日本眼科学会:眼科におけるアジア諸国の台頭と日本の国際的優位性(116巻7号)
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眼科におけるアジア諸国の台頭と日本の国際的優位性

 昨年の6月から日本眼科学会の理事を務めさせていただいております。常務理事とは異なり指定担当業務はございませんので、本稿では最近私が感じている「眼科におけるアジア諸国の台頭」について記載させていただきます。

 日本眼科学会の使命は元来、眼科学・視覚科学を推進することと眼科学教育制度を充実させ眼科医療を進歩させることであります。また、国の公益法人制度改革に従い、日本眼科学会は財団法人(特例財団法人)から公益財団法人への移行を目前に控えていますが、公益法人ではより高い公益性が求められます。つまり、社会や国民への啓発、還元、社会のニーズに対する的確な対応が求められることとなります。ご承知のとおり、既に日本眼科学会は日本眼科医会と連携して日本眼科社会保険会議や日本眼科啓発会議を組織し、社会や国民へのかかわりに努めており、これを一層強化すべく種々計画されています。ここでは元来の使命である「眼科学・視覚科学の推進」について考えてみたいと思います。日本眼科学会は日本眼科学会総会や日本臨床眼科学会の実施、総集会プログラム委員会の設立、日本眼科学会雑誌やJJOの刊行、眼科専門医制度の運用等さまざまな活動を通して、これらの使命に対して大きな役割を果たしてきました。また、平成18年からは日本眼科学会戦略企画会議を立ち上げ、理念に合った目的を設定するとともに、具体的なアクションプランを作成して継続的に目的達成に挑んでいます。

 しかしながら、昨今の医療に対する国家政策が皮肉にも我が国の眼科学発展に逆風になっているように思います。例えば、2003年に施行された国立大学の独立行政法人化により、大学病院でも大きな収益性が求められるようになり、これまで以上に臨床を優先させるようになりました。殊に眼科を選択科目とした新医師臨床研修制度の導入と電子カルテ導入等の医療のIT改革への動きは、眼科を専攻する医師の減少をもたらし、多くの大学で眼科医師は診療に追われ研究や教育に割く時間がなくなってしまいました。高齢化社会による患者の増加はこれに拍車をかけています。加えて、医師の大学離れと博士号よりも専門医取得へと価値観が変遷し、大学院生やリサーチマインドを持ったphysician scientist(医師兼科学者)は減少の一途を辿っています。アメリカの大学医学部の臨床科は基礎部門と臨床部門に分かれており、基礎部門はPhDが担い、臨床部門を担う臨床医(MD)が自ら基礎研究を行うことは通常ではありません。一方、我が国の医学部では臨床医が同時に基礎研究も並行して行うことで発展し、多くの優秀なphysician scientistを輩出し、世界的な研究業績を挙げてきました。特に基礎研究の成果を臨床に橋渡しするトランスレーショナルリサーチの分野において、physician scientistが大きな役割を演じてきました。我が国の直面している研究人材の減少や研究基盤の弱体化は、日本の眼科学・視覚科学の推進にとってきわめて深刻な問題であります。

 さて、本年に国際眼科学会(WOC 2012)がアラブ首長国連邦のアブダビで、第27回アジア太平洋眼科学会(APAO)が韓国の釜山で開催されました。それらに参加して感じたことは、中国や韓国、シンガポール、インドなどアジア諸国の台頭です。これらの国からの研究発表のレベルが以前よりかなり向上しており、加えて、英語を流暢に話して討論している姿には感心しました。日本と同じアジア諸国の眼科水準が向上することは大変喜ばしいことでありますが、日本がリーダーとして牽引するようであって欲しいものです。政界でも日本の国際的地位の低下が危惧されているのと同様に、現在の我が国の眼科学の国際的優位性について気にかかるところであります。

