日本眼科学会:臨床研究に関する2つのトピックス(119巻8号)
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臨床研究に関する2つのトピックス

 厚生労働省が2013年に発表した統計によると、日本の男性の平均寿命は初めて80歳を上回り80.21歳、女性は過去最高の86.61歳となり、2年連続の世界一となりました。今後、さらに超高齢化が進行していくことが予測されており、最先端医療の実現による健康寿命の延伸が最重要課題の一つと考えられています。このような背景のもと、第二次安倍内閣において策定された日本再興戦略においても、健康医療分野は重点分野と位置づけられており、医学研究において社会実装に向けた出口戦略が強く求められるようになっています。ここでは、最近の医学研究に関わる2つのトピックス―光と影―を取り上げてみました。

 まず、「光」ですが、医療分野の研究開発の司令塔として、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED、http://www.amed.go.jp/)、いわゆる日本版NIHが創設され、本年4月より活動が開始されたことです。これまで文部科学省・厚生労働省・経済産業省に計上されてきた医療分野の研究開発に関する予算をAMEDに集約し、基礎段階から実用化まで一貫した研究の支援を可能にした画期的な改革です。AMEDでは、医薬品、再生医療、がん、脳と心、難病、感染症、研究企画といった7つのプロジェクトが産学連携、国際化、バイオバンク、臨床研究・治験基盤、創薬支援の5つの事業と「縦横連携」する体制となっており、戦略的な開発を長期的に進めることができる工夫が凝らしてあります。医学系の基礎研究の社会実装(医薬品や医療機器、再生医療技術の開発)には長年の年月を要します。これまでのような縦割りの支援体制では、基礎研究の成果を効率良く患者に届けることは難しい状況でした。この縦壁を取り払う新たな研究体制の整備がAMEDです。先日、AMEDの説明会に出席して特に印象に残ったことは、末松理事長のこの組織にかける並々ならぬ熱意で、大きな期待感を抱くことができました。それに追従できるように、世界の眼疾患に苦しむ患者さんのために、我々眼科・視覚科学分野の医師、研究者、特に次世代を担う若者のなお一層の奮起が希求されます。

 次に、「影」ですが、ディオバン事案、CASE-J事案、J-ADNI事案など、人を対象とした臨床研究において、度重なる研究不正が発覚したことは記憶に新しいところです。我が国の臨床研究はグローバル標準に基づき適正な管理体制が確立されていないと厳しく評価され、臨床研究を取り巻く環境は厳しさを増しています。このような背景のもと、「疫学研究に関する倫理指針」と「臨床研究に関する倫理指針」が統合されて、新たな指針「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(いわゆる統合指針)が策定され、その施行が本年4月1日から開始されました。本指針では、従来の指針から大きく変更あるいは追加された内容が盛り込まれており、臨床研究に関わるすべての人が十分に理解する必要があります。例えば、新指針では、研究の信頼性確保の章が追加されています。日本眼科学会の会員に対して、学会として臨床研究に関する教育を行っていくことも必要ではないかと感じています。

 新指針では、入力・変更・削除といったデータの変更履歴や、研究の進捗報告書提出の義務化、研究終了後のデータの保存など、研究者に対しより厳密なデータ管理が求められることになります。生物統計家やデータマネージャーなどの人材のきわめて乏しい日本の医学アカデミアで、自身の時間を削りながら研究を行っている日本の臨床研究者が新指針で求められている基準に沿って研究を行うには、質の高いデータ集積システムの導入が不可欠です。しかし、データ収集の状況がオンラインで把握でき、入力するときに値の整合性を確認できる質の高い電子データ集積(electronic data capture:EDC)システムは一般に高価であり、多くの臨床研究で利用できない現状があります。このような課題を解決するツールの一つが、医師主導型臨床研究用EDCシステムである「REDCap」(レッドキャップ)です。REDCapは米国Vanderbilt大学により開発され、現在では世界約90か国、20万以上のユーザーに利用される世界標準のデータ集積システムとなっています。REDCapの特長は医師や看護師などデータベースの専門家でなくとも、Webベースの安全なシステムでセットアップが簡単に行えるところであり、収集されたデータベースや調査票を自身ですべてカスタマイズ可能で、基本的なEDCの機能に加え、個人の匿名化機能、割付機能、アンケート調査機能といった研究者支援ツールも付加されています。

 さて、少し古いデータになりますが、トムソン・ロイター社のWeb of Scienceによると、2003年〜2007年の5年間に主要ジャーナルに発表された論文数でみた国際ランキングでは、日本は基礎研究の5位に比べて臨床研究では25位と、臨床研究の弱さが目を引きます。最近の改革―AMEDの発足と臨床研究の指針の整備などの取り組みが起爆剤になり、日本の臨床研究・治験が進み、研究成果の社会実装が加速されることを願ってやみません。

公益財団法人 日本眼科学会
常務理事 西田 幸二

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