眼科の最先端「iPS細胞を使った視細胞移植」

神戸市立神戸アイセンター病院 栗本康夫

我が国はiPS細胞を使った再生医療で世界をリードしていますが、なかでも眼科はその先頭を走っています。中枢神経の再生は再生医療の本丸と言えますが、眼で見るための神経組織である網膜や視神経は中枢神経系に属しており、ひとたび神経細胞が死んでしまえば再生は不可能とされていました。しかし、遂に網膜視細胞の再生医療が世界に先駆けて我が国で始まりました。視細胞が徐々に脱落して遂には失明にいたる網膜色素変性というこれまで治療方法がなかった病気の患者さんの網膜にiPS 細胞から作った視細胞を移植することに成功したのです。この治療はまだ始まったばかりですが、今後、治療法が発展していけば、これまでは治療の術がなかった多くの病気が治るようになっていくことが期待されます。21世紀は再生医療の世紀と言われていますが、網膜や視神経の再生医療を担うのは皆さんの世代なのです。


ヒトiPS細胞から分化させた立体網膜組織


iPS細胞由来視細胞シートの移植手術風景