外科学と内科学

眼球は小さな組織ですが、たくさんの病気があります。そして、その治療法には外科的要素と内科的要素が含まれます。「白内障手術」ばかりが注目されがちですが、眼科の中では様々な分野の一つといえるでしょう。例えば、メラノサイトを標的とする自己免疫疾患である原田病は眼に病変がでることがあります。かすみやゆがみを伴った視力障害で発症します。光干渉断層計(OCT)で黄斑部に網膜剥離や浮腫を認めますが、ステロイドの点滴と内服できれいに治癒します(図1)
そして、再発を来さないように、患者さんに合わせてステロイドや免疫抑制薬を用いるわけですですが、これには経験と知識が必要です。これらの治療は内科的要素が強いと言えるでしょう。


図1 治療前


図1 治療後

一方、ボクサーなどが試合で網膜剥離になった、などという記事をみたことはないでしょうか。ものを見る膜が剥がれるわけですから、放置してると失明していまいます。これには、手術治療が不可欠です。硝子体手術と術中のレーザー治療により網膜が復位し、視力が保たれます(図2)


図2 治療前


図2 治療後

また、硝子体内注射という眼科独特の治療法もあります(図3)
このように、眼科では、外科的要素と内科的要素がありますので、手術が得意な人、手術より保存的治療が得意な人、いろいろな人がいて、それぞれに活躍する場があります。手先が器用かどうかなんて関係ありません。トレーニングを積めばできるようになります。興味のある専門分野で専門性を高め勝負すればよいわけです。


図3 治療前


図3 治療後

図3解説

重篤な視力障害を来す加齢黄斑変性は、高齢化に伴い増加傾向にあります。ものを見る大切な黄斑の下の脈絡膜から新生血管が生えてきて出血したり、滲出液が漏れたりして「みたいところ」すなわち中心部が見えにくくなる病気です。この10年で治療法は大きく進歩しました。抗VEGF(血管内皮増殖因子)薬硝子体内注射、という有効な治療法が開発され、視力が保たれるようになりました。治療効果を上げるために光線力学的療法(PDT)というレーザー治療を組み合わせることもあります。