未熟児からお年寄りまで

あらゆる年代の患者さんを診る

眼は加齢に伴って発症する疾患が多いので、人生100年時代の超高齢社会ではますます重要な診療科となります。図に平成29年の年齢別眼科外来患者数を示します。年代別に比較的頻度の多い眼疾患をみてみましょう。


平成29年の年齢別推計外来患者数:眼および付属器の疾患(単位:千人)
政府統計の総合窓口e-Stat 統計で見る日本(https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003302521)より

新生児期・乳児期・幼児期

先天異常や弱視の子どもの視機能を守ることはその人の一生の問題であるため、小児眼科は重要です。周産期医療の発達に伴って未熟児網膜症の管理や治療の重要性も高まっています。斜視や強い遠視なども早期からの視能訓練によって発達を促すことができます。

学童期

学童期には外傷や近視が大きな問題になっています。近年、近視治療に世界的な関心が高まっており、特に近視の割合が多い日本人にとって大きな需要のある分野です。デジタルネイティブの世代が生まれ、スマートフォンやタブレットによる眼への影響もこれから解明すべき課題です。

青年期成人期

VDT作業の増加に伴ってドライアイが増加しています。またコンタクトレンズによる感染症で働き続けることができなくなったりします。

壮年期

日本の失明原因の第1位である緑内障は40歳以上の5%と言われ、歳とともに頻度が増していきます。急性緑内障発作は強い痛みを伴うので救急外来で受診することもありますが、迅速な対応で助けることができます。働き盛りの年代で悪性腫瘍を患い、薬物治療のおかげで社会で活躍されている方も増えていますが、実は眼への影響がある薬物もあるので眼科による監視がきわめて重要です。

老年期

高齢に伴い白内障や加齢黄斑変性症が高頻度で生じます。物が歪んでみえたり、視力低下や視野狭窄など、快適な生活がおびやかされる事態が起きます。しかしながら手術や薬物の発達により質の高い治療が次々に開発されています。これらを駆使して眼科医は視覚における健康寿命を延ばすことができるのです。高齢化社会に益々重要な役割を眼科医は果たすことになります。

すべての年代を通じて

糖尿病などの代謝疾患、膠原病、血液疾患、神経疾患等も、眼に異常を生じ、生活の質を著しく損なうことがあります。他の診療科と連携して患者さんの生活全体を考えながら眼の治療にあたります。

  • 流行性角結膜炎もある時期ある地域で急速に広がります。眼科医による迅速な対応が重要です。
  • 花粉症やアレルギー性結膜炎は、経験のある人はその辛さがわかると思います。コンタクトレンズ使用やドライアイが加わるとさらに大変です。そういった患者さんが多く来院されます。
  • 悪性腫瘍や表向きにはわからない全身の重い疾患が最初に眼の症状で見つかることがあります(癌関連網膜症、仮面症候群などと呼ばれます)。
  • 非常災害時に移動式の眼科診療所で被災者の方の眼を守ることも大きな社会のニーズです。
  • これからの宇宙時代には、地球外での生活においても眼を守ることがとても重要です。そんな研究も始まっています。
  • 遺伝性の網膜視神経疾患に対する治療がこれからの数十年で一般化すると予想されます。皆さんはその担い手として活躍が期待されます。

あらゆる年代でさまざまな眼疾患があり、それを治療する大切な役割を担っているのが眼科医であることをイメージしていただけましたでしょうか。

永く充実したドクターライフを送ろう

実はこの項目にはもう一つの意味があります。未熟児からではありませんが、眼科医は一人前になってから引退するまで、時間の使い方を工夫することで、永く(お年寄りまで)充実したドクターライフを送ることが可能です。専門性が高い、広い選択肢がある、必ずしも体力的なハードルが高くない、チーム医療ですが一人でできることもたくさんある、といった、ライフイベントやキャリアパスを考慮した人生設計の際に融通の利く要素がたくさんあります。
専門医取得とその維持のための修業はハードですが、研修教育制度がとても充実していますし眼のプロフェッショナルというお墨付きを取得したあかつきには、もうあなたは一人前です。研究に打ち込む、手術を極める、家庭や地域の仕事をしながら診療を続けるなども可能ですし、中断しても努力次第で第一線に十分復帰できます。ひ孫のケアをしながら手術を続けることだってできますし、30年以上患者さんと寄り添っていくことも可能です。

「未熟児からお年寄りまで」眼科医はあらゆる年代に必要とされ、またご自身が「お年寄りになってからも」眼科医は充実した診療ができることをご理解いただけましたら大変嬉しく思います。