厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業希少難治性角膜疾患の疫学調査研究班
前眼部難病の診療ガイドライン作成および普及・啓発の研究班
疾患概念
膠様滴状角膜ジストロフィ(gelatinous drop-like corneal dystrophy:GDLD)は、角膜上皮下にアミロイドが沈着し、眼痛などの不快感とともに両眼性に著明な視力低下を来す疾患である。常染色体潜性遺伝を示す希少疾患であり、日本での発症頻度は比較的高いとされているが、欧米ではまれである。日本における有病率は、1991年に行われた全国調査から33,000人に1人と推定されたが、常染色体潜性遺伝形式であることや近親婚の減少などにより、現在ではさらに低下しているものと推測される。
GDLDは、tumor associated calcium transducer 2(TACSTD2)遺伝子に機能喪失型の変異が生じることで、角膜上皮細胞のタイトジャンクションに形成不全が生じ、角膜上皮バリア機能が低下して涙液中のラクトフェリン蛋白質が角膜内に侵入しアミロイドを形成することで発症すると考えられている。基本的に生涯にわたってアミロイドの沈着が進む進行性の疾患であり、10~20代で発症することが多く、羞明や流涙、異物感などの臨床症状を呈す。角膜混濁のタイプにより、① typical mulberry type、②band-keratopathy type、③ kumquat-like type、④ stromal opacity typeの4つのタイプに分類され、これらは細隙灯顕微鏡を用いた前眼部の観察によって分類が可能である。典型例では、加齢とともにアミロイドの沈着量や沈着範囲が増していき、灰白色から黄色の沈着となり、視力に障害が起こる。通常、成人期以降には瞼裂部を主体にこの沈着が角膜の大部分を覆い、周辺部からの血管侵入、著明な視力低下および眼痛を来し、さらに整容的な問題も引き起こすことで患者の生活の質(QOL)を大きく低下させる。非典型例では他の角膜アミロイドーシスや帯状角膜変性などによく似た臨床像を示すことがあり、この場合は遺伝子診断が有用であることが多い。GDLDの遺伝子診断のための遺伝学的検査としてTACSTD2遺伝子解析を、令和2年度から保険収載されているD006-20角膜ジストロフィー遺伝子検査として実施することが可能である。
GDLDの治療には、混濁の範囲に応じてエキシマレーザーによる治療的角膜切除術(phototherapeutic keratectomy:PTK)、角膜移植術(表層、深部層状、全層)などが行われるが、遺伝性疾患であるため再発率が非常に高く、若年時から一生にわたる経過観察が必要な予後不良な疾患の一つである。また複数回に及ぶ角膜移植手術により、角膜移植の合併症や緑内障によって失明に至る場合も多い。詳しいメカニズムは分かっていないが、ソフトコンタクトレンズ(SCL)を装用することでアミロイド沈着による灰白色から黄色の膠様隆起病変の再発を抑制し、手術間隔の延長を得られることが知られており、治療用SCLの装用が慣例的に行われてきた。
GDLDは希少疾患であることから個々の施設では臨床経験を持つ医師は少なく、標準的な診断法や治療法が確立されていないという課題があった。そこで著者らは厚生労働省難治性疾患政策研究事業「希少難治性角膜疾患の疫学調査研究班」において、GDLDの診断基準および重症度分類を作成した。またGDLDは2019年に指定難病「膠様滴状角膜ジストロフィー」に認定され、医療費助成の対象となった。GDLDの診断基準では、検査所見に遺伝学的検査を組み合わせることで、判別の難しい非典型例についても診断できるようになった。重症度分類については、日常生活機能に最も影響する良好なほうの眼の矯正視力でⅠ~Ⅳ度に分類した。診断基準によりdefiniteと診断されると指定難病の対象となり、重症度分類でⅢ度以上と診断されると医療費助成の対象となる。
(日眼会誌 130 : 536-539, 2026)