2020/12/10

コロナで変わる学会の形態

 今年は、新型コロナウイルス感染(COVID-19)の影響で診療も学会も大きな変化を迎えています。第124回日本眼科学会総会(日眼総会)は、すでに日時も決まり、特別講演、招待講演、評議員会指名講演の演者も選考され、一般演題も決まっていた中で1か月前から急速にCOVID-19感染が拡大し、どのような形態で学会を行うかを直前ギリギリまで総会長の後藤 浩先生と理事会で何度も打ち合わせし、最終的に日眼総会歴史上初めての完全Web開催となりました。これまでも小さな研究会でビデオ講演を拝聴したりすることはありましたが、平形明人理事も9月号に書かれているように日眼総会のような大規模学会をWebで行うなど、COVID-19以前は考えもしないことでした。それ以後も様々な日眼関連学会、地方会、講演会が、Web開催あるいは中止になることが続いています。日眼総会の頃は、「臨眼の頃には元に戻るだろう」と考えていた人も多かったのですが、今になるとこの状況がいつまで続くのか、全く読めません。このような変化は色々な分野に広がっています。様々な会議がオンラインで開催されるようになり、会議自体はかえって増えてきた印象です。外来も手術もCOVID-19対策で大変ですし、オンライン診療の議論も進んでいます。大学教育ではオンライン授業が一般化し、学生実習の問題なども議論されるなど、あらゆる分野で混乱が生じています。このようにCOVID-19は、眼科だけに限らず世界を一変させてしまいました。治療法やワクチンが開発されてある程度落ち着いてきたとしても、COVID-19前の世界には戻らないと感じています。

 今回のコロナ危機で浮かび上がってきたのは、日本におけるIT化の遅れです。10万円給付金が遅れたのもこのためとニュースになっています。日眼の記録理事として、以前も書かせていただきましたが、日眼のホームページ(HP)は形態が古く、時代に合わせてバージョンアップしなければならないと考え、「日眼HP改訂ワーキンググループ」を立ち上げて準備を進めているところでした。そこで今回の日眼総会のWeb開催という事態になって感じたのは、HPだけではなく学会そのもののIT化をもっと進めてゆかねばならないという危機感です。Web学会の開催は一応無事に終わりましたが、色々な課題も明らかになりました。Web学会では、学会のために休暇や休業することなく、好きな時間に聴きたい講演が何度でも拝聴できることなどの利便性が広く知れわたることになり、この形態がコロナ収束後も続いてゆくことが期待されています。一方で、従来形式の学会(リアル学会)が半年以上開かれない今の状況下では、色々な先生と直接ディスカッションができないもどかしさもあります。やはり学会で全国の先生方とお会いして直接お話しするのは大事なことです。

 日本眼科学会としては、これからHPの改変とともに、学会自体のIT化も進めてゆかなければならないと考えています。会員情報の管理については、今まで紙ベースの申請でアナログ事務処理をしていたことが多かったのですが、専門医単位などとも紐付けしてIT化を進め、無駄なアナログ事務処理を減らしてゆく試みを進めておりますが、個人情報に関わるので、システム構築にはまだ時間がかかると感じております。色々な医学系学会でも行われているeラーニングシステムの導入を日眼でも検討しておりましたが、これも進めてゆくつもりです。従来リアル学会で行っていた教育セミナーのようなものはWebで行う方がよいと考えています。勤務医、開業医、研修医、コメディカルなど、学会参加者の中にも全日程リアル学会に参加するのが困難な人もたくさんいると思います。リアル学会とWeb学会の棲み分けは、COVID-19後の学会のあり方として考えてゆかなければならないと思います。つまり、COVID-19後はリアル学会とWeb学会が、それぞれの需要に基づいて共存してゆくことになると考えていますが、そこで問題になるのは専門医単位認定に関わることです。現在はWeb学会の単位認定は、緊急事態として処理しておりますが、いずれこちらのシステムも構築してゆく必要があります。会員情報、専門医単位認定、Web学会は一体化してシステム構築を考えてゆく必要があり、これが学会のIT化ということだと考えています。これには個人情報守秘や著作権侵害予防など、考えなければならないこともたくさんあります。しかしCOVID-19によるピンチをチャンスと捉え、時代に合わせた学会を構築してゆくことが必要だと考えていますので、今後とも会員の先生方のご指導、ご協力を何とぞよろしくお願いいたします。

公益財団法人 日本眼科学会
常務理事 吉冨 健志