日本眼科学会:理事会から(113巻1号)
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 明けましておめでとうございます。平成21年、2009年となりました。米国では、サブプライム問題に端を発する株式の暴落で、今世界は社会の教科書で習っただけの1929年10月の大恐慌以上の恐慌に陥っているそうです。そして、素人にはよく分からない経済理論によれば、その恐慌は世界中に飛び火しているそうです。株を持っていない私個人としてはまるでその実感が湧きませんが、最近の特に産科、小児科、外科領域における医師数減少に関連して、眼科医療や眼科医に対するいわれのない中傷や無理解がマスコミを介して世の中に喧伝されていることはしばしば実感します。この流れを少しでも正すべく発足したのが日本眼科啓発会議です。

 さて、眼科学の究極の目的は失明の撲滅にあることは多言を要しません。WHOの定義によれば失明(Blindness)は視力の良い方の眼の矯正視力が0.05未満とされています〔ちなみに、低視力(low vision)は同0.05以上0.3以下〕。不思議なことに日本における失明の疫学的データはつい最近に至るまで存在していなかったことは、余り知られていません。勿論、身体障害者福祉法の適用により視覚障害者の認定を交付された患者の統計は存在するので、それをもとにして、どのような眼病が原因で視覚障害の認定を受けたかを調べた報告はあり、それによれば、日本人の視覚障害原因の第1位は緑内障、2位糖尿病網膜症、3位網膜色素変性症、以下黄斑変性、強度近視と続くとされています。ただし、これはあくまでも認定を交付されたという条件下での患者の中での割合であり、もし障害があっても認定を申請していなければその人は障害なしと計算されてしまうことを忘れてはいけません。

 巷での、すなわち条件付でない現実世界での失明率やその原因を算出するには、全人口を調査するのが理想ですが、それは実行不可能なので、ある代表的地域を選び、その中より数千人を無作為抽出し、その地域人口の代表として、被抽出者の少なくとも約80%以上を調査すれば(population-based survey)その数千人×80%での結果でもって、母集団の状況(この場合、その地域での失明率、失明原因となる眼病の分布など)を正しく推定できるというのが疫学の理論です。この理論に則って本邦眼科領域で初めて行われた眼科領域の疫学調査が、本邦人での緑内障有病率調査を主目的として行われたいわゆる多治見スタディ(2000〜2001)でした。

 一人一人の参加者を緑内障であるか否か、緑内障ならばどのタイプかを決定するのは多数の医師の長時間に亘る多数からなるデータの解析の結果によらなければいけませんが、全参加者の視力や矯正視力はエクセルチャートに纏められておりそれを使えば、比較的簡単にWHO基準から、失明率を算出することができます。この結果、疫学調査による日本人の失明率は0.14%、同低視力率は0.39%であることが明らかになりましたが、この率は例えば米国都市部白人層に比べても約半分以下と、世界で最も低い我々日本人眼科医が誇りとするに足る数字であったことをここで銘記しておきたいと思います。100年以上の昔、当時の明治天皇が北陸地方を巡幸し余りに眼病者特にトラホームによる失明が多いのに心を痛め眼病予防のため下賜金を賜わったこと、そしてこれらがきっかけとなり大正5年にトラホーマ予防協会が設置されることになったことを考えると、この100年足らずのうちに当時欧米の水準より遥かに高かった失明率を、堂々世界の最低水準にまで引き下げたことを、もっともっと我々眼科医は声を大にして誇ってもよいのではないでしょうか?

 また、疫学調査による視覚障害原因の順位をみると、視覚障害認定交付により算出したものと大きく違っていることも分かりました。1位は意外にも白内障であり、緑内障、強度近視と続き、糖尿病網膜症、網膜色素変性症は5〜10位の間でした。(Iwase A, et al. Ophthalmology 113:1354―1362, 2006.)

 この多治見スタディの結果は、わざわざ書式を整え視覚障害の認定を申請した人という条件下での結果と、巷での結果がいかに乖離しているかを如実に示しているものと思われますし、厚生行政は後者の結果をもとにして計画されなければいけないことは論を俟ちません。また、この数字が視覚障害認定の交付の記録という官製統計の助けをまったく借りず眼科医が独自に出したものであるということも大事な点であると思います。

 急速な社会変化に伴い、失明原因は今後も大きく変化していくことが考えられ、また眼科医療の役割も従来の眼病の管理治療から予防という面に徐々に重点が移っていくと考えられます。しかし、この過程に課される日本眼科学会の役割、活動は将来もより重要になればこそ決して軽くはならないと考えられます。この場を借りて、日本眼科学会会員の皆様方の2009年の益々の御発展を祈念するとともに、益々の御協力も重ねてお願い申し上げたいと思います。

財団法人日本眼科学会
新家  眞

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