2021/02/10

日眼会誌とJJOの現状について

 公益財団法人日本眼科学会の公益事業2は「日本眼科学会雑誌(日眼会誌)」「Japanese Journal of Ophthalmology(JJO)」および眼科学に関する学術書の刊行に関する事業です。編集理事として近年の両誌の変化と動向をまとめました。両誌ともに編集委員や評議員の先生方は色々な変化をご存知と思いますが、特に若い先生方には現状をお伝えする場が少ないと思いまして、この場を借りて説明させていただきます。また改めて編集理事として、本会の公益事業にご貢献いただいております先生方ならびに事務局の皆様に御礼申し上げます。

日眼会誌とJJO
 両誌は日本眼科学会の機関誌で、学会主要公益3事業の一つであります。ですから、会員であれば是非とも生涯一度は論文を掲載していただきたいものです。私も初めて日眼会誌に受理されたときは大変嬉しかったことを思い出します。ご存知のように日本眼科学会の評議員の立候補資格に、機関誌である両誌の筆頭著者原著論文が必要であると規定されています。意外とこの規定の認識不足が時々露呈するのですが、いざとなるとなかなか筆頭著者として投稿する機会が少なくなりますので是非とも若いうちにご投稿ください。

日眼会誌の動向
 図1をご覧ください。投稿論文数と採用数のグラフです。一時落ち込んでいたのですが、2017年から投稿数が回復し、2020年は直近10年間で最高の投稿数になりました。会員の皆様の関心度の向上のおかげだと思っております。採択率は約7割です。

 投稿数が低下していたときに、編集委員会では会員の皆様に関心を持っていただくために、さまざまな変更をいたしました。まず、お気づきと思いますが、2018年から表紙のデザインを旧デザインに戻しています(図2)。シックで格式がある旧デザインについては、1年後の会員アンケートで好評でしたので継続中です。さらに、掲載論文の中から目につく図を表紙に掲載させていただくことにしました。また、裏表紙に目次がありますが、筆頭著者の名前だけでなく所属もつけました。自分の出身と同じ大学や医局の著者が一目で分かるのでより関心を引くと好評です。

 また、当誌は以前、米国立医学図書館が提供する医薬関連文献の索引・抄録二次資料データベースに採用されていましたが、採用誌が増加したためか、改めて採用更新審査が2018年に実施された結果、残念ながら不採用となりましたので、それ以降の発行論文はPubMedで検索することはできません。記載言語が日本語であることが大きな理由と考えられます。投稿については、症例報告も採用可能です。外国誌要覧については最新インパクトファクターが3以上の外国誌に掲載された日本人が筆頭かcorresponding authorの論文の要旨を紹介するものです。査読はありますが自薦他薦を問わずご投稿可能ですし、会員の主要論文要旨が日本語で閲覧可能ですのでご利用ください。なお、会員はオンラインジャーナルでの閲覧も可能であるため、2019年末から昨年にかけて紙媒体送付の要・不要について問い合わせし、新たに約2,600名の会員から不要とのご連絡をいただきました。その結果、印刷・発送費を合わせて年間約1,000万円を削減することができました。また、地方単位で開催される集談会や勉強会については、その地域のネットワークで案内が行き渡るため、日眼会誌への告知の掲載はプログラムなどの詳細は省き概要のみに簡略化することで、雑誌媒体の厚みを削減しました。印刷および重量加算郵便送付にかかる費用は、日眼会計における比重が比較的高いため、紙媒体不要の際は事務局にご連絡いただきますようお願い申し上げます。

JJOの動向
 図3をご覧ください。投稿論文数と採用数のグラフです。2011年以降安定しており、2020年の投稿数と採用数は2014年以来の高水準になる見込みです。JJOの投稿論文の約7割が海外からですが、澤 充編集長の丁寧な編集運営と多くの査読委員の先生方のおかげで質の高い論文を掲載することができています。採択率は例年約2割ですが、日本からの投稿論文は約5割が採択されていますので、決してハードルが高い雑誌ではありません。先にお伝えしましたが、会員として、公益事業への貢献として、JJOにも筆頭著者論文を是非一報は掲載していただきますようお願いいたします。

 懸案のJJOのインパクトファクターの推移をグラフで示します(図4)。インパクトファクターは2013年度以降ほぼ横ばいですが、目標は2点以上であり、そうなるとより良い循環になり、さらに向上するものと信じています。眼科関連雑誌内での順位は、雑誌数が増加していることもあり一時順位を下げましたが、踏みとどまっています。AmericanやBritishといった歴史ある雑誌は別にしても、地域や国名がついている雑誌はどうしても投稿に偏りがありますので、注目度も低くなりがちですが、十分健闘していると考えます。もちろん編集委員会でも、評議員会やエディター全体会議でお伝えしているとおり、JJOをもっと引用していただけるように、Forefront reviewという新しいコーナーを設けて、最新のトピックについて紹介するなど、努力を続けています。2018年に掲載したForefront reviewの平均被引用数は8.5回であったというデータも出ています。各専門分野のエキスパートの先生方に執筆をいただいておりますので、論文投稿の際は是非とも参考にしてください。

 編集会議では、毎月査読者の質も担保する編集作業も含め、さまざまな議論を行って採否を決定しています。2019年からは、論文の査読評価項目として、(1)Novelty、(2)Methodology、(3)General interest、(4)Suitability for JJOの4つを新たに設けて、査読における公平性に努めています。一方で、2020年からは査読者の数を3名から2名に減らしたうえで、2度目以降の改変や小改変の論文ではセクションエディターの判断で決定する方法に変更することで、投稿から受理までの期間の短縮化を図っています。セクションエディターには若手も積極的に登用し、投稿の多い分野を中心に強化しています。セクションエディターや査読者の先生方のご負担を軽減できるようにと、JJOの論文投稿・査読システムであるEditorial Managerの改良も次々に行ってきました。少しでも会員の皆様に身近な英文雑誌として投稿していただけますよう、引き続き尽力していきます。

 以上、両誌について会員の皆様、末永くいつでも手にとってあるいは画面上でご一読になれますよう、ご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

公益財団法人 日本眼科学会
常務理事 相原  一