日本眼科学会:新専門医制度について(123巻12号)
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新専門医制度について

 2016年の理事会だよりに、新専門医制度への移行で、改善・改悪に進む両方の可能性があるが、どちらに転ぶか注視したい旨を書きました。残念ながら、眼科では改悪されたという人が多いようです。特に問題になっているのが、専攻医募集数を制限するシーリングです。2年前から始まった方式ですが、未だに安定運用に至っていません。日本眼科学会事務局や私に、多くの質問が来ておりますが、誌面の都合がありますので質問の頻度が高い問題について、質問に答える形で順に述べます。

シーリングが始まった理由は?

 新専門医制度設立の目的は、医師自身が研鑽を積み、その結果を第三者機関が評価することで、国民に信頼される医療を作ることです。その趣旨からいえば、医師数をコントロールするために用いる現在の運用法は、本来の目的に反しています。しかし、そのことを言い出すと収拾がつかなくなることを、まずご理解ください。行政側から指針を示されれば従わざるを得ないのは、国からライセンスを付与されている業種の宿命です。眼科もそうです。その範囲の中で、眼科医療を発展させて、国民や社会に貢献することが我々の使命です。現在は、日本の医療問題の多くが医師の偏在にあると認識されており、その問題を解決するために、専門医制度が利用されています。具体的には、地域および診療科ごとに医師適正数を計算して、必要新専攻医数を決め、過剰な地域では医師数を制限する方法です。都会では、すでに適正医師数を満たしているので、必要新専攻医数は限られます。そのため、募集定員数に制限が設けられました。これが地域ごとのシーリングです。

プロフェッショナルオートノミーの問題とは?

 今回、いくつかの地区のシーリングが撤廃されましたが、各地区の総定員数はほとんど増やしておりません。連携施設と基幹施設の共同条件も、日本専門医機構(以下、専門医機構)の基準と同一ではありません。専門医機構から出された基準は、その条件内であれば、各診療科で自由に制度を運用してよいということであり、その基準を一言一句守れというものではありません。これは、プロフェッショナルオートノミーと言われる考え方であり、専門職集団は、職業的良心に基づいて自分たちを律するという条件で、職業上の自由な権限を与えられるという社会契約です。専門医機構も、このことを奨励しています。

 つまり、専門医制度における日本眼科学会の役割は、専門医機構の指示を単に伝えることではなく、専門医機構から提示された条件を眼科の実態に即したものに改変して、眼科医療を向上させることなのです。今回は新専攻医数を前年並みにするという決定が常務理事会でなされました。「専門医機構の指示と違うのは、日眼が我々をだまそうとしている」という激烈な苦情を一部からいただきましたが、それは誤った認識です。

施設定数の上限を設定する理由は?

 眼科専門医制度では、各施設の上限は、大学の規模にかかわらず10名になっています。眼科以外の診療科の状況と比べて、この方式はきわめて優れていると言えます。例えば、某診療科では、とある施設は毎年40人の入局があり、周辺の施設ではほとんど入局がないという状況が続いた結果、施設間の格差が広がっただけでなく、診療科全体の活力低下が起こりました。そうなったのは、研究や臨床などの多様性がなくなったためです。学問は生き物のように、時間とともに急速かつ大幅に変化します。どの分野が発展するかが分からないので、裾野を広げておかないと変化に対処できません。一部の大学だけに人を集めた場合、短期的にはレベルが上がったとしても、学問の急速な変化に対処できないので、長期的には研究レベルが下がることが実際に起きています。眼科にも施設間格差は存在しますが、他の診療科よりも小さいです。この上限制度を考えられた故田野保雄理事長(当時)以下の先生方の慧眼に感服するとともに、自施設を犠牲にしても眼科全体を守ろうとされた使命感に感謝いたします。

医師適正数の問題は?

 医師適正数という考えがおかしいという意見が出されました。市場経済では需要と供給の一致点が商品の適正数とされており、過剰あるいは質が劣った商品は淘汰されます(見えざる神の手)。つまり、医師数の問題は、自由にして時間が経てば均衡数に達して、自然に適正数に落ち着くという考え方です。しかし、これは医療では困難です。医療のように、需要側と供給側に圧倒的な情報格差が存在する場合には、需要側が供給側の質を判断できないので、神の手は働かないのです。卑近な表現とすれば、質の良い医療を安く提供する病院よりも、お金儲けに徹した病院の方が生き残る確率が高いのです。それでは、適正数はどのように決めるべきでしょうか。まず、必要とする各分野から必要数を出してもらい、それを総計する「積み上げ方式」が良いという意見をいただきました。しかしこの場合、各分野は多めに数を出すので実態と懸け離れた大きな数になることが、経験的に分かっています。残念ですが、この方法は取れません。理論的には、疾病構造、人口動態、医療水準、経済状況など考案して出された必要医療量と、医師の労働量によって適正数を算出する方法が最も科学的です。今回示されたシーリングの基礎データは、厚生労働省がこの方法で算出しました。ただし、労働量、必要量は因子の重要性により大きく変動するので、この方法は完全ではありません。実際上は、医師過剰地域の新専攻医数を直ちにゼロにするような方法は取れないので、過去の採用数をもとに、少しずつ変化させるという方法を取っています。これが現行の方法です。

入口規制か出口規制か?

