日本眼科学会:もし日本眼科学会の庶務理事がドラッカーの『マネジメント』を読んだら(115巻8号)
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もし日本眼科学会の庶務理事がドラッカーの『マネジメント』を読んだら

 「もしドラ」をご存知でしょうか。元々は、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という小説で、平成21年に発売されて250万部を超える大ヒットとなり、その後NHKでアニメ放送されたり、映画化されたりしています。

 女子マネージャーとマネジメント
 物語は、弱小都立高校の野球部のマネージャーに就任した女子高生が、間違ってピーター・ドラッカーの「マネジメント」という組織経営の本を買ってしまい、初めは難しくて戸惑っていたものの、次第にドラッカー理論に基づいて野球部という“組織”の改革に取り組み、甲子園を目指していくというものです。ドラッカーの「マネジメント」は昭和48年の著作で、ビジネスマンのバイブルとも言われる不朽の名著です。ドラッカーと野球部女子マネージャーという組み合わせが絶妙で、「もしドラ」の小説としての出来映えには賛否両論あるようですが、チーム・マネジメントのケース・スタディとしては大変面白く通読しました。

 マネージャーとしての庶務理事の立場から
 さて、この6月から日本眼科学会(日眼)の庶務理事を担当しています。庶務理事とは“何でも屋”であり、大学における医局長、チームにおけるマネージャーに当たります。ちなみにこのマネージャーは日本でいうところの“世話係”のことであり、米国でいう“監督、支配人”という位置付けとは異なります。
 ということで、庶務理事として「もしドラ」には参考になる部分が多く、いくつか考えさせられる点もありましたので、日眼と高校野球部を比較してみたいと思います。なお、「マネジメント」の原本ではなくあくまでケース・スタディとしての「もしドラ」を参考にしていますので、実は拙文のタイトルは正しくなく、正確を期せば、「もし日本眼科学会の庶務理事が《もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら》を読んだら」というよく分からないものになります。

 組織の定義と顧客
 「マネジメント」ではまず、組織の定義付けを考え、また組織の顧客を定義することを求めています。「もしドラ」では野球部の顧客とはなんぞや、という点がまず問題になっています。“企業の目的と使命を定義するとき、出発点は一つしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される”というのです。これに対する答えは、野球部にとっての顧客―それは親、学校、先生、東京都、都民、高野連、高校野球ファン、野球部員など「高校野球を見てくれるすべての人々」であり、これらの人々がいなければ野球部や高校野球は成り立たないということになります。次の問いは、“顧客はどこにいるか。何を買うか(求めるか)”というものです。難しい問いですが、本の中では、「顧客が野球部に求めているものは感動」であり、野球部は「顧客に感動を与えるための組織」ということになっています。

 マーケティングとイノベーション
 次にドラッカーは、“企業の目的”を説明します。それは“顧客の創造”であり、企業はこの目的を果たすために、マーケティングとイノベーションという二つの機能を持つのだと説きます。マーケティングとは、「我々は何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問うことです。そして、イノベーションとは「新しい満足を生み出す」ということであり、成長なくして前進なしというように、マネジメントは常に何か新しい価値を生み出していかなければならないのです。また、「イノベーションとは価値であり、組織の外にもたらす変化」ということになります。女子マネージャー達はこれらを通じて、野球部を改革していきます。
 その他、ドラッカーが教えている「環境」、「戦略」、「自己目標管理」、「組織規模の適正さ」、「自己実現」、「真摯さ」などのテーマが、野球部組織改革を通じて具体的に説明されていきます。

 日眼の定義と顧客
 さて、こういったストーリーを日眼組織に落とし込んだらどうなるでしょうか。まず、日眼の定義づけですが、日眼の使命すなわち存在意義は、既に戦略企画会議で定義されているように、「日本眼科学会は、失明を予防し国民のQOLを向上するために、眼科学と視覚科学を推進し、眼科学教育制度を充実し、会員のニーズを満たし、眼科医療を進歩させる」ことです。次に顧客です。日眼の顧客は日眼会員であり、患者であり、眼科にかかわる研究者、企業関係者、関連団体、関連学会など、眼科学および眼科医療にかかわるすべての人と組織ということになります。潜在的な患者である国民も含めれば、日本人全員であり、医学と医療の国際化を考慮すれば、日本という国の枠も越えてしまうかもしれません。

