2021/07/09

理事会から

 小椋祐一郎前常務理事の後任として、会計担当理事を拝命いたしました。日本眼科学会の活動を維持する会計の役割は重大であり、身に余る重責と感じております。2回目となる大鹿哲郎理事長の活動を支えられるように職務を務めたいと存じます。

 令和3年4月末現在の日本眼科学会会員数は、15,680名で99.7%の方が会費を納めています。その会計がどのように使用されているのか、その詳細については日本眼科学会の会計の決算書を、日本眼科学会ホームページの事業報告のページ(https://www.nichigan.or.jp/member/about/summary/jigyohokoku.html)でご覧になることができます。
 この1年は、コロナ禍で日本眼科学会の会計も大きく影響を受けました。予算額と決算額にこれまでにない差が生じました。これは、日本眼科学会が平成25年2月1日に財団法人から公益財団法人へと移行してから8期目にして初めての出来事です。本欄では、それを解説したいと思います。

 日本眼科学会の公益目的事業は、以下の3分野に大別されます。
 公1:学術集会開催に関する事業
 公2:学術書刊行に関する事業
 公3:専門医認定、生涯教育、研修施設認定に関する事業
 これらを執行するための日本眼科学会の年間予算規模は、約5億円強です。
 令和2年度の予算額における主な収入は、会員年会費が約2億3千万円、専門医登録料が約1億1千万円、日本眼科学会総会収入が約9千万円、専門医関連事業諸々の収入が約7千万円という内訳になっています。そして、主な支出は、雑誌刊行に約1億円、総会に約9千万円、総務費(補助金、市民公開講座、戦略企画会議関連など)に約8千万円、専門医制度関連に約8千万円、会議費に約4千万円、人件費を含む管理費が約9千万円です。
 そして、公益財団法人として遵守しなければならない以下の会計3原則があります。
 (1)収支相償:それぞれの公益目的事業について、赤字または収支プラスマイナス0でなければならない、すなわち公益目的事業では収益を上げてはいけない。
 (2)公益目的事業比率:公益目的事業が費用全体の50%以上とならなければならない。
 (3)遊休財産保有制限:公益目的事業費と同額(1年分)を超えて保有してはいけない。
 したがって、令和2年度の予算収支は、当初2千7百万円の赤字を予定しておりました。しかし、新型コロナウイルスの感染が広がる中、日本眼科学会事業の執行も大きく影響を受け、決算では7千8百万円の黒字となり、約1億円の上振れとなりました。
 主な要因に順位付けてみますと下記のとおりとなります。
 (第1位)第124回日本眼科学会総会が4千万円の黒字:総集会がWeb開催となり、参加者が予想の7,000名から、10,883名に増加して収入決算額が増額となったうえに、総集会費支出が約1千9百万円の減額。
 (第2位)事務局IT化システムの導入延期のため2千万円の支出減:戦略企画会議関連費として事務局IT化システムの導入を予定したが、コロナ禍で時期が延期され支出減額。
 (第3位)理事会・評議員会をはじめとする各種委員会などの会議のWeb開催により1千2百万円の支出減:会場費、旅費交通費などの支出減額。
 (第4位)専門医の認定試験開催形態の変更、関連する講習会の開催数減少のため1千万円の支出減:コロナ禍で専門医認定試験や講習会の開催形態を変更し、会場費などの諸経費が支出減額。
 (第5位)雑誌不要者の増加による9百万円の支出減:日本眼科学会雑誌の送付不要者(3,721名)の増加による印刷費、発送費の支出減額。
 (第6位)市民公開講演会、障がい者啓発イベント中止のため8百万円の支出減:コロナ禍による開催中止による支出減額。
 このように、5位の雑誌刊行費以外は、コロナ禍の影響によるものでした。そして、日本眼科学会の公益目的事業のうちの公1が、第124回日本眼科学会総会の黒字、市民公開講演会・障がい者啓発イベントの中止、Web会議開催等により黒字となりました。
 公益財団法人では1年間の財産の増減を表す「正味財産増減計算書」とG表と呼ばれる「正味財産増減計算書内訳表」を、内閣府へ提出およびホームページで公開することになっています。令和2年度の決算に関して「正味財産増減計算書内訳表」を見ますと、収支相償については上記3事業のうち公1のみが黒字決算となっており、公益財団法人の会計3原則の(1)をクリアできませんでした。これは、日本眼科学会が公益財団法人になって初めてのことです。しかし、これはコロナ禍という非常に特殊な事情によるものであり、内閣府からも考慮されるとのことです。公益目的事業比率については約81%となっており、会計3原則の(2)は充たしています。遊休財産保有制限についても1年分の公益目的事業費を超えていないため、会計3原則の(3)は充たしております。
 今回のコロナ禍の影響で、日本眼科学会の事業がかなり変更になったことが会計報告からも改めて確認できます。現在、日本専門医機構の資金分担やInternational Council of Ophthalmology(ICO)をはじめとする海外の眼科学会との交流資金、急速に進歩するIT化にかかる費用など不透明な支出も予想され、令和3年度事業計画書(日本眼科学会雑誌第125巻1号に掲載)を基本に、コロナ禍を乗り越えて日本眼科学会が目的とする公益事業を遂行できるよう会計使途を検討する必要があります。
 コロナ感染収束の兆しが未だ見えず、学会や講習会などの業務もウィズ/アフターコロナ時代に合わせて、適切に対応して修正していく必要があります。一方で、コロナ禍の対応で、IT化が一挙に進み、会議形態などの変更で支出を効率的に抑えられる手段、専門医のための教育学術集会の多様な形式、海外の講習会や学会などへの参加形態の変化など、会計の新たな収支方式を経験しました。
 コロナ禍の影響を受けた会計変化の経験を生かして、日本眼科学会が目的とする眼科医の質の向上、日本の眼科の国際化促進などに向かってより効率的に予算が配分できるように検討していきたいと存じます。会員の皆様方からのご指導、ご協力を何とぞよろしくお願いします。

公益財団法人 日本眼科学会
常務理事 平形 明人