 専門医認定試験を難しくして数を調整すればよいので、入局者は多くしてもよいという意見も多くいただきました。これは出口規制と言われる方法です。現在、歯科医師が過剰になっているため、国家試験を厳しくしていますが、これこそが出口規制です。ただし、国家試験に合格しない卒業生数が年々増加して、新たな問題を起こしています。眼科専門医制度の場合では、専門医認定試験のところで制限をすると、専門医を取れない眼科医が増加します。専門医資格のない眼科医でも同じ労働が可能であることが周知され、彼らの数が一定水準を超えた段階で専門医制度が崩壊する可能性があります。成書でも、医師ライセンスには出口規制はなじまないと書かれています。ですから、現在は新専攻医数で調整しようとしています。これが入口規制です。

350人問題とは?

 新専門医制度では、新規専攻医が350人を超えた段階で、その診療科は各県に2つ以上の研修プログラムを作ることが義務付けられています。昨年の採用数は334人ですが、これが5%増えれば、350人を超えてしまいます。地方には、一つのプログラムを作ることで精一杯の県があるので、すべての県に2つ以上作ることは事実上不可能です。「新専門医制度など守らなくてもよい。どんどん募集すべし。」という威勢の良い声も聞きます。眼科に入っても専門医機構認定の専門医になれなければ、翌年からの専攻医応募結果がどのようになるかを考えると実行は困難でしょう。

人口減少と医師過剰の問題は?

 各基幹施設は、医療機関に多くの医師を派遣しています。毎年一定数の退職者が出るので、現状維持ができるだけの採用数が必要だという声は理解できます。しかし、日本は急速な人口減少期を迎えつつあり、必要医師数は減ります。病院の統廃合問題が始まりましたが、これが進むと必要医師数はさらに減少します。医師過剰問題は、あらゆる診療科で早晩表面化するとされています。この問題に対して、「医師過剰問題を話題にすると、眼科医が余っているという噂が広まり、応募数が減るので話題にすべきではない」という意見をいただきました。しかし、この事実は隠しても将来の問題が深刻化するだけです。現在の新専攻医は10年、20年後の日本の医療の中心になる世代であり、そのときの医療状況を考えた数の決定が求められます。日本に多くのライセンス業がありますが、過剰に陥った場合、減らす方法がありません。弁護士、歯科医師、柔道整体師などは、過剰になっているにもかかわらず、実効性のある削減法がないために、悲惨なことになっています。イタリアでは20年前には医学部卒業生で5年以内に職を得られるのは15%という統計が出ましたが、新卒をゼロにしても医師数はほとんど減少しないので未だに医師過剰です。結果として、優秀な若者は医学部に向かいません。日本の制度を理解した人が、現在のライセンス制度を「アクセルだけでブレーキがない車」に例えましたが、言い得て妙です。眼科医が過剰になった場合を考えると、募集医師数は減らすべきでしょう。

 一方、そのことだけを考えて募集数を決定すると、目の前の医師不足問題は解消できません。現時点では、募集数を増やすべきか減らすべきかのコンセンサスは得られてない状況です。そこで日本眼科学会は、シンクタンクに依頼して眼科医適正数の算出を行っています。その数が出るまでは、専攻医募集定員総数は昨年と同じにすることが常務理事会で決定されました。それは今まで述べてきたような理由からです。

真に優秀な人材を適正数だけ採用することは?

 米国では、眼科専門医になるために採用されるのは、一握りの優秀なレジデントです。'90年代の米国眼科界で、様々な問題が起きましたが、その頃の指導者に尋ねたところ、「色々問題はあるが、これだけ優秀な若者が集まっているので、米国の眼科医療は安泰である」と言われました。現在、黄金期に入りつつある米国の眼科界をみると、その見方は正しかったことが分かります。どの業種でも、その浮沈を握るのは、優秀な人材が集まるか否かです。逆にそうでない人が集まると、優秀な人材は敬遠するようになり、その業界は一気に廃れます。かつてのように、多くの人を採用してその中に一定の割合で存在する優秀な人材を確保するやり方は、人口減少の進む日本では不可能です。定員に満たないからといって、能力や適性に欠ける人を採用することは控えてください。真に優秀な人材だけを、適正数だけ確保することは、今まで以上に重要になっているのです。

公益財団法人 日本眼科学会
常務理事 坂本 泰二

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