日本眼科学会:目の病気 ぶどう膜炎
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目の病気

ぶどう膜の病気

ぶどう膜炎

はじめに
 「ぶどう膜炎」とは目の中に炎症を起こす病気の総称です。このようなことから、「内眼炎」とも呼ばれ、その原因には失明に至る重症なものもあり、さまざまです。からだの表面の病気は早く治りますが、からだの中の病気はなかなか良くならないように、ぶどう膜炎は目の中の病気ですから数日から数週で治ることは少なく、数か月から数年、病気によっては持病として付き合っていかなければならないものもあります。

症状
 図は、正常な目とぶどう膜炎を生じた目のシェーマです。ぶどう膜炎が生じると、目の中の透明な前房と硝子体に炎症性細胞が浸潤するため、霧視(かすみがかかったように見えること)や飛蚊症(虫が飛んでいるように見えること)と羞明感(まぶしく感じること)、その他、視力低下、眼痛、充血などの症状がみられます。片眼だけのことも両眼のこともあり、両眼交互に症状が現れることもあります。症状の経過は、だんだん悪くなるものもあれば、一時的に良くなり再びまた悪くなるといった再発・寛解を繰り返すものまでさまざまです。

図.ぶどう膜炎を生じた目
左図:正常な眼の断面図。角膜から入ってきた光刺激は網膜で像を結ぶため、角膜、前房、水晶体、硝子体は透明な組織です。
右図:ぶどう膜炎を生じた眼の断面図。「房水」と呼ばれる水で満たされている前房と、99%が水からなる硝子体に炎症性細胞が浸潤します。
(防衛医科大学校眼科 竹内 大教授提供)

原因
 表は、2002年と2009年に日本眼炎症学会が調査を行った我が国におけるぶどう膜炎の原因疾患を頻度の高い順に示しています。2002年の結果にみられるように、我が国ではサルコイドーシス、フォークト−小柳−原田病(以下、原田病)、ベーチェット病が多く、この3つの病気は「日本における三大ぶどう膜炎」といわれていました。しかし近年、ベーチェット病は減少傾向にあり、2009年の結果では6位となっています。2009年の調査では、強膜炎が新たに対象となり、また急性前部ぶどう膜炎も疾患定義の拡大により上位原因疾患となっています。しかし、原因疾患が分からない分類不能なぶどう膜炎が2002年には38.9%、2009年には少し減少したものの33.5%にみられ、すなわち「ぶどう膜炎」と診断されても3人に1人は原因疾患が分からないことになります。ぶどう膜炎は、サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病のように全身の免疫異常が要因であることや、細菌性眼内炎やヘルペス性虹彩毛様体炎のように細菌、ウイルスの感染、そのほか真菌(カビ)、寄生虫などによることや、強膜炎のように全身の免疫異常、感染がともに要因になることがあります。また、外傷や悪性腫瘍も要因となります。

表.ぶどう膜炎の原因疾患とその頻度
2002年
順位 疾患 (%)
1 サルコイドーシス 13.3
2 フォークト―小柳―原田病 6.7
3 ベーチェット病 6.2
4 細菌性眼内炎 3.8
5 ヘルペス虹彩毛様体炎 3.6
6 ポスナー・シュロスマン 1.9
  分類不能 38.9

(日本眼炎症学会による調査結果)
2009年
順位 疾患 (%)
1 サルコイドーシス 10.6
2 フォークト―小柳―原田病 7.0
3 急性前部ぶどう膜炎 6.5
4 強膜炎 6.1
5 ヘルペス虹彩毛様体炎 4.2
6 ベーチェット病 3.9
  分類不能 33.5

検査
 一般的な眼科検査、蛍光眼底造影や網膜断面構造解析(光干渉断層撮影:OCT)などの眼科特殊検査に加えて、血液検査・胸部X線検査などの全身検査、ツベルクリン反応検査が行われます。また、目の組織採取が必要であったり、診断的治療目的の手術が施行されることもあります。サルコイドーシスや原田病、ベーチェット病のような全身の免疫異常が原因の場合は、目以外のからだにも症状が現れるため、詳細な問診が大切になります。

診断
 ぶどう膜炎は、問診、眼科検査所見、全身検査所見から統合的に診断されます。しかし、特徴的な眼科所見や全身検査結果がみられず、診断に至らないことや、鑑別のための追加検査が必要となることもあります。最初は原因疾患が分からないぶどう膜炎であっても、経過とともにぶどう膜炎の病気が診断されることもあり、診断に苦慮する目の病気の一つです。ぶどう膜炎患者さんの3人に1人は原因不明ですが、原因が分かれば、詳しく症状、予後を知ることができ、より適切な治療を受けることができます。

治療
 基本的には薬による内科的治療です。原因が細菌などの病原微生物による場合は、その病原微生物に有効な薬が使用されますが、多くのぶどう膜炎では、原因疾患が分かっても根治療法は困難であり、治療の目的は炎症を抑えて視力障害につながる合併症を予防することです。ぶどう膜炎の種類や重症度によって治療法や治療の期間は異なりますが、局所療法としては、炎症を抑えるための副腎皮質ステロイド点眼薬と炎症により茶目(虹彩)が黒目(水晶体)に癒着し瞳が不整円となる虹彩後癒着を予防する散瞳薬点眼が処方されます。目の炎症が強いときは目の周りの組織に注射する場合もあります。目の局所治療だけでは良くならなかったり、目の奥に炎症が強い場合は、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬の全身投与が行われます。副腎皮質ステロイド療法は症状の改善に伴い徐々に量を減らしていきますが、自覚症状が改善したからといって、自己判断による急激な減量や中止は炎症を再燃させるばかりではなく、死に至るショック症状を起こすことがあるため、たいへん危険です。

合併症
 ぶどう膜炎の合併症には、白内障、緑内障、硝子体混濁、網膜前膜症、嚢胞様黄斑浮腫などがあり(各病気の詳細は他項を参照してください)、内科的治療では良くならない合併症に対しては手術が必要になります。このような合併症は炎症が落ち着いても視力が回復しない原因であり、難治なぶどう膜炎では黄斑変性や視神経萎縮を来し、高度な視力障害に至ることがあります。

予後
 ぶどう膜炎を来した目の病状経過は病気によってある程度分かりますが、視力予後に関しては同じ病気であってもさまざまです。一方、原因不明のぶどう膜炎ではその病状経過は不明であり、視力予後も経過をみていかなければなりません。

おわりに
 ぶどう膜炎は失明に至ることもある目の病気です。上記症状を自覚したら必ず眼科を受診することが大切です。感染が原因ですと、一日でも早く治療を開始しなければ失明する病気もあります。不適切な点眼や通院の自己中断はぶどう膜炎の活動性を高め、予後を悪化させてしまうので、眼科医の指示に従って通院し、適切な点眼、内服治療を受けることが必要です。日常生活においては、ぶどう膜炎が悪化したときの行動を覚えておき、その行動を避けること、避けられないときには十分な注意を払うことが大切です。

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