私たちは日常生活の多くの情報を目から得ています。視覚から得られる情報量は8割以上と言われています。しかし、この「見える」という能力は、元から誰にでも備わっている能力ではありません。
両目の視線が揃って、網膜にしっかりピントがあい、その情報が視覚中枢に正しく到達することで育ってくるのです。

しかも、その感受性期は1歳前後から3歳くらいまでが高く、人での臨界期は7~8歳と言われています。すなわち、幼い子供の高度な遠視(図1)や眼位異常(図2)を放置していると視力や立体感が獲得できないことになります。すべての子供たちが将来、「目」で困らないように視覚の発達を見守るのも眼科医の重要な仕事です。


図1 幼い子供の高度な遠視


図2 眼位異常

一方、日本は世界に先駆けて高齢化が進んでいる超高齢社会です。奈良県立医科大学が行った大規模調査では、視力の良い人は悪い人と比較して認知機能が高く保たれており、視力の悪い人は良い人より認知症の発症リスクが高いと報告されました。臨床の現場では、白内障術後、女性の患者さんが、急に別人のように、お化粧をしてきれいになって外来受診され驚かされることがあります。「見える」ということは、鮮明な像が網膜から視神経を介し視覚中枢に到達していることであり、サーカディアンリズムを保ち、生きる意識に影響を与え、散歩をして景色を見て花を見るなど心に栄養を与えることができ、活動性が大きく改善されるものと考えられます。このように目を守る眼科は生涯を通して必要不可欠な重要な分野なのです。