先輩眼科医からのメッセージ

先輩眼科医からのメッセージ

眼科医の魅力とは

全国の専門医を目指している先輩のインタビューを掲載しています。各先輩のインタビューをご参考ください。

宮田眼科病院(神戸大学より出向)横川知弘先生

 医学生ならびに初期研修医の皆様、はじめまして。私は眼科専攻医1年目の横川知弘と申します。この場を借りて、駆け出し眼科医として感じる眼科の魅力をお伝えしたいと思います。
 駆け出し眼科医として感じていることは、眼科の世界は想像以上に奥が深い世界であるということです。眼を構成するそれぞれの部位に疾患に多くの研究が現在も進んでおり、それらを理解するのは大変な作業です。
一方で、眼は症状が現れやすく、診断がつきやすい場面が多く、早期に治療介入しやすいとも言われています。私自身もまだ1年目ですが、論文や勉強会で学んだことを外来で活かすことができ、患者様から「いい感じです」とのお言葉をいただいたときは本当にうれしいですし、これからも頑張っていこうと思える瞬間です。また、自分自身で行う処置、手術も多く、自分が治療の最前線に立っているのだと実感できる場面が多いことも駆け出し眼科医から見た眼科の良さでもあると思います。
 ぜひともこのホームページを見ている皆さんも、この奥が深い眼科の世界に飛び込んでもらいたいと思います。

慶應義塾大学医学部眼科学教室 加藤 諒先生

眼科の一番の魅力は、やはり患者さんの視力を守れることです。「裸眼で日常を過ごしたい」そう思っていた強度近視の私は、今年、手術でICL(眼内コンタクトレンズ)を入れていただきました。メガネやコンタクトレンズの煩わしさから解放され、クリアな視界を手に入れました。このとき、患者としての歓びとともに、このような仕事につけてよかったなという眼科医としての実感も覚えました。このような眼内コンタクトレンズや白内障手術はイメージしやすいですが、眼科の専門性はかなり広く、角膜、屈折、網膜、緑内障、オルビタ(眼窩疾患のことです)などのサブスペシャリティーがあります。そのなかで、私達は手術もすれば視神経炎に対してステロイドパルスをすることもあります。必ずあなたの興味の湧く分野が見つかるはずです。この領域は決して飽きるがなく、可能性は無限大に広がっています。さあ、一緒にクオリティオブビジョンを守っていきましょう。


診察風景


自身の眼内レンズ挿入術術前の様子

亀田総合病院 宮坂洋輔先生

眼科は、医師の専門科としては一般的にマイナー外科と称される分類に入り、内科や小児科・産婦人科などの科と比較して、6年間の学生期間や研修で触れられる部分はごく限られています。ですが、眼科医としてスタートした初日から細隙灯顕微鏡、倒像鏡、眼科手術用顕微鏡、眼科専用カルテなど、医学部入学から卒業までほぼ一切触れてこずともよかったものと急に対峙することになります。いきなりできようはずもなく、はじめは少し気が滅入ってしまうかもしれませんが、積極的に向き合っていくことが大事だと思います。外来診察や病棟診察に陪席したら可能な限り一緒に診察させてもらう、手術があったら助手に付く。それをひたすら繰り返すことで、少しずつ必要な知識やスキルが身についてくるはずです。学生時代に触れてこなかったことができるようになることは、他科の医師ができないことが可能になるのとほぼ同意語だと思います。唯一無二の診療科医、目指して一緒に頑張っていきましょう。

北海道大学大学院医学研究院眼科学教室 水門由佳先生

私は、大学病院および関連病院で、眼科一般診療を学んだ後に、現在は、大学病院の眼形成外来を担当し、主に眼瞼・眼窩・涙道疾患の診療をしています。また、眼部の腫瘍に興味を持ち、大学院に入り、眼部の腫瘍に関連したテーマで研究を始めました。眼科は眼しか診ないので、途中で飽きてしまうのではないか、やりがいを持って働けるのか、自分の将来を狭めてしまうのではないかと心配されるかもしれませんが、全くそうではありません。眼とその周囲は機能的・整容的にとても重要です。病気をきれいに治すことができたときには、患者さんから感謝され、大変やりがいがあります。また、眼科の中でも、眼形成、角膜、ぶどう膜炎、網膜、神経眼科・・・と専門分野があり、そのそれぞれで、機器や技術、薬剤の進歩があるため、日々の研鑽が必要です。研究においても、まだわかっていないことが沢山あるため、テーマが尽きることはありません。眼科の中には、広くて深い世界が広がっていて、あなたが興味を持って、活躍できる場所が必ずあると思います!