 そこで、良い評価方法であるかは分かりませんが、Investigative Ophthalmology & Visual Science(IOVS)、Ophthalmology、American Journal of Ophthalmology(AJO)、Archives of Ophthalmology(Arch Ophthalmol)の4つの眼科関連の英文雑誌に2011年に掲載された論文の国別の数(表1)と、過去の5年間(2007年〜2011年)にIOVSに掲載された、日本を含むアジア3か国の論文数の推移(表2)をざっと調べてみました。表1、2の結果をどのように解釈するかについてはさらに詳細な調査が必要ですが、幸いにもIOVS、AJOではアメリカに次ぐ2位を、Arch Ophthalmolでは3位を維持しています。一方で特記すべきはIOVSでは中国からの論文数が急速に伸びでおり、特に2011年は日本の位置を脅かす論文数を輩出しています。また、臨床系の雑誌で最もインパクトファクターの高いOphthalmologyでは既に日本は6位となっており、僅差でありますが中国3位、韓国4位の後塵を拝しています。中国やインドは臨床論文では圧倒的な症例数を持っていることが強みであり、Ophthalmologyのような多数の症例を対象にした臨床試験を好む雑誌では、今後さらにこれらのアジア諸国が優位になっていくことが予想されます。加えて、IOVSのような基礎系雑誌においても中国がこれほどの論文数を輩出するようになっていることはある意味、脅威を感じざるを得ません。我が国の眼科学の国際的優位性は危機に瀕しているのではと感じる次第です。

表1 2011年に掲載された国別論文数

雑誌 IOVS
順位 国名 論文数
1 アメリカ 533
2 日本 93
3 イギリス 93
4 中国 71
5 ドイツ 59
6 オーストラリア 53
7 スペイン 32
8 韓国 31
9 フランス 28
10 シンガポール 22
その他 167
  総計 1,182

雑誌 Ophthalmology
順位 国名 論文数
1 アメリカ 162
2 イギリス 29
3 中国 17
4 韓国 15
5 オーストラリア 15
6 日本 14
7 シンガポール 12
8 オランダ 10
9 ドイツ 9
10 インド 7
その他 49
  総計 339

雑誌 AJO
順位 国名 論文数
1 アメリカ 119
2 日本 37
3 韓国 15
4 シンガポール 14
5 イギリス 13
6 中国 13
7 ドイツ 12
8 スペイン 9
9 フランス 7
10 イタリア 6
その他 50
  総計 295

IOVS:Investigative Ophthalmology & Visual Science, AJO:American Journal of Ophthalmology, Arch Ophthalmol:Archives of Ophthalmology.
雑誌 Arch Ophthalmol
順位 国名 論文数
1 アメリカ 201
2 イギリス 35
3 日本 33
4 ドイツ 27
5 中国 23
6 オーストラリア 15
7 スペイン 15
8 イタリア 12
9 カナダ 12
10 韓国 12
その他 66
  総計 451

表2 過去5年間にIOVSに掲載されたアジア3か国の論文数の推移

国/年 2007 2008 2009 2010 2011
日本 60 54 65 79 93
中国 17 38 45 47 71
韓国 6 10 13 24 31

 以前から日本の医療産業は国際的に劣勢であり、医薬品、医療機器の大幅な輸入超過が国家的課題として取り上げられています。それを解決する一つの政策として、昨年度に「博士課程教育リーディングプログラム」(文部科学省)が立ち上がりました。本プログラムは俯瞰力と独創力を備え、イノベーション能力を持った国際的なリーダーを育てる新たな大学院を形成するという事業であり、キーワードは国際性と俯瞰力です。21世紀になり急速にグローバルな情報化が進む中で、国際的な人材を育成することが医学会においても重要であり、日本の眼科の将来にとっても不可欠です。そのために、眼科に多くの優れた人材をリクルートし、国際的環境の中で育てる工夫が必要であると思います。2014年に東京で行う国際眼科学会(WOC 2014)は国際的な人材育成という観点からも絶好の機会であり、会員の皆様のご支援とご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。

財団法人 日本眼科学会
理事 西田 幸二

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