ガイドライン・答申

2012/12/10

弾性線維性仮性黄色腫診断基準2012

 眼科領域で弾力線維性仮性黄色腫(pseudoxanthoma elasticum:PXE)と呼んでいる全身性疾患は、皮膚科では弾性線維性仮性黄色腫と呼ばれている。PXEは網膜色素線条(angioid streaks)を伴うことが多く、さらに脈絡膜新生血管を伴う症例では高度な視力障害を来すこともある。眼科医による初期診断ならびに経過観察が重要な疾患の一つである。PXEの原因遺伝子として2000年にABCC6が同定され、常染色体劣性遺伝形式をとることが明らかとなったため、従来のかつて欧米で作られたPXE分類・診断基準が実情と合わなくなってきた。またPXEの症状ならびにその重症度は多彩なことが特徴であるが、本邦のPXE患者の詳細な解析はなされていなかった。
 我々の行った2010年~2011年の全国規模調査により、本邦PXE患者の実態が初めて明らかにされた。詳細な調査が可能であった患者は141名で、そのうち皮膚・粘膜病変、眼症状がそれぞれ90%以上に認められ、循環器症状は、およそ半数で認められた。皮疹もしくは網膜色素線条が片方だけ認められる患者が15例存在した。さらに皮疹が存在しない5例に行ったブラインドバイオプシーによる病理検査では、3例に弾性線維変性・石灰化が認められた。ここで得られた情報をもとに、感度・特異性を解析し、臨床医に使用しやすい診断基準作成を目指した。本案は、皮膚科、眼科、循環器科、遺伝子解析、統計学解析のそれぞれの専門家知識を集約して作成した。
 網膜色素線条を認めた際には眼科的経過観察に加え、本邦PXE患者の臨床調査に基づいて作成された本診断基準も利用し、PXE疑い症例として早期の診断確定や循環器疾患の精査などを複数の診療科で連携して行い、患者quality of lifeの維持に努めることが重要であると考える。
 なお本基準については、日本皮膚科学会雑誌にも掲載予定であり、序文を日本眼科学会雑誌用に修正・加筆したものである。(日眼会誌116:1156-1157,2012)

弾性線維性仮性黄色腫診断基準2012(194KB)

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