日本眼科学会:勤務医師支援(120巻9号)
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勤務医師支援

 1.男女共同参画と日本の現状

 「多様な価値観に基づく多様な選択によりすべての人が性別にかかわらず能力を発揮できる真の男女共同参画社会の実現」を目指して、平成11年に男女共同参画社会基本法が制定された。第3次男女共同参画基本計画(平成22年)では「政治、行政、雇用、その他の分野において、平成32年を目途に指導的地位に女性が占める割合を一律30%にする」ことが掲げられた。そして男女共同参画の推進と女性の労働環境の整備に向けた取り組みが国家を挙げて行われている。しかし、内閣府男女共同参画局の発表では、我が国の平均寿命、教育水準、国民所得等から算出された人間開発指数は188か国中20位(平成26年)であるのに対し、ジェンダーギャップ指数は145か国中101位(平成27年)と低迷している1)。これは我が国では女性の能力開発はされているのに、社会ではそれを活用できていないことを示している。その要因は技能に応じて就職できる欧米とは異なり、我が国では新卒一括採用後、仕事を覚え、経験を積んでステップアップしていく雇用体系にある2)。このシステムでは体力的に劣る女性が出産をし、家庭との両立を図りながら男性と同じ量の仕事をし、能力を開発するなど土台無理なことである。

 2.眼科勤務医の勤務環境に関する調査結果報告と眼科勤務医の現状

 医師は国家資格を有する専門職であり、これを持たない一般女性と比較すると就職時に性差のために仕事の内容を区別されることはない。先に挙げた指導的地位を眼科研究者に限定すると、教授あるいは研究室の責任者である女性医師は10名ほどであり、30%にはほど遠いものの、彼らの多くは妻、母である。働く環境が整備され、自らが力を尽くし、実力を発揮できた場合のロールモデルになる。

 日本眼科学会戦略企画会議は日本眼科医会と協力して眼科勤務医の勤務環境に関する情報収集を行い、眼科勤務医の現状を解析して報告している3)。調査は平成25年に行われたもので、調査の回答者は男性医師935名、女性医師496名と多くないが、年代別では30代、40代の回答者が多く、中堅勤務医の現況をかなり良く反映していると考えられる。それによると、週50時間未満の勤務は女性医師では20代18%、30代44%、40代62%であり、30代で急増し、40代でさらに増加している。30代、40代では当直、オンコールなどの仕事の負担も減っている。仕事に対する満足度(「かなり満足」と「少し満足」の割合)は20代55%、30代49%、40代54%となっている。報告の中で30代では現在の勤務環境は1人で仕事とケア労働を両立するのが厳しい状況であり、仕事を減らしていると考えられ、満足度が下がり、キャリア形成のうえでは不利になると考察されている。40代で満足度が上がるのは、仕事をセーブして子どもと家族のために生活する日常を精神的に受け入れる人が多くなることを示している可能性がある。男性医師は週60時間以上の労働が20代84%、30代68%と高く、当直、オンコールなどの仕事は変わらず、業務内容の過重度が高い。仕事の満足度は20代63%、30代50%、40代49%で、30代では女性と差がない。過重労働による不安要因の一つである家族関係の崩壊は女性医師よりも高い。このことは、男性医師は「妻子を養う」責任のもと、組織の中で仕事に力点を置いており、やりがいはあるかもしれないが、過重労働を強いられて満足度の高くない現状を示している。

