日本眼科学会:眼科医数動向調査からみたスーパーローテイトの影響(114巻5号)
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眼科医数動向調査からみたスーパーローテイトの影響

 平成16年4月に2年間の「新医師臨床研修(スーパーローテイト)の義務化」が始まり、今年で7年目になります。そして今年はスーパーローテイト研修を修了した後期研修医の入局が始まって5年目です。医師である以上は、自分の専門の診療科を選択する前に、救急処置や全身管理などの最低限の知識と技能を身に付ける必要があるので、その目的を達成するためにスーパーローテイトを義務化するという理念は正しいと思うし、その必要性に関しては異論はありませんが、その運用の仕方に誤りがあったと思います。すなわち「マッチング方式」と称して、各地方大学の卒業生が日本全国のどこの大学でもどこの病院でも自由に研修先を決められるようにしたことと、各施設の受け入れの上限枠(定員)を決めなかったことです。その結果、特に地方大学から都会の有名大学や大病院への研修医の流出現象に拍車がかかり、その結果として全国の地方大学は入局者が減少し、医局員の総数の減少により地域の病院への医師派遣が困難になり、時には地域の病院へ派遣していた医師を大学へ戻さざるを得ないという切羽詰まった現象が起こり、これまで地方の中小病院が担ってきた地域医療は、随所で崩壊ないし崩壊寸前になっています。過去10年間の日本眼科学会の会員数の推移をみますと、平成11年末の12,429人から平成21年末の14,119人と増加していますが、新入会員数のスーパーローテイト導入(平成16年)前後を比較すると、平成11年度418人、平成12年度381人、平成13年度586人、平成14年度460人、平成15年度379人、平成16年度131人、平成17年度86人、平成18年度329人、平成19年度307人、平成20年度330人、平成21年度248人と導入後には明らかに減少しており、導入後の新入会員数は導入前の水準に戻っていません。さらに眼科常勤医がいることが認定の条件(1、2、4号は眼科専門医の常勤が必須)である専門医制度認定研修施設(以下、研修施設)数は、平成16年の1,312件をピークに年々減少しており、平成22年3月1日現在は、1,135件となっております。研修施設の認定を受けられなくなった理由のほとんどが、眼科常勤医不在によるものです。

 このように厚生労働省の「スーパーローテイト」制度が導入された平成16年を境に、新入会者と研修施設が明らかに減少に転じました。眼科はもともと開業医と勤務医の割合が他科と大きく違い開業医の割合が大きいという特殊性があります。

 眼科専門医が増加しているにもかかわらず、研修施設が減少しているということは、各大学の眼科学教室が担ってきた地域の病院への医師派遣機能が、「スーパーローテイト制度」により停滞したためであることはもちろんですが、勤務医の希望者の減少(開業希望者の増加)と、新入局者の減少によって、全国の大学の眼科学教室が地域の病院へ派遣していた医師を引き上げざるを得なくなったためではないかと考えられます。さらに平成16年以降の日本眼科学会の新入会員のほとんどが眼科専門医の資格を取得できるのは、平成22年以降となりますので、今後は眼科専門医の総数にも新入会員の減少が反映されていくことが予想されます。全国の大学の眼科学教室(大学本院)と、大学本院を除く1号施設(大学分院)と2〜4号眼科研修施設を対象に日本眼科学会が実施した「平成21年眼科医数動向調査検討委員会報告書」によれば、大学への入局者は平均2.5人(0〜8人)で、スーパーローテイト開始後はストレート研修の頃より減少したままです。入局者の男女比は、約1.2:1です。各大学の年間の入局適正数は、平均5.7人(3〜10人)と考えられており、実際の入局者数は入局適正数の約半分にすぎません。

 次に現在大学で働いている人数(大学院生を含む常時在籍者)は、平成16年に減少して以後そのままです。スーパーローテイト開始前の平成15年の国公立大学附属病院(本院)の勤務医数は平均24.0人でしたが、スーパーローテイトが開始された平成16年が20.6人(−3.4人の減少)、平成21年が18.1人(−5.9人の減少)に減少しています。私立大学でも大学附属病院(本院)の勤務医数の動向はほぼ同様です。関連病院の数も国公私立大学いずれも減少しています。さらに関連病院で働く人数も減少し、全般的に医局員の数が減少しています。さらに研究を担う最も重要なマンパワーである大学院生の数も減少傾向が明らかです。国公立平均4.7人、私立3.9人で、大学間で0〜20人とばらつきが大きい状況です。男女比では全体として女性の割合は40% 程度ですが、最近の眼科入局者の男女比はほぼ1:1で女性の割合が増加しています。ほとんどの教室はマンパワー不足の状況で大学にとって重要な研究・教育・診療そして社会貢献の役割を果たすべくその対応に苦慮しています。

 以上、「平成21年眼科医数動向調査検討委員会報告書」からみたスーパーローテイトの影響について述べましたが、平成16年4月のスーパーローテイトの義務化以後、確実に眼科入局者は減少しており、大学で働く医局員の数も大学院生の数も平成16年以後明らかに減少しています。関連病院の数も、研修施設数も関連病院で働く人数も減少しています。その一方で各大学の眼科学教室間の格差が拡大しており、例えば各教室の在籍者数(有給医員や大学院生などを含めた常勤医師)をみると6〜40人の格差があります。有給者(有給助教、講師、准教授、教授)の定員では6〜22人の格差が存在します。平成21年度在籍大学院生数では0〜20人の格差があり、関連病院の数も2〜43の格差があります。全国の地方大学の眼科学教室では、現在教室員の数が10人を割っている教室が複数あって、教授自ら附属病院の当直業務を行っている教室があると聞いています。そうなると大学での研究・教育・診療を優先すれば地域の関連病院に医師を派遣することはかなり困難になります。その結果として、地域の中小病院が担ってきた地域医療は崩壊します。このような状況に対してようやく危機感を抱いた政府は、その対策として地方大学の医学部の定員枠の増加や、その地域の出身者を優先的に入学させる「地域枠」の設定などの対策を打ち出してきましたが、すべての対策が後手、後手に回っている感は正直否めません。大学が現在果たしている教育や研究そして地域医療に果たす役割の重要性を考えず、そこに予算と人員を増やさないで、逆に減らしているような国に明るい将来はないと考えるのは、私だけでしょうか?

財団法人 日本眼科学会
理事 阿部 春樹

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