日本眼科学会:目の病気 眼内リンパ腫
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眼内リンパ腫

はじめに
 リンパ節をはじめ、全身のリンパ系組織に発生するがんを総称してリンパ腫(悪性リンパ腫)と呼びます。このリンパ腫は結膜や眼窩などの眼球周囲組織に発生するほか、眼球内に生じることがあり、これを眼内リンパ腫といいます。この病気はしばしば中枢神経系(脳)にもリンパ腫を生じ、重篤な経過をたどる可能性があります。
 一般に眼内リンパ腫の多くは、その症状や所見がぶどう膜炎という炎症性の眼疾患と非常に似ているため、診断が確定するまでに長い時間を要します。このように本来の病気が類似した他の疾患と紛らわしい一連の疾患を‘仮面症候群’といいますが、眼内リンパ腫は最も代表的な仮面症候群の一つとして知られています。

疾患の頻度と傾向
 眼内リンパ腫の発生頻度に関する正確なデータはありませんが、全国の大学附属病院で診断されたぶどう膜炎を対象とした調査によれば、眼内リンパ腫がぶどう膜炎全体の中に占める割合は、2002年の調査では1%、2009年の調査では一部他の疾患が含まれている可能性もありますが、全体の2.5%を占めていました。眼内リンパ腫の診断が正確に行われる機会が増えてきたことを反映した結果であるかもしれませんが、このデータが示すように本邦のみならず、欧米諸国でも眼内リンパ腫は増加傾向にあります。なお、脳腫瘍全体の中に占める中枢神経系悪性リンパ腫の割合も増加しつつあります。

疾患の本質と分類
 全身性の悪性リンパ腫の組織学的な分類に従えば、眼内リンパ腫のほとんどはびまん性大細胞型リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma)というタイプに相当します。リンパ節のような組織の存在しない眼内や中枢神経系になぜリンパ腫が発生するのか、その原因は今も分かっていません。
 眼内リンパ腫は主に4つの病型に分類することができます。すなわち、(1)眼内と脳に病気が現れる眼-中枢神経系リンパ腫、(2)眼内のみに病変がみられる狭義の眼内リンパ腫、(3)眼以外の臓器と眼内にみられるリンパ腫、(4)眼以外の臓器と眼内および中枢神経系にみられるリンパ腫、の4つのパターンです。最も多いのは(1)の眼-中枢神経系リンパ腫で、全体の6割程度を占めます。診断確定時の年齢は平均63歳で、やや女性に多い傾向にあります。
 眼症状が先行した場合、8割近くの症例が数年以内に中枢神経系にもリンパ腫を生じ、多彩な神経症状を生じます。
 なお、結膜や涙腺などの眼周囲組織に発生するリンパ腫の多くは組織学的にはmucosa associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫であり、一般に眼内リンパ腫と比べると予後は良好です。

眼内リンパ腫にみられる症状と所見
 眼内リンパ腫が生じた際の症状は、かすみ目(霧視)や視力の低下、飛蚊症などであり、これらはぶどう膜炎にみられる自覚症状とほとんど同じです。
 眼内リンパ腫にみられる眼所見は、(1)硝子体混濁が主体となる場合と、(2)眼底の斑状病巣が主体となる場合の2つのタイプがあり、両者が混在していることもあります。硝子体混濁は周辺部に向かって放射状に拡がる索状、あるいはオーロラを思わせる独特の混濁を示すことがあります(図1)。眼底の病巣は網膜下の小さな黄白色病巣が徐々に拡大し、しばしば表層に褐色の色素が観察されます(図2)。視力への影響はさまざまですが、視神経に病変が及ぶ場合や再発を繰り返して眼底の中心(黄斑)が障害されると著しい視力低下を来すことがあります。
 眼所見が硝子体の混濁のみの場合はぶどう膜炎との鑑別が非常に困難であり、後述する特殊な検査を行わない限り、診断を確定することはほぼ不可能です。

図1.眼内リンパ腫にみられる索状で、放射状に拡がる硝子体混濁
(東京医科大学眼科 後藤 浩教授提供)

図2.眼内リンパ腫に特徴的な色素斑を伴った
大小さまざまな網膜下の黄白色病巣
(東京医科大学眼科 後藤 浩教授提供)

