ゲノム試料・情報の収集と提供

日本眼科学会のゲノム試料・情報の収集と提供に関するポリシー

日本眼科学会 ゲノム研究委員会
中澤 徹、秋山 雅人、池田 康博、辻川 元一、西口 康二、三宅 正裕
  1. はじめに
  2. 日本眼科学会は、眼科領域のゲノム研究の推進を目的に、戦略企画会議第二委員会(西田幸二委員長)を中心に眼科ゲノム研究委員会(以下、ゲノム委員会)を設立しました。本委員会で、本邦のゲノム研究の支援を行う方法について議論を行った結果、眼科研究者で共有可能な対照群のデータセットを構築することとなりました。これまでは、各施設や共同研究グループがそれぞれ対照群を収集していましたが、効率的ではなく臨床情報も不揃いであるという問題点が存在しました。今回、日本眼科学会が試料や情報の収集を主導し管理を行うことで研究の推進が期待できます。本委員会が収集する検体やデータの取り扱いに関するポリシーについて説明します。

    検体とデータの収集
    共有可能なデータを作成するためには、試料や情報の提供が必要不可欠であり、ゲノム委員会が検体とデータ収集のマネージメントを行います。提供される検体とデータは、東北大学・京都大学・九州大学の3大学を中心に管理が行われる予定です。参加施設は、倫理審査後にゲノム委員会より試料や情報を提出する施設について連絡があります。

    • 検体やデータ提供への参加方法
    • 検体や情報を日本眼科学会に提供する施設は、倫理委員会で承認を受ける必要があります。本プロジェクトでは、多研究機関の参加を効率的に行うために、京都大学にて中央一括審査を行うこととしており、既に一部の施設では参加承認が得られています(研究課題名:『日本眼科学会が主導する多施設共同眼科疾患ゲノム解析研究』)。参加を希望する施設は、まずゲノム委員会(genome-request@po.nichigan.or.jp)へメールで連絡いただき、審査に必要な書類を準備していただきます(中央審査のスケジュール説明)。その後、京都大学で倫理審査が行われます。倫理審査の追加申請の時期については、施設の締め切りを考慮し、ゲノム委員会の判断で調整します。

    • 新規取得検体
    • 中央審査で承認された研究課題では、共同研究用の説明文書と同意書が用意されておりますので、それらを用いて同意を取得していただきます。本計画では、白内障手術を受ける患者を主な対象とします。理由は、眼軸長や角膜内皮細胞検査などの情報を揃えることで、対照群として求められる条件に柔軟に対応できることが期待されるためです。また、対照群として利用する場合には、白内障以外の眼疾患がないことが理想的ですが、対象者が大きく限定されることから、本事業では部位別の疾患情報を収集し対照群から除外可能な状況を作ることで対応をします(例:加齢黄斑変性の対照群として、臨床情報で網膜疾患がある者を除外する)。
      血液検体で保管をしていただき、一定数貯まりましたら年に2-3回程の頻度で拠点施設(東北大学・京都大学・九州大学)へ送付していただきます。他の研究に用いる等の理由でDNAが既に抽出されている場合には、DNAを拠点施設で受領します(条件については、④)。また、部位別の眼疾患や所見の有無や検査値等について、ゲノム委員会が用意した情報入力シートに情報を記入し提出していただきます。

      <入力項目> 情報入力シートに入力し提出をお願いしています
      • 基礎情報:年齢、性別
      • 眼科検査情報:球面度数、円柱度数、眼軸長、角膜厚、内皮細胞数、眼圧
      • 疾患の有無:前眼部疾患、外眼部疾患、神経眼科疾患、ぶどう膜炎、網膜疾患、糖尿病網膜症、緑内障、落屑症候群、糖尿病、高血圧
      <採血>
      • ヘパリン管採血:全血 5-20ml
      • 保管:冷凍保管を推奨
      • 検体の送付方法:クール便などの利用を推奨します。   
      • 送付先:東北大学、京都大学、九州大学のいずれかとなり、原則として地域によって振り分けが行われます。参加承認後にゲノム委員会から連絡が行われる予定です。