硝子体手術(heads up surgery)の豚眼実習の風景。3Dメガネをつけて、ディスプレイを見ながら、手術を行う


毎年恒例、医局行事のスキー旅行にて

東北大学医学部眼科学教室、
東京都医学総合研究所視覚病態プロジェクト 清田直樹先生

眼科は1年目から手術を執刀できる数少ない科であり、私の場合は、眼科4年目までに数百件以上の手術を執刀する機会に恵まれました(写真1)。とはいえ、現代医学では治療不能な眼疾患は多く、私の場合は緑内障の病態解明のため、「神経保護・再生」をテーマに臨床・基礎研究に邁進しております(写真2)。眼は光学系、神経系など様々な側面を持つため、専門が違うと別世界のように感じられて大変魅力的です。また、眼科は夜間の呼び出し等は少ないですので、趣味や家庭に時間を使ったり、仲間と飲みに行って楽しんだりすることもできます(写真3)。これほど魅力的な科ですが、近年ジェネラリストを育てようという風潮があるためか、眼科を選択する医師は減っているようです。対して、高齢化社会のため眼疾患に苦しむ患者は増える一方で、スペシャリストとして眼科医の需要は高まるばかりです。このように外科手術から基礎研究まで幅広く経験できてプライベートも充実し、需要が高まっている眼科を、是非学生や研修医の皆さんには選択肢に入れてもらいたいと思います。


白内障手術を執刀している様子(写真1)


基礎研究では、動物実験を行います。手術で慣れていたのでスムーズにマウスの実験もできます!(写真2)


大学のメンバーで食事会。コロナ禍以前はよく飲みに行きました!(写真3)

産業医科大学眼科学教室 浅野真美加先生

眼科は眼という全身の中でも特殊な臓器を専門としますが、診断から加療に至るまでには内科的・外科的側面からのアプローチが必要となってきます。特に外科的加療の面では、眼科医にしかできない、専門的で非常に繊細な手術を多数行います。このように、眼科は患者さんの訴えに耳を傾け、それに対して診断から治療まで一貫して診療に携われる点が魅力だと思います。ぜひ、小宇宙ともいうべき眼科の綺麗で奥深い世界で、未来の眼科診療に携わる医師が増えることを願っております。

東京医科大学眼科学分野、
Massachusetts Eye and Ear 中川 迅先生

私は眼科医として11年間経験を積んだ後、現在はボストン、マサチューセッツ州ハーバード系列の研究所で、マウス角膜移植モデルを用いた免疫関連の研究に勤しんでいます。現在、2年ほどが経過しました。日本では医師免許取得後、自由に科を選択できる制度ですが、米国では成績上位者の一握りの層しか眼科医になることができません。なりたくてもなれない人が沢山います。つまり「日本では眼科医になることが容易に選択できる圧倒的お得感」をここへ来て痛感しました。また我々眼科医は、顕微鏡を用いた手術が日常となりますが、言わばこれは特殊技能を有した手術と言えると思います。現在はなくしたら絶対見つけられない細すぎる糸11-0ナイロン、でマウスの角膜縫合計8針を10分以内で行っています。ラボではゴッドハンドと呼ばれています。伝統的に、代々ここに来る日本人にしかこの手術はできない、と崇拝されています。私もアメリカへ来て知ったことですが、日本人は世界的にも圧倒的に手先が器用です。同じドクターでも、ほかでは真似できない特殊技能を皆さんも売りにしてみてはどうでしょうか?以上、眼科入門へのお奨めとなります。

新潟大学医学部眼科 長谷川友加里先生

私は初期研修で複数の内科を回るうちに、内科への入局も考え始めていました。ただ、もともと眼科にも興味があったため後悔のないようにと研修し始めたところ、すぐに眼科の面白さに魅了されました。細隙灯や倒像鏡で見る眼の美しさや白内障手術で濁りが気持ちよく吸い取られる様子に感動しました。眼科カルテは暗号のようでしたが、早く解読できるようになりたいと夢中で勉強しました。また当時の指導医は二児の子育てをしながら一人医長を務める女医さんでした。日中は目まぐるしく外来や手術をバリバリこなし定時には帰宅する様がとても格好良く見えました。眼科は時間外業務が比較的少ないため母親になっても頑張れば責任のある仕事ができるというのは私にとって魅力的な未来像で、入局を決めるキッカケにもなりました。ただ眼科はオンオフこそ明確ですが一人前になるまでの修行はそれなりに大変で、だからこそ有意義で面白いです。ぜひ眼科研修をしてみてください。


白内障手術を豚眼で実習しているところ


発表デビューした日本緑内障学会


育児と仕事の両立頑張ります

大阪府・男性・30代

眼科はマイナー科に分類されてしまうかもしれません。しかし本当にそうでしょうか。診療科は大きく外科・内科に分けられます。心臓であれば心臓血管外科・循環器内科と同じ臓器であっても2つの診療科に分けられてしまいます。しかし眼科はどうでしょうか。眼球という臓器に対して診断から治療まで1つの科で完結する診療科です。他にも皮膚科、耳鼻咽喉科など挙げればきりがありませんが、他の診療科とオーバーラップしていることが多いです。眼球は眼科でしか治せないんだ!この意気込みこそが眼科の魅力です。外科系では比較的若いうちに執刀医になることもできますし、出血が少ないので血が苦手な方でも問題ないです。眼球は外胚葉、中胚葉、神経堤からなる臓器であるため、基礎研究も奥が深いです。医師としての将来像が定まっていなくても、入局後に自分の進路を定めることができる科は他にはないと思います。そういう自分も将来像が定まっていません。みなさんこれから一緒に眼科を楽しんでみませんか。