日本眼科学会:眼科医数の未来予想図(123巻1号)
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眼科医数の未来予想図

はじめに

 1989年、Dreams Come Trueの吉田美和は、「ずっと心に描く未来予想図は、思った通りにかなえられていく」と希望を語り、ブレーキペダルを5回踏むとそれは「ア・イ・シ・テ・ル」のサインだと甘い声で歌い上げました。

 眼科の未来予想図は、そんなに生易しいものではありません。医療費や医師数が思った通りにかなえられることはありませんし、フェイコ・ペダルを5回グッと踏み込むと「カ・ク・オ・チ・タ」てなことになりかねません。Nightmare Comes Trueです。

 さて本稿では、眼科医数を今度どうすべきかという、きわめてセンシティブな難題を、大胆にも取り上げてみたいと思います。この問題は、日本専門医機構が専攻医数に上限を設定するという動きを見せたことをきっかけとして、俄に浮上してきています。
 なお本稿は私見です。また、結論はなく、まずは問題提起です。

1.新入医局員が減った

 眼科医数の動向を反映したものとしてよく使われるのが図1、すなわち毎年の新眼科医数です。2004〜2005年は新医師臨床研修制度の影響で新眼科医は少ないのですが、その時期を境にして、大きな変化がみられます。それ以前は年間に400人を超える多くの眼科医が誕生していたのが、その後、ガタッと減ります。さらに、大学を研修先として選ぶ医師の数が減り、一般病院に流れたため、大学の人材不足は顕著なものとなりました。

 この状況に危機感を覚えて日本眼科啓発会議(日本眼科学会、日本眼科医会、眼科関連団体)が行ったのが、2012年に開始した眼科サマーキャンプ(今年からはスプリングキャンプ)や、学生教育用のスライド整備などの活動です。近年、新眼科医の数が持ち直し、漸増傾向にあるのは、こういった努力が実を結んだことも一因と考えられます。

図1 日本眼科学会への新入会員数の推移
新医師臨床研修制度の導入(2004〜2005年)後、新入会員数が大きく減っている。

2.眼科医の総数は増えているのか減っているのか

 眼科医のトータル数は、確実に増えています(図2)。かつてほどの増え方ではないにしろ、緩やかに増加しています。医師のトータル数が減っている科もあることを考えると、増えているだけマシなのかもしれません。

 しかし、全医師数に占める眼科医の割合をみてみると(図3の真ん中の実線)、2002年以降、右肩下がりになっています。厚生労働省が医学部の定員を増やし、医師増を図る政策をとっている中で、眼科医の増加はそれに追いついていないということになります。

図2 眼科医の総数と勤務形態別数

眼科医トータル数は増加し、診療所勤務の医師も増えているが、病院勤務の眼科医が2002年以降、明らかに減っている。医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)より。

図3 全医師数に占める眼科医数の割合

図2の数字を全医師数で割ったもの。総数をみると、全医師の増加率に比べて、眼科医の増加率が低いことが分かる。また、診療所勤務の眼科医が増え、病院勤務の眼科医が著しく減っている傾向がより鮮明となる。医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)より。

3.診療所と病院勤務のバランス

 図2で注目すべきなのは、診療所勤務の眼科医数と、病院勤務の眼科医数の割合です。診療所の眼科医が確実に増えているのに対し、病院の眼科医が2002年以降、明らかに減ってきています。

 この傾向と、新医師臨床研修制度の導入が相俟って、大学病院の人材不足は加速し、大学からの医師派遣によって維持されてきた地方の医療は大きなダメージを受けています。

4.他科と比べてみよう

 図2は眼科における診療所/病院勤務の比率でしたが、図4は全科における同様のデータです。図2と図4には大きな違いが二つあります。一つは、全科(図4)では病院勤務医の数も一貫して増えているということです。眼科(図2)の場合と大きく異なります。二つめは、病院と診療所の数が逆転していることです。眼科では診療所>病院であり、その差が年々開いていっているのに対し、全科では一貫して診療所<病院です。

