼科医院がたくさんあるように見え、このようなイメージを作っている原因の一つと思います。

 医師不足に関してもう一つ最近問題になっているのは「地域格差」です。厚生労働省が女性と子どもそれぞれ10万人当たりの産科・産婦人科と小児科の医師数を都道府県別に集計した結果をみると(07/12/25 記事:共同通信社)、15〜49歳の女性10万人当たりの産科・産婦人科医数のトップは、鳥取の60.5人で、最少は滋賀の26.8人(地域格差2.26倍)。15歳未満の子ども10万人当たりの小児科医数が最も多かったのは、徳島の295.2人で、最少は岩手の118.4人でした(地域格差2.49倍)。では眼科はどうでしょう。会員の都道府県別の人数は日本眼科学会にデータがありますし、都道府県別の人口は厚生労働省のホームページのデータがダウンロードできます。これで計算してみますと、人口10万人当たりの眼科医数のトップは、東京の17.99人で、最下位は埼玉の6.16人(地域格差2.92倍)でした(表2)。つまり眼科医の地域格差は小児科、産科よりも深刻だということです。

表2 都道府県別人口10万人当たりの眼科医数ランキング
1 東京 17.99 2 大阪 14.53 3 京都 13.86
4 岡山 12.75 5 鳥取 12.44 6 兵庫 12.37
7 徳島 12.12 8 高知 11.77 9 福岡 11.76
10 奈良 11.49 11 香川 11.47 12 愛知 11.34
13 広島 10.91 14 石川 10.85 15 愛媛 10.79
16 滋賀 10.76 17 長崎 10.32 18 和歌山 10.14
19 富山 10.11 20 山口 9.92 21 宮崎 9.88
22 福井 9.55 23 熊本 9.54 24 神奈川 9.07
25 沖縄 9.04 26 島根 8.89 27 宮城 8.81
28 三重 8.81 29 大分 8.79 30 山形 8.78
31 鹿児島 8.73 32 山梨 8.68 33 佐賀 8.49
34 群馬 8.41 35 新潟 8.25 36 北海道 8.22
37 長野 8.17 38 岐阜 8.05 39 岩手 7.99
40 静岡 7.96 41 栃木 7.86 42 福島 7.76
43 秋田 7.54 44 千葉 7.29 45 茨城 6.99
46 青森 6.71 47 埼玉 6.16 全国平均 10.55

 眼科医は他科に比較しても東京、大阪などの大都市に極端に集中していますが、眼科医が多いというイメージを作るもう一つの原因がここにあると思います。マスコミや役人はどうしても東京の様子に目がいきがちです。眼科医療の対象となる高齢者の割合は農村部ほど多いことを思えば、現在の眼科医の大都市集中は、いびつといえます。我々眼科医の役目の一つは「日本国民に平等、かつ良質な眼科医療を提供する」ことといえます。現状はこの目的に反していると言わざるを得ません。

 日本眼科学会は今年度から、眼科研修プログラム施行施設(眼科専門医が8名必要)に対して後期研修医の定員を10名以内とすることを決定しました。また、平成19年度から眼科専門医認定試験を受験する条件として4年間の後期研修の最初の2年間のうち少なくとも1年は眼科研修プログラム施行施設(その多くは大学病院)で眼科研修を行うことを義務づけました。アンケート調査ではこれに不満を持つ先生もおられました。眼科専門医制度はその他にも眼科指導医の新設など、さまざまな改革が行われています。これらの改革は、全国共通で質の高い眼科専門医を育成することを目的としており、他科の専門医制度と比較しても決して見劣りしない制度です。後期研修医をどのようにして質の高い眼科専門医に育てるか、きちんとした道を示すことが若い医師にとっても、日本眼科医療の将来にとっても重要です。ハードルを下げることは長い目で見たとき、日本の眼科全体が落ち込んでゆくことになりかねません。

 医療全体が危機的状況にあることが、最近マスコミでも取り上げられるようになってきました。医学部の定員を増やし、医師が特定の科や地域に偏在しないようにする対策が政府でも検討されつつあります。こうした流れの中、日本眼科学会としても適正な数の眼科医を、適正なプログラムのもとで優秀な眼科専門医として育成し、日本国民に平等、かつ良質な眼科医療を提供する努力をしていくことで、一部に存在する眼科へのネガティブなイメージを払拭しなければ、国民の理解は得られません。眼科専門医を取るために少なくとも1年間の眼科研修プログラム施行施設での眼科研修義務化や、眼科研修プログラム施行施設ごとの定員制化などはこうした流れに沿ったものです。地域格差(2.92倍)に関してもせめて産婦人科並み(2.26倍)にするために、さまざまな対策を講じる必要があると考えております。

財団法人日本眼科学会
常務理事 吉冨 健志

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