ガイドライン・答申

2022/02/10

緑内障診療ガイドライン(第5版)

日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会

第5版への序

 緑内障診療ガイドライン第5版を皆様にお届けする。診療ガイドラインとは、エビデンス(科学的根拠)に基づいて最適と思われる治療法を提示する文書のことである。「緑内障診療ガイドライン」は2003 年に初版が出版され、初めて日本における緑内障診療の指針が示された。緑内障治療の原則は眼圧下降である。その眼圧下降手段には薬物、レーザー、手術があり、緑内障の病型と病期を考え合わせて治療方針を決定する。しかし、緑内障は単一の病態ではなく複雑な症候群と考えるべき疾患である。そのため、実際の診療は一言でいえるほど簡単なものではない。さらに緑内障の病態に対する理解、治療方法、診断機器は時代とともに急速に進化しており、標準的と思われる緑内障診療の形態も変化している。緑内障診療の変化、社会情勢、社会常識の変化に伴って緑内障診療ガイドラインも2017年に第4版まで改訂された。診断・治療にあたって複数の診療オプションがあるのは当然のことである。その診療オプションの間で望ましい効果(益)と望ましくない効果(害)のバランスを知ることで患者アウトカムの改善が期待できる。診療における医療行為の重要課題を整理してクリニカルクエスチョンを設定する。クリニカルクエスチョンが設定されたら論文を集めてシステマティックに評価し、それをもとにパネル会議でディスカッションして推奨文を作成する、というのが一般的な診療ガイドラインの作成方法である。今回の改訂では緑内障治療に注目してクリニカルクエスチョンを設定した。それと同時に第4版の出版以降に明らかにされた事項、進化した治療方法の記載を追加することも重要な役割と考えた。また、第4 版で記載した推奨の強さ〔1:強く推奨する、2:弱く推奨する(提案する)〕およびエビデンスの強さ〔A(強):効果の推定値に強く確信がある、B(中):効果の測定値に中程度の確信がある、C(弱):効果の測定値に対する確信は限定的である、D(とても弱い):効果の測定値がほとんど確信できない〕を提示している。そのために木に竹を継いだような不自然な診療ガイドラインになったかもしれない。時間的制約もあり、すべての工程がMedical Information Distribution Service(Minds)診療ガイドライン作成マニュアルに沿って必ずしも厳密に作成されていないことを記しておく必要がある。今回の作業を通じてまだまだ信頼できるエビデンスが少ないことが明らかにされた。エビデンスレベルや推奨が弱い項目も少なくない。エビデンスが不足している部分を補う活動が望まれる。このことを念頭に置きながらこの緑内障診療ガイドライン第5版を活用いただければと願う。

2021年5月

日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会
委員長 木内 良明
(日眼会誌126:85-177,2022)


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