 3.ワーク・ライフ・バランス

 ワーク・ライフ・バランスは「仕事と生活の調和」、「仕事とケアのバランス」、「仕事と家庭の両立」と言い換えられる。仕事と生活の調和は、人間らしく生活し、精神的身体的健康を維持していくための不可欠な条件であり、女性に限らずすべての働く人々を対象にしたものである。女性医師は出産・育児のために仕事を減らすことを受け入れることによってワーク・ライフ・バランスを保っているとしたら、医師としての能力を十分活用できない点で国家的損失である。一方、男性医師や出産前の女性医師は過重労働を続け、ワーク・ライフ・バランスを崩しているとしたら、人間として幸せとは言えない。内閣府男女共同参画局のホームページを見ると、ワーク・ライフ・バランス推進のための国民運動として「カエル! ジャパン」のスローガンがあり、ワーク・ライフ・バランスの実現には働き方を変えよう! と書いてある。平成16年医師臨床研修制度の変革によって眼科志望者数は激減し、近年の病院の経費削減や経営改善の方針のもと勤務医に過重な業務とリスクが強いられている。このような現状では多くの仕事を抱える勤務医の過重労働を減らすことも、出産・育児を行わなければならない女性医師の完全復帰のための環境整備も困難であり、「カエル! ジャパン」などできるわけがない。優秀な女性医師はごまんといる。彼らの完全復帰のためには彼ら自身の復帰への強い意志と努力が必要であるが、就業環境の整備を急ぐ必要がある。男性医師が「イクメン」を堂々と申し出ることを可能にするためには、勤務医全体の現状を広く知ってもらい、国や自治体を軸に支援システムを構築していく必要があり、眼科勤務医の正確な現状を把握しておく必要がある。

 4.日本眼科学会の取り組み

 女性勤務医については日本眼科学会では日本眼科医会とともに「女性医師支援合同会議」を発足し、平成20年から6回の合同会議を行い、眼科女性医師の直面している問題点や支援について話し合っている4)5)。その内容は女性医師の実態調査3)6)の他、女性医師支援の提案を行うための情報収集、学会参加のための託児施設の設置の推進、女性医師支援に関するセミナーの開催、十分効果があったとは言えないが産後職場復帰のためのサポート、女性医師支援に対する施設での意識付けなどである。第三期戦略企画会議の勤務医支援委員会(委員長:寺崎浩子先生)では、日本眼科医会と協力して、育児・介護休業法に基づく短時間勤務制度の実態や「マタハラ(マタニティ・ハラスメント)」問題を含めた女性医師勤務状況の実態を把握するアンケート調査を行う予定である。現状を正確に把握するためにアンケート調査にはできるだけ多くの眼科医にぜひ回答してもらうことが大切である。勤務医全体としてみると、毎年眼科医数動向調査報告を行い(眼科医数動向調査検討委員会が実施)7)、第120回日本眼科学会総会では日本眼科医会から勤務医の負担軽減、待遇改善、過重緩和などについてのシンポジウムが行われた。超過重労働をしてきた女性勤務医の1人として、出産・育児と仕事の間で悩んでいる女性医師を含むすべての眼科勤務医のワーク・ライフ・バランスが改善される日が早く来ることを願っている。ワーク・ライフ・バランスは長期にわたって良い仕事をするために不可欠であると思う。

文献

1)内閣府男女共同参画局:男女共同参画に関する国際的な指数. http://www.gender.go.jp/international/int_syogaikoku/int_shihyo/index.html.
2)濱口桂一郎:日本の女性はなぜ「活躍」できないのか? 働く女子の運命. 文藝春秋, 東京, 15-27, 2015.
3)前田利根, 後藤 浩:眼科勤務医の勤務環境に関する調査結果報告―女性眼科勤務医の現状―. 日眼会誌118:987-997, 2014.
4)山本修一, 湯澤美都子:女性医師支援の活動について. 日眼会誌115:558-559, 2011.
5)佐藤美保:第三委員会活動報告 女性医師支援合同会議から. 日眼会誌117:302-303, 2013.
6)木下 茂, 根木 昭, 井上幸次, 黒坂大次郎, 坂本泰二, 他:女性医師, 病欠者の対応に関するアンケート調査報告. 日眼会誌113:526-531, 2009.
7)松村美代:談話室:平成19年眼科医数動向調査報告. 日眼会誌112:78-82, 2008.

公益財団法人 日本眼科学会
監事 湯澤美都子

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