日本眼科学会:理事会から(114巻6号)
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 平成21年度の大きな出来事は何といっても政権が自民党から民主党に変わり、政策に関しても歴史的な大転換がなされようとしていることではないでしょうか。政権交代から半年が経過し、なかなか期待通りには進まず、期待が大きかっただけに落胆をしている人もあり、内閣支持率も30%台に低下しています(3月末日現在ですが)。政権が民主党に変わったことにより医療にも大きな変化が起こることが予想(期待?)され、保険医療にとって最も重要な事項の一つである診療報酬改定も例外ではありません。ご存知のように診療報酬の改定は2年ごとに行われ、最近、数年間は眼科にとってかなり厳しい改定となっています。民主党政権下では中央社会保険医療協議会の委員の人選も大きく変わり、診療報酬の改定も大きく変わることが予想されました。そんな中で本年2月12日に平成22年度診療報酬改定についての具体的な点数表の改正案が中医協により答申されました。

 近年、医科全体としてマイナス改定が続けられてきましたが、今回は医科全体としてプラス改定となったことは喜ばしいことですが、改定幅が+0.19%と少なかったことが残念です。今回、最も大きな変更点は診療所と病院での再診療の統一が挙げられます。これは病院での再診料の引き上げと診療所での再診料の引き下げをセットにしたもので、総額での増額要求を抑制するために病院と診療所の間に楔を打ち込んだという意見もあるようです。さらに診療科間の格差是正の名目の下、眼科検査は耳鼻科検査や皮膚科処置とともに減額されたのも同様の理由であるという意見もあります。眼科では緑内障手術や硝子体手術が増額された一方で、屈折検査や矯正視力検査が減額されるなど、眼科全体として60〜65億円の減額と試算されているようです。当初はもっと大きな減額を求められていたものを日本眼科学会と日本眼科医会との連携による日本眼科社会保険会議を中心とした活動により改善できたと聞いております。

 さて、厚生労働省による通知により、ルセンティス®やマクジェン®の硝子体内注射における請求は本来あるべき(?)硝子体注入・吸引術(1,900点)による請求ではなく、前房穿刺又は注射の準用(顕微鏡加算で360点)で請求されてきましたが、今回の改定では硝子体内注射(580点)が新設されました。これでも人件費を含めると赤字だと思いますが、人件費を除くと何とかカバーされるように思います。米国でも日本同様にあるいは日本以上に診療報酬については敏感ではないかと思っていましたが、最近、American Society of Retina Specialists(ASRS)の刊行物であるRetina Timesに興味深い記事が掲載されました。米国でも「硝子体注射」に関して似たような「事件」があり、そのときの対応は大変参考になると思いますので、紹介させていただきます。

 2009年(平成21年)9月に米国Centers for Medicare and Medicaid Service(CMS)はAvastin®硝子体内注射に対する診療報酬額を2009年10月1日から7.2ドルに改定すると発表しました。米国では薬の投与に対してはaverage selling price(ASP)+6%が支払われるという規則があり、これをそのままAvastin® 1.25 mgに適用すると7.2ドルなります。それまでAvastin®硝子体内注射には45ドルの支払いがなされていましたので84%もの減額となります! 米国では通常、各施設でAvastin®を分注するのではなく、分注されたAvastin®を調剤薬局(Compounding pharmacy)から購入し使用しています。その購入費の平均額が30ドルであり、改定後はAvastin®を注射するごとに約23ドルの損失となり、米国の網膜硝子体専門家に大きな衝撃となりました。

 米国でもAvastin®は適応外使用(off-label use)であり、認可された薬剤があるにもかかわらず、適応外使用であるAvastin®を使用すると医療上、法律上のリスクが通常より高くなります。認可された薬剤を用いると医療・法律上のリスクは少なく、いくらかの利益になります。一方、Avastin®を用いると1回注射するごとに約23ドルの損失を受け、さらに医療・法律上のリスクを背負う羽目になるので大問題となりました(日本でもほとんど同じ状況ですが)。この改定の発表後直ちに、American Academy of Ophthalmology(AAO)の代表者がCMSと交渉を試みましたが、ほとんど聞き入れてもらえませんでした。日本だけではなく米国でも政府機関が一度決定したことを覆すことは非常に困難なようです。しかしASRSやAAOは諦めずに直ちに行動を起こし、2009年10月9日には電話会議を開催し、今回の改定の内容を吟味し、解決するために行動計画を検討しました。その1週後にはAAO、ASRS、Retina Society、Macula Societyによる共同声明が網膜硝子体専門家やフェローに周知されました。さらに国会議員や国会関係者などに陳情するとともに、Web上でも公表し、患者にも説明し協力を得ました。またマスコミにも働きかけ主要なマスコミであるNew York Times、Wall Street Journal、CNNなどでも、今回の改定が取り上げられました。10月1日に改定が施行されて4週後、眼科関係者が正式に行動を起こして12日後の10月28日には、CMSが改定を2010年(平成22年)1月1日から元に戻すと発表しました。しかしながら、関係者は満足することなく、さらに活動を続け、11月16日にはCMSが10月1日に遡って、今回の改定を取り消すことを発表しました。

 今回の事件にはAvastin®注射のインセンティブを減らすことにより、より高額な薬剤が使用され政府の負担が増加するという特殊事情がありました。また日本の役所は米国の役所よりも柔軟性に乏しいかもしれませんが、今後の活動を考えるうえで参考になる記事だと思いました。最後に、眼科医療が適切に正しく評価されることを期待しております。

財団法人日本眼科学会 理事 大路 正人

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