 もともと、眼科は診療所の割合が多いことが知られています。表1のように、全科の中でもその割合は高く、外科系では美容外科に次いで2番目となっています。

 全科医師数に占める眼科医の割合を、診療所と病院別でみると(図3)、眼科の特徴がさらによくわかります。診療所勤務の眼科医の割合は確実に増えており、一方で病院勤務の眼科医の割合は悲しいほど減少しています。

図4 全医師数と勤務形態別医師数

眼科と異なり、病院勤務の医師も増加している。また病院勤務>診療所勤務であり、眼科が逆のパターンであることが分かる。医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)より。

表1 診療所に勤務する医師の割合(診療所/(診療所+病院))
医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省、2016年)より

5.相変わらずの地域格差

 人口10万人当たりの眼科医数を都道府県別にみると、表2のようになり、明確な地域格差があります。最大2.6倍の地域差ですが、これは衆議院選挙で「違憲状態」とされた一票の格差(2.13倍)を上回る数値です。

 他科と比較するとどうでしょうか。実は眼科の地域格差は非常に大きいのです。大都市医療圏と過疎地域医療圏の医師分布を比べた研究では1)、地域格差の大きい診療科として眼科、耳鼻咽喉科、小児外科、心臓血管外科、産婦人科、皮膚科、救急科が挙げられており、眼科は地域格差の大きい科の代表となっています。

 以上から考えるに、眼科医は“都市部の診療所”で多く、“地方の病院”で不足している、という大まかな構図を描くことができます。

表2 人口10万人当たりの眼科医数:都道府県別

6.眼科医数と眼科医療費

 数だけではなく、他のファクターとも考え合わせてみてみましょう。

 まず、医師数と医療費の関係です。2016年において、眼科医の数は全体の4.31%であるのに対し、眼科の医療費は全体の3.67%にしか過ぎません。図5に示すように一貫して、眼科医数>眼科医療費なのです。

 これは眼科医にとって残念な状況です。ギャップを埋めるためには、眼科医数を減らすか、眼科医療費を増やす努力をするしかありません。

 幸いなことに、この数年は、眼科医療費も持ち直しており、眼科医数と眼科医療費の乖離も少しずつ改善されています(図5)。しかしながら、眼科医数を100としたときに、眼科医療費85の割合に留まっている状況は、我々にとって好ましいものとはいえません。

図5 全医師数に占める眼科医数の割合と、全医療費に占める眼科医療費の割合

2016年で、眼科医数が全体の4.31%であるのに対し、医療費は全体の3.67%。一貫して、眼科医数>眼科医療費である。医療費の動向(厚生労働省)と医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)より。

7.様々な立場と様々な意見

 大学では臨床だけではなく、研究や教育を行う必要があります。人材不足のために臨床や教育だけで疲弊してしまうような状況では、研究に力を入れるべくもありません。すなわち、眼科学全体の発展のためには、ベースの頭数が必要である、という根強い意見があります。

 一方で、眼科の研究はMDだけが担う必要はなく、米国のようにMDとPhDが共同すればよいので、闇雲に眼科医を増やす必要はないという意見もあります。

 また、開業の先生の中には、眼科医が増えればライバルが増える、とお考えの方もおられます。狭量な考え方と非難するのは簡単ですが、jobsecurityからすれば当然の意見ともいえます。

 このように、眼科医の適正数については様々な意見があります。一部繰り返しになりますが、
 ・数は力なり。発言力、研究力確保のためにも人数はどんどん増やすべき
 ・米国のように眼科医数に上限を設け少数精鋭にすべき
 ・関連病院維持のためにも、もっと入局者が欲しい
 ・都会の眼科は飽和している。制限すべき
 ・都会の先生は地方の苦労を分かっていない
などなど。立場が異なれば、意見も異なるでしょう。

8.米国と比べて日本の眼科医数は?