眼内リンパ腫が診断されるまでの流れ
 眼症状が現れる前から中枢神経系のリンパ腫、あるいは全身の悪性リンパ腫が診断されている場合は眼内リンパ腫の診断も比較的容易ですが、このような症例はまれで、眼科を受診した時点では眼以外には何も異常はないことが少なくありません。したがって診断は困難をきわめ、この疾患の希少性もあって確定診断までに数か月、あるいは1年以上も時間がかかってしまうこともまれではありません。すなわち、眼内リンパ腫では発症後しばらくの間は多くの症例が‘ぶどう膜炎’の診断のもとに経過観察が行われ、副腎皮質ステロイド(以下、ステロイド)の点眼薬や内服薬による治療も行われています。しかし、このステロイドによる治療に反応しないことを確認することが診断上の大きな参考となります。実は眼内に現れる細胞はすべてリンパ腫細胞というわけではなく、炎症細胞が混在していることも多いため、消炎剤であるステロイドによる治療に多少なりとも反応してしまうことがある点も、本症の診断の上で混乱の原因となっています。
 いずれにしても‘通常のぶどう膜炎ではない’、‘眼内リンパ腫の可能性があるかもしれない’という疑いが生じた時点から、診断に向けたアプローチが開始されることになります。

眼内リンパ腫の診断
 硝子体混濁がみられるとき、すなわちリンパ腫細胞が眼内に浮遊している場合には、硝子体手術という方法で硝子体を切除することによって眼内の細胞を採取し、これを調べることによって診断が確定します。いわゆる細胞診と呼ばれる診断法ですが、眼内の混濁がなくなることで視力の向上も期待できます。しかし、実際にはこの細胞診のみでは診断を確定することができないこともしばしばあります。確実に診断するためには硝子体の中の成分(サイトカイン)なども詳細に調べることが診断の一助となります。一方、硝子体が混濁しておらず、眼底(網膜)にだけ病変が存在するような場合には、硝子体手術によって網膜下の組織を採取する必要があります。この方法は技術的な問題のほか、合併症の危険性もゼロではありません。
 このように眼内リンパ腫の診断には硝子体手術が鍵を握っていることになりますが、一方、‘ぶどう膜炎’に対してはステロイドなどの薬物療法が主体となり、硝子体手術で混濁を取り除く治療は一部の例外を除けば一般的な方法ではありません。むしろ、ぶどう膜炎のような炎症性疾患に対して硝子体手術のような外科的治療を行うことは、時期によっては好ましくないこともあります。ぶどう膜炎との鑑別が難しい眼内リンパ腫に対して診断目的の硝子体手術を早期に行うことは、このような背景もあって実施が躊躇されることがあります。
 なお、眼内リンパ腫の診断が確立した後は、眼病変に対して後述する治療が行われますが、同時に中枢神経系の病変の有無を定期的にチェックしていく必要があります。具体的には数か月ごとに造影剤を用いた頭部の磁気共鳴画像(MRI)検査や、必要に応じて血液学的な評価などを行っていくことになります。

眼内リンパ腫の治療
 眼内リンパ腫の治療は、眼病変に対する局所的な治療と中枢神経系や全身の病変に対する治療を考慮する必要があります。眼局所療法としては放射線を眼部に照射する方法と、メトトレキサートと呼ばれる代謝拮抗薬を眼内に注射する方法があります。放射線療法は連日の照射治療を2週間程度続けることになります。後者の注射による薬物療法は週に1、2回、その後は月に1回のペースで半年から1年間、継続します。いずれの治療も外来通院で行われ、有効な治療法です。しかし、どちらの方法を選択すべきであるのかについては、統一した見解は得られていません。放射線治療では皮膚炎、角膜障害、白内障、放射線網膜症などの副作用が生じることがありますが、多くは克服可能です。一方、メトトレキサートの眼内注射は重篤な角膜障害などを来すことがあります。また、注射に伴う眼内炎などの感染症のリスクがあり、十分な注意が必要です。
 中枢神経系リンパ腫に対しては脳全体に放射線を照射する方法や、メトトレキサートの全身投与などがあります。いずれの治療法も副作用が現れる可能性があります。

おわりに
 眼内リンパ腫が一つの独立した疾患単位として確立されてからの歴史は比較的浅く、症例数も多くはないことから、いまだに広く認知された疾患とは言い難く、これが診断を難しくしている要因ともなっています。眼の病変とともに高率に現れる中枢神経系リンパ腫の予後については以前と比べれば向上しつつあるものの、再発を繰り返し、不幸な転帰を辿ることも少なくありません。中枢神経系リンパ腫は非常に短期間に進行し、突然、脳神経症状が現れることもあるので、眼内リンパ腫の診断がついた後は、眼科のみならず、血液内科、神経内科、脳神経外科などとチームを組んで経過観察と治療に当たっていくことが大切です。

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