日本眼科学会:医師の働き方改革(123巻9号)
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医師の働き方改革

 本年の4月より渉外担当理事を拝命しました京都大学の辻川明孝です。日本眼科学会では国内外の交渉などを通じて寺崎浩子理事長のサポートをさせていただいています。

 私が勤めている京大病院には、これまで紙の出勤簿はあるだけで、残念ながらきちんとした勤怠管理はなされてきませんでした。しかし、ついに本年6月からアプリを使っての医師の出退勤の管理が行われるようになりました。『医師の働き方改革』に関して、医師への1,860時間の時間外労働の容認といった報道を最近よく目にします。今までの医者の仕事は特別という時代は終わってしまい、一労働者とみなされるようになったわけです。これ自体は悪いことではなく、むしろ、医師としては歓迎すべきことだと思いますが、『医師の働き方改革』が『地域医療構想』、『医師偏在対策』と結びつけられ『三位一体』の改革にされていることに大きな問題が生じています。

1. 現在の一般則

 本年4月から働き方改革関連法が順次施行されています。医師などの特殊な業種に限って5年間の猶予があり、2024年から適用されることになりますが、すでに大企業では適用されています。

 労働基準法第36条には「労働者は法定労働時間(1日8時間1週40時間)を超えて労働させる場合や、休日労働をさせる場合には、あらかじめ労働組合と使用者で書面による協定を締結しなければならない」と定められています。法定労働時間を超えて労働するためには「時間外・休日労働に関する協定届」を提出する必要があり、一般的に「36協定」と呼ばれています。「36協定」に関する法律も改正され、時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合(6か月まで)でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)が限度になっています。

2. 2024年4月から

 2024年から働き方改革関連法が医師にも適用されますと、大部分の医師に当てはまるA(医療従事勤務医水準)では時間外労働の上限は年960時間/月100時間(休日労働含む)になります。しかし、地域医療のためどうしても必要と認められた場合に適用されるB(地域医療確保暫定特例水準)では、時間外労働の上限は年1,860時間/月100時間(休日労働含む)になります。よく耳にする年1,860時間というのはこの水準からきているのですが、すべての医師がここまで時間外労働が許容されているわけではありません。管理者(病院)からの申し出を経て、都道府県の審議を受けて初めて適用されることになります。

 また、医師の場合にはキャリアアップの過程で密な研修を受ける必要がある時期があり、それに対応するためのC(集中的技能向上水準)では、上限は年1,860時間/月100時間(休日労働含む)に設定されています。C-1は初期、後期研修医が研修プログラムに沿って基礎的な技能や能力を修得する際に適用され、C-2は医籍登録後の臨床従事6年目以降の者が、高度技能の育成が公益上必要な分野について、特定の医療機関で診療に従事する際に適用されます。しかし、連続勤務時間制限28時間・勤務間インターバル9時間の確保、代償休息のセット(C-1、初期研修医を除く)という制限が付帯しています。

 我々眼科医には影響は限定的ですが、時間外労働には夜間、休日労働も含まれます。現在、全科では時間外労働が年1,860時間を超える医師は約2万人いると推計されていますが、2024年までにゼロにできるのかどうかは不明です。しかし、法律で規定されていますので罰則規定が設けられています。また、時間外労働の上限を理由に患者の診察を断っても、応召義務違反にならず、責任は問われないという方向性も示されています。

3. 2035年4月から

 B(地域医療確保暫定特例水準)は廃止され、基本的にはA(医療従事勤務医水準)の年960時間/月100時間(休日労働含む)が時間外労働の上限になります。C(集中的技能向上水準)の基準は残されますが、時間は縮減される方向です。

4. 根拠

 このようにして『医師の働き方改革』を進めることができるという根拠はどこにあるのでしょうか? 医学部の定員は1970年頃から増え始め、現在は年間9,420人です、それに伴い医師数も増加し、現在の医学部定員が維持された場合には2025年頃には人口10万人対医師数がOECD加重平均に達すると見込まれています。また、労働時間を週60時間(月平均80時間の時間外・休日労働、年960時間に相当)に制限した場合、2028年には必要医師数と供給数が均衡し、それ以降は供給過多になると推計されています。もちろん、日本全体でみた場合の話ですので、すべての都道府県、すべての診療科で需要を満たすために、『医師偏在対策』として都道府県別・科別のシーリングが必要になってくるわけです。

5. 今後の課題

 働き方改革を行うための対策として一番に挙げられているのが管理者・医師の意識改革です。まず、改革するという医療者の意識が大切で、それに加えて、ICT等を利用した業務の効率化、タスクシフティングの方向性が提唱されています。これまで医師が行っていた医療行為を、研修を受けた看護師が行ったり、診断書を事務職員が代行入力したりすることで医師の業務負担を軽減させます。それでも、当直明けの業務制限などを考えると病院では医師の採用数を増やすなどの経費増が予想されます。病院は診療報酬での財源補助を厚生労働省に要望していますが、現時点では厚生労働省・支払基金は診療報酬での画一的な補助には否定的です。

 大学病院の医師の多くはアルバイトを行うことで生計を立てています。大学病院も病院医師がアルバイトで収入を得ることを前提として経営が成り立っています。今後は医師がアルバイトで診療する時間も時間外労働時間に見なされることになっています。しかし、きちんと把握ができるかどうかは不透明です。

 診療以外にも教育・研究活動を行っている医師は大勢います。また、医師は自己研鑽により自己の診療レベルの向上に時間を割いています。『医師の働き方改革』では医師の自己研鑽・研究・教育をどう考えるかは明確になっていません。また、大学教員では専門業務型裁量労働制を採用している大学もそうでない大学もあります。研究時間は労働時間に含まれるのではないかと推測しますが、研究に関してはまだ厚生労働省は明確な方向性を示していません。研究は文部科学省の管轄範囲であり、医師以外の研究者への影響もあるからでしょう。このままでは病院勤務医が、平日は診療を行って、週末は研究データをまとめて論文を作成するなどといった働き方はできなくなるかもしれません。これまで、日本ではphysician scientistが臨床的な研究を牽引してきましたが、このままでは絶滅危惧種になりそうです。

 本稿は誌面の都合上、説明を簡略化している部分もあります。詳細をお知りになりたい方は厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_469190.html)などでご確認ください。

公益財団法人 日本眼科学会
常務理事 辻川 明孝

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