日本眼科学会:診療ガイドライン再考(118巻3号)
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診療ガイドライン再考

 日眼会誌には時々、「***の診療ガイドライン」といった類の文書が掲載されます。これは基本的には関連学会が当該眼疾患の診療指針を眼科医向けに示すために作成するもので、診療の貴重な羅針盤となります。私自身も日本緑内障学会の緑内障診療ガイドラインの作成に永らくかかわってきました。ところが、迂闊なことについ先日まで診療ガイドラインには推奨される作成法があるということを知らずにおりました。反省した間抜けなガイドライン作成委員が一般的な診療ガイドラインの動向に関して少しだけ書かせていただきます。

 現在、公益財団法人日本医療機能評価機構が厚生労働省の委託を受けて行っているevidence-based medicine(EBM)普及推進事業(Medical Information Network Distribution Service:略称Minds)というものがあります。このMindsの主要事業が質の高い診療ガイドラインの選定と普及です。診療ガイドラインは「患者のケアを最適化することを目的とした推奨が含まれている文書であり、その診療に関するエビデンスのシステマティックレビュー、および代替的なケアの利益と損害の評価を情報として作成されたものである(Graham et al, 2011)」と定義されます。ですから、システマティックな文献検索とその文献に対する専門家による評価や解釈がガイドラインの中核になることになります。

 Mindsのホームページ(http://minds.jcqhc.or.jp/)では、Mindsが選定した(すなわち、質の保証された)各科の診療ガイドラインを調べることができます。残念なことに、本稿執筆時点(平成25年12月中旬)では眼科関連のガイドラインは一つも選定されていませんでしたので、目についた日本皮膚科学会創傷・熱傷ガイドライン委員会による褥瘡診療ガイドラインを例として紹介します。このガイドラインでは、例えば、
 CQ18 褥瘡では感染をどのように診断するのか?
 CQ19 どのような時に抗菌薬の全身投与を行うのか?
 CQ20 感染を制御するにはどのような局所処置を行えばよいのか?

 などのclinical question(CQ)をいくつか立て、それぞれのCQに対して推奨文とエビデンスレベルや推奨度、参考文献を示すことに多くの頁を割いています。また、資金提供者の情報、作成委員の利益相反の明示、さらに完成前のレビュー過程に関する記述なども質の高い診療ガイドラインの満たすべき条件とされていて、それらを見事にクリアしています。

 また、エビデンスレベルの示し方にも基準があります。Mindsの診療ガイドライン作成の手引き2007(Minds診療ガイドライン選定部会監修、福井次矢氏、吉田雅博氏、山口直人氏編集)には、エビデンスレベルの分類として質の高い順に、
 I:システマティックレビュー/ランダム化比較試験のメタアナリシス
 II:1つ以上のランダム化比較試験による
 III:非ランダム化比較試験による
 IVa:分析疫学的研究(コホート研究)
 IVb:分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
 V:記述研究(症例報告やケースシリーズ)
 VI:患者情報に基づかない、専門委員会や専門家個人の意見

 が例として推奨されています。また、CQに対する推奨度の分類として、次のものが掲載されています。
 A:強い科学的根拠があり、行うよう強く勧められる
 B:科学的根拠があり、行うよう勧められる
 C1:科学的根拠はないが、行うよう勧められる
 C2:科学的根拠がなく、行わないよう勧められる
 D:無効性あるいは害のある科学的根拠があり、行わないよう勧められる

 こうした客観的なエビデンスを示すことで、担保された、質の高い医療を提供することができるということでしょう。こうした方針こそが、患者のケアの最適化というガイドラインの趣旨によく適っています。

 眼科関係で唯一Mindsのホームページで検索できたものが小原喜隆氏〔獨協医大(当時)〕を主任研究者とする白内障の診療ガイドラインでした。これはMindsによる診療ガイドライン選定作業の始まった2011年以前の研究で、2002年に発表された厚生科学研究補助金事業の成果です。その一部をここに紹介します。例えば、白内障の術前管理(全身状態・術前処置)の欄には、勧告(ガイドライン)として、
 「術前散瞳に非ステロイド系消炎剤の点眼が効果的である(グレードB)。
 術前の消毒剤・抗菌剤使用の有効性について現時点では有用なエビデンスなし。

 と書かれています。また、エビデンスとして、
 術前の眼瞼皮膚、結膜からの擦過細菌検出率は84.6%、36.7%ある文献番号)(III)。術前にポビドンヨード溶液で洗浄もしくは点眼すると結膜嚢および前房中の細菌培養後のコロニー検出率を低下させることができる文献番号)(III)。※ただし、患者アウトカムを検討した研究はない。
 白内障術後早期(4〜6時間)眼圧上昇に術前1時間前よりのアセトザラミド500mgの内服、ドルゾラミドの点眼が有効である文献番号)(III)。
 非ステロイド系消炎剤には白内障術前散瞳維持効果がある文献番号)(III)。

 などとあり、その後に文献番号で示した根拠となる文献が続いています。こうしたものが集まったものが診療ガイドラインとなるというものです。

 白内障の診療ガイドライン(2002年)はこのように現在のガイドラインの趣旨に照らしても適切に書かれています。ただし、ここにはガイドラインの一つの宿命もみられます。すぐに気がつくことですが、術前の抗菌薬の有効性の考え方などで現在とは異なっています。つまり、作成した時点では旬であっても、新しいエビデンスの出現で内容の変更を余儀なくされるということです。そうしたバージョンアップには大変な努力が必要になります。

 振り返って、日眼会誌に最近載った診療ガイドラインを見てみますと、残念ながら、Mindsで選定される診療ガイドラインとなる条件をクリアできるものがほとんどないことが分かります。私自身が作成委員であった緑内障診療ガイドラインも選定条件を満たしていません。今後は、診療ガイドライン作成に携わる先生方にはガイドライン作成に関する動向にも目を向けていただき、EBMを実践する内容となるように意識していただきたいというのが自省を込めた本原稿の趣旨であります。

公益財団法人 日本眼科学会
理事 山本 哲也

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