ガイドライン・答申

2010/10/10

アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)

巻頭言

 アレルギー疾患の有病率は、世界的に増加し、またすべての年齢層に広がっている。眼科領域においても、アレルギー性鼻炎と同様、スギ花粉による季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)の患者数の増加、低年齢化は日常診療においても実感するところであろう。また、アトピー性皮膚炎、気管支喘息など全身のアレルギー疾患の重症化とも関連し、アレルギー疾患を合併する頻度の高い春季カタルやアトピー性角結膜炎の難治例に遭遇する機会も増えてきている。これらのアレルギー性結膜疾患の問題点として、花粉症患者では、日常生活におけるqualityoflife(QOL)や仕事の効率の低下が挙げられている。また、学童期に多い春季カタルでは、視力低下や眼痛のために、学校生活への支障、時には、不登校になる場合も少なからず経験する。
 このようなアレルギー性結膜疾患の問題に取り組むために、日本眼科アレルギー研究会では、1995年に作成した「アレルギー性結膜疾患の診断と治療のガイドライン」をもとに、2006年に「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン」を作成し、定義・分類、疫学、検査法、臨床像と評価基準、診断と鑑別診断、予防:セルフケア、治療:メディカルケア、その他の関連疾患の8章に分け、体系的に記載するとともに、病態生理、原因抗原を追記し、アレルギー性結膜疾患を理解するための一助とした。しかし、その後、診断法の進歩、新しい治療薬の開発が行われ、標準的な診断、治療の方法として日常診療で取り入れることができるものが出てきた。
 今回、アレルギー性結膜疾患の現時点での標準的な診療指針の作成を目指し「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン」の改訂を行った。今回の主な改訂は眼局所のアレルギー反応のバイオマーカーとなる涙液を用いた検査法を取り入れたこと、また、治療においては新しい抗アレルギー点眼薬や免疫抑制点眼薬が追加され治療における位置付けを記載したことである。これらの改訂は、検査法(第3章)、診断と鑑別診断(第5章)、治療(第7章)に主に反映されている。
 本診療ガイドラインが広く有効に活用され、本邦におけるアレルギー性結膜疾患に対する診療水準がさらに向上することで、依然として増加し続けているアレルギー性結膜疾患患者のQOLの改善に少しでも役立つことができれば幸いである。

日本眼科アレルギー研究会
理事長 高村 悦子

医療は本来医師の裁量に基づいて行われるものであり、医師は個々の症例に最も適した診断と治療を行うべきである。日本眼科アレルギー研究会は、本ガイドラインを用いて行われた医療行為により生じた法律上のいかなる問題に対して、その責任義務を負うものではない。

アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン編集委員会
委員長:高村 悦子
副委員長:内尾 英一
委員:海老原伸行、大野 重昭、大橋 裕一、岡本 茂樹、熊谷 直樹、佐竹 良之、庄司  純、中川やよい、南場 研一、深川 和己、福島 敦樹、藤島  浩(五十音順)

ガイドライン:アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)

第1章 定義・分類(434k)
第2章 疫学(110k)
第3章 検査法(571k)
第4章 臨床像と評価基準(2647k)
第5章 診断と鑑別診断(331k)
第6章 予防:セルフケア(243k)
第7章 治療:メディカルケア(208k)
第8章 その他の関連疾患(1036k)
追記1 病態生理(429k)
追記2 原因抗原(163k)
文献(242k)

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本ガイドライン内における略記用語一覧
アレルギー性結膜疾患(allergic conjunctivitis disease:ACD)
アレルギー性結膜炎(allergic conjunctivitis:AC)
季節性アレルギー性結膜炎(seasonal allergic conjunctivitis:SAC)
通年性アレルギー性結膜炎(perennial allergic conjunctivitis:PAC)
アトピー性角結膜炎(atopic keratoconjunctivitis:AKC)
春季カタル(vernal keratoconjunctivitis:VKC)
巨大乳頭結膜炎(giant papillary conjunctivitis:GPC)

アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン作成委員会