日本眼科学会:いかにして眼科医を確保するか?(122巻12号)
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いかにして眼科医を確保するか?

1.教育が必要なわけ

 公益財団法人日本眼科学会は、その目的が「眼科学の進歩発展を図り、もって人類・社会の福祉に貢献する」とされている。この目的を達成するためには、人材として優秀な眼科医を継続して育成することが重要である。このためには、眼科を志望する医学生をいかにして多く確保するかを真剣に考える必要がある。医師不足を背景に平成20年度から文部科学省は医学部の定員を増やしており、平成30年度現在での入学定員は9,400人を超えている。この人数はしばらくは継続される。厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会」の医師需給分科会によると、医師の需給としては、平成36年度で医師総数約30万人で均衡するとの推計もあり、平成34年度以降は医学部定員を減少する方向性が、同分科会では「意見の一致をみた」と報じられている。限られた医療資源、人口減少による医療への需要の変化と減少が確実視される状況で、日本の眼科医療を支える優秀な眼科医をどのように確保するかは、ますます重要な課題となってくる。

 人材確保のために医学教育の面から考えると、(1)専門医教育の段階で眼科医学を教育することに加えて、眼科を専攻する医師を増やすために卒前、初期臨床研修のレベルでの眼科医学教育を考える必要があること、(2)現在の専門医制度は、日本専門医機構で統括されているが、そのなかで日本眼科学会としてのプロフェッショナルオートノミーをどのようにして維持、発展できるかを考える必要があること、が重要と考える。

2.卒前から初期臨床研修までに如何にして眼科医学教育を行うか?

 現在の医学部における教育は大きな改革の真っ只中にある。それは、山形大学医学部で嘉山孝正医学部長(当時)により創設された「参加型臨床実習をスチューデント・ドクター制で行う」という制度が全国医学部長病院長会議により日本のすべての医学部でスタンダードな医学教育となっていることが大きな進歩である。スチューデント・ドクター制とは、チーム医療の中で、医学生(スチューデント・ドクター)もメンバーとして役割を果たしつつ臨床実習を行う制度である。スチューデント・ドクターは、全国すべての大学で同じテスト(共用試験:知識を問うCBTと実技試験であるOSCE)に統一基準で合格し、認証される。このことによりスチューデント・ドクターの資格が公的なものとなり、勉強する学生も教える教員も社会的な責任を負うことになる。このような臨床実習で、卒業時に臨床医として臨床現場で働けるだけの臨床能力を育成することを目指しており、日本の医学教育が国際的に高いレベルにあると認められることとなった。一般社団法人日本医学教育評価機構(JACME)により行われる医学教育認証を受けた大学医学部卒業生でないとアメリカ合衆国での医学部での卒後臨床医教育を受けられない。

 文部科学省のモデルコアカリキュラムや厚生労働省による医師国家試験の出題基準で眼科学の項目はもちろん必修となっている。卒前の医学教育において眼科学をきちんと教えることは医師を育成するうえで大変重要であるが、それ以上に必修の眼科学教育の中で如何に医学生に眼科学の面白さ、将来性を提示できるかが今後の眼科医を増やすためには大きな課題である。日本眼科学会戦略企画会議や日本眼科学会関連学会で議論され、教育用のスライドが整備されたことは大変有意義で先見性のある業績と考える。今後は、もう一歩進んで眼科医学が他の臨床系の医学界と競合して如何に魅力的な分野であるかをアピールする総合力を日本眼科学会が持つ必要があると考える。世界に冠たる再生医学や眼科手術の高いレベルのアピールがまずもって重要である。加えて現在の国民の関心の高い分野でのアピールが必要かもしれない。例えば、がんをはじめ多くの分野で分子生物学とビッグデータ、AIなどの先端的な技術を統合的に使って推進されつつあるゲノム医学を強力に推し進めることが有効かもしれない。このような一般に向けても関心の高い分野を開拓して医学生に「日本の眼科はすごい」と思わせるようなことを考える必要があるかと思われる。

3.専門医教育

 日本眼科学会も参加する一般社団法人日本専門医機構の目指す専門医とは、眼科に引き寄せて記述すると、「眼科の診療領域における適切な教育を受けて、十分な知識・経験を持ち患者から信頼される標準的な医療を提供できるとともに、先端的な医療を理解し情報を提供できる医師」と定義されている。眼科専門医のところに行けば、眼科のどのような疾患でもまず診察して適切な指示をしてくれる。すなわち、自ら治療をするか、難治疾患で専門性の高い病院を必要に応じて紹介できるということである。また、定義の後半部分は、現在進歩の著しい先端医療についても勉強して、患者から質問されたら答えることができるということである。眼科医の矜持は、「目のことならなんでもお答えします」ということで、それを実現するためには、専門医像として、どのような教育をし、資格を更新してもあらゆる分野の知識にいつもアンテナを張って情報を吸収する向学心を持つことで責任を果たすことができるということである。このような医師を育成することは以下のような社会的な意味がある。

(1)眼科医が眼科全般について標準的な診療について知識があり、たとえ自分で治療できなくても適切な医療を受けられる医療機関をタイムリーに紹介できれば、眼科医全体、すなわち開業医、勤務医が協力するネットワークをつくって国民の負託に応えることができる。いわば、医師不足に眼科医のチームワークで対応できる。

(2)眼科医療への需要について現状を把握し、今後のいろいろな変化も分析して、必要な眼科医像を確立し、専門医教育が現場に即したものとなる。というより、現場に即したものとすべきである。問題としてはかなり難しいが、日本の眼科医の必要数、各地区での眼科医の必要数を日本の眼科医自らが答えを出すことを勇気を持って行うことで、眼科医療は眼科医が構築するというプロフェッショナルオートノミーを守ることができる。

 よく知られた言葉であるが、医師であり医療行政に大きな足跡を残した後藤新平の「金を残して死ぬ者は下だ。仕事を残して死ぬ者は中だ。人を残して死ぬ者は上だ。」は、今の時代でも医学教育の重要さをきわめて明瞭に示しているように考える。

公益財団法人 日本眼科学会
特任理事 山下 英俊

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