 日眼とマーケティング
 日眼がこれらの目的を果たしていくためには、マーケティングとイノベーションが必要になります。会員を対象のマーケティングとしては、数年前から種々のアンケートを繰り返し行っており、それによるニーズと意見の把握に努めているところです。また、日本眼科医会と密に連絡を取り合うことにより、医会の下部組織を通じての会員の声の聴取と理解を行っています。患者に対しては日々診療に当たられている会員の先生方を通じたマーケティングが行われていますが、一般国民から“顧客の欲求”を吸い上げるという作業はなかなか難しく、今後の課題でしょう。関連企業団体とは常に意見交換を行っており、情報と要求の共有が行われています。日本眼科啓発会議や日本眼科社会保険会議における各団体との共同作業は、マーケティングという意味でも一定の役割を果たしているように思います。

 日眼とイノベーション
 そして、イノベーションです。日眼は“あり方委員会”や戦略企画会議などを通じて、常に新しい価値を生み出してきました。あり方委員会はプログラム委員会を生み、日眼総会と日本臨床眼科学会のあり方を大きく変えました。特に日眼総会は年々参加者を減らし、10年ほど前は2,500人程度の参加者しかなかったものが、5,600人を超える参加者を集めるまでになっています。その背景の一部には、プログラム委員会の創造した新たな価値があったように思います。
 戦略企画会議は5年目を迎えていますが、新しい満足を生み出すために各分野で継続して議論を行っています。
 日本眼科啓発会議の活動は、国民向けのイノベーションと言っていいでしょう。目と視覚情報の大切さを、メディアを通じて啓発しています。ドラッカーはマネジメントのもう一つの役割として“社会の問題に貢献する”ことを挙げていますが、啓発活動はまさにそれを果たしています。

 日眼とマネジメント
 日眼のマネジメントを行うのは、理事会、評議員会、事務局ですが、日常的に業務を担当しているのは常務理事会と事務局です。
 ドラッカーは言います。“仕事には働きがいが必要で、仕事に責任を持たせることが重要である。そのためには、(1)生産的な仕事を通じて、働く人に成果をあげさせる。(2)成果を実感させるためにはフィードバック情報が不可欠。(3)継続学習が不可欠”と。これらによりモチベーションを高く保ち、良いマネジメントを行うことが可能になります。
 常務理事会にかかわるようになって9年目になりますが、常務理事会の意識の高さと仕事ぶりにはいつも感じ入っています。それ以上に、事務局の方々のハードワークと献身には本当に頭の下がる思いです。事務局は黒子ですから、会員の皆様の目に触れることはほとんどありません。しかし、日眼が14,000人を超える会員を抱えながら、他学会に比べて圧倒的に整然とした形で運営されているのは、11名の事務の方々の日々のご尽力があってこそなのです。
 ドラッカーはさらに言います。“人は最大の資産である。人を生かす、強みを発揮させることが重要である”。常務理事以外の理事の先生方や、評議員の先生方には、年二回の会議以外、日眼のマネジメントにかかわる機会はあまりありませんでした。この点は今後解消すべき課題です。

 おわりに
 「もしドラ」が売れた一つの要因として、表紙の絵がいわゆる“萌えキャラ”だったからという話があります(by池上 彰)。ドラッカーと萌えキャラという意表を突いた組み合わせは、本を売る戦略として有効だったのかもしれません。
 日眼としてもいつも真面目なだけではなく、そういった柔らかさも必要なのかもしれません。これは特に日眼会誌という“硬い”雑誌のあり方にもかかわるように思います。実は、拙文の目的の一つは、「理事会から」という“硬い”コーナーに若干の“柔らかさ”を持ち込み、皆さんに興味を持ってもらうことでした。本欄に似合わない不真面目さだとお叱りを受けるかもしれませんが、一つの試みとしてお許しください。

財団法人日本眼科学会 常務理事 大鹿 哲郎

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