 医師数を単純に国際比較することは、それぞれの国の背景事情を踏まえる必要があるので、必ずしも簡単ではないのですが、ここでは参考までに、日本と米国を比較してみます。図6は、各専門領域における医師数の日米比較です。両国の人口比からして、この値が0.4を超えていると、日本の医師数が多いということになります。眼科は明らかに、日本が多いグループに入っています。

 米国では、全国・州・病院レベルで、診療科別のレジデントの受け入れ人数に上限を設定しています。そこに全国レベルでマッチングを行うことにより、診療科や地域による医師の偏在が起きないよう工夫しているのです。ちなみに眼科は非常に人気がある科であり、優秀な研修医しか眼科医になることはできません。

 ただし、米国には眼科医以外にオプトメトリストが、日本には視能訓練士がおり、状況が異なりますので、単純に数だけ比較して結論を出すことはできません。

図6 日本と米国の医師数の比較:各専門別

0.4ラインを超えると、人口比で、日本の医師数が多いことになる。眼科は、日本が多いグループに入っている。医師の需給に関する検討会、日米の診療科別の医師数の比較(厚生労働省、2005年)より。

9.医療とAI

 眼科診療のあり方は、今後大きく変わっていきます。

 人工知能(AI)は、とてつもない可能性を秘めています。現在は、人間の診断能力にどれだけ近づけるかという段階ですが、研究レベルでは、眼底写真を見ただけでその患者の性別や喫煙歴を判定してしまうAIも登場しています2)。将来的には、眼科医のレベルを遙かに超えた読解能力を持ったAI検査器機が利用可能になり、診断の部分はAIに任せるという時代になるでしょう。

 眼科医はそれ以外の判断・決定・治療の部分を担うわけですから、現在と同じだけのマンパワーが必要ではなくなる可能性があります。

10.問題は地域偏在と勤務形態偏在

 以上を考えるに、現下の問題は「眼科医不足」ではなく、「地域偏在」と「勤務形態偏在(開業医vs. 病院勤務医)」だということができます。

 医師数だけで言えば、耳鼻咽喉科(9,272名、厚生労働省2016年調査、以下同)、皮膚科(9,102名)、泌尿器科(7,062名)、麻酔科(9,162名)、放射線科(6,587名)、形成外科(2,593名)など他のマイナー科目に比べて、眼科医(13,144名)の数はすでに相当多いのです。

 多くの場所で議論されているように、「地域偏在」や「勤務形態偏在」に対する処方箋を書くことは、容易ではありません。「地域偏在」については、日本専門医機構が昨年度から取り入れた、大都市圏での専攻医数上限設定が、批判はあるものの、一つの方策として評価されるものです。「勤務形態偏在」については、国による政策誘導と、大学および病院関係者の努力によるしかなく、現況を鑑みるに即効薬はないと言わざるを得ません。

おわりに

 私自身は上記のデータと将来予想から、数を求めてリクルート活動を行う時期は終わったのではないかと考えています。リクルート活動を行うなら、優秀な人材を確保するためでしょう。

 かつてのバブル的な大量入局時代はもう絶対に来ません。医局員がどんどん開業で辞めてしまうから、関連病院維持のためにも、もっと入局者を増やさないといけないというのは、底の抜けた桶に水をどんどんつぎ込んでいるようなもので、エンドレスどころか、そのうち蛇口が壊れてしまいます。大学や病院勤務の魅力を高めるという簡単ではないミッションに取り組み、(眼科全体として)相当数入局・相当数退局という負のスパイラルを脱するシステムを作っていく必要があるでしょう。

 先日の日本眼科学会戦略企画会議で、眼科医の適正人数を考えようという壮大な課題がスタートしました。それに合わせて皆様に問題提起をするとともに、問い掛けを行う目的で、本欄を執筆しました。日本専門医機構が専門医のあり方のすべてを取り仕切ろうと画策する中、眼科医自らが自分達の将来についてしっかり考えておくことは、きわめて重要です。前向きな議論を進めていこうと思います。

文献

1)福田昭一, 渡部鉄兵, 高橋 泰:診療科別医師数の地域間格差及びその動向に関する研究. 日本医療・病院管理学会誌55:9-18, 2018.

2)Poplin R, Varadarajan AV, Blumer K, Liu Y, McConnell MV, Corrado GS, et al:Prediction of cardiovascular risk factors from retinal fundus photographs via deep learning. Nat Biomed Eng 2:158-164, 2018.

公益財団法人 日本眼科学会
理事長 大鹿 哲郎

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