      <自施設の研究でも活用する場合の提供DNA量>
      自施設の研究で取得した試料を用いる場合、抽出されたDNAの一部を日本眼科学会に提供することが予想されます。この場合、genome DNA 5μgを提供していただく予定です。これは、アレイ解析に加えて次世代シークエンスにも対応可能な量を確保するためです。また、推奨するDNA濃度は50 ng/μlとしますが、濃縮等の対応が必要な際には別途ご相談ください。

    • 既存試料と情報
    • これまでに各機関が収集を行い保管している既存試料や情報も本事業に有効に活用いただけます。この場合、各施設のホームページ等でオプトアウト資料を公開する必要があります。オプトアウトの資料は中央審査で承認されたものがありますので、それをご活用いただけます。原則として、同意の再取得は必要ないと考えておりますが、各機関で必要と判断された場合には、ゲノム委員会へご相談ください。提供可能な試料と情報は、揃った時点で拠点施設(東北大学・京都大学・九州大学)へ送付していただきます。

  3. 遺伝型の測定
  4. 本計画では、DNAマイクロアレイによる遺伝型測定だけではなく、エクソームシークエンスや全ゲノムシークエンスなどの次世代シークエンスデータも取り扱うことが可能です。DNAマイクロアレイを用いた遺伝型の測定は、プラットフォームによる違いがあると対照として用いることが難しいことから、イルミナ社のInfinium Japanese Screening Arrayとジャポニカアレイ®NEOの2種類を用いたジェノタイピングを行う予定です。どちらかのプラットフォームによる測定を希望される際には、事前にご連絡をいただけたら考慮します。しかし予算の関係で、希望に沿えないこともあります。疾患群の遺伝型測定を行う際にはプラットフォームの違いにご留意ください。また、クラスタリングなどの作業は同一の施設で行うことが精度を保つ上で好ましいため、遺伝型の測定については、原則としてゲノム委員会から企業に委託を行います。次世代シークエンスについては、プラットフォームの統一は容易ではないと思われるため、利用する研究者と相談してシークエンスを行う予定です。
    遺伝型を測定する検体の優先度については、眼疾患の有無や年齢などの臨床情報、収集された地域(日本での偏りが少なくなるように)などを考慮してゲノム委員会が調整します。本事業では、公的な研究費を用いて遺伝型を測定しますが、予算の関係で、提供いただいた検体の全てについて遺伝型が測定されない可能性があります。また、自施設がゲノム委員会に提供した試料を自らの研究費で遺伝型測定を行う場合のみ、個別に遺伝型データの返却を行います。その他の場合は、試料提供機関に対して個別のデータの提供は行わず、データセットとして完成したものをご利用いただく方針です。令和5年度末までに、約2,000検体について遺伝型測定を行い共有することを目標としております。希望者がいる場合には、1,000検体で中間解析を予定し、いち早く活用していただけることも検討しております。

  5. データの提供
  6. 本事業では、原則として血液やDNA試料の配布は行わない予定です。収集した遺伝型情報は、一定数が収集された時点でデータセットとして品質確認を行った後に提供されます。データセット作成は、検体数に応じて何度かに分けて行う予定です。
    データの利用目的は、対照群としての利用に限定されます。利用を希望する研究者や研究機関は、ゲノム委員会に利用申請を行い承認された場合に送付されます。審査は、ゲノム委員会により毎月行われる予定です。原則として、二次利用は認めていません。

    <データ利用するための条件>     
    • 対照群としての利用であること
    • 主たる研究機関が本事業へ試料や情報の提供を行っていること
    • 研究費を取得している場合は、収集された検体の一部 (100検体程)の遺伝型測定を行うこと
    • ゲノム委員会へ研究内容の届け出を行い、承認されていること

    ※広く研究に活用していただくために、小規模な研究グループでの利用などについては、②, ③の条件を満たしていない場合でも、ゲノム委員会が承認すれば研究に利用できることとします。

  7. 研究費の応募
  8. 本邦のゲノム解析を推進する上では、競争的研究費の獲得も非常に重要であり、本事業で収集した対照群を用いる内容で応募書類を作成することも可能です。この場合、遺伝型測定に関わる費用などを調整する必要があることから、原則として応募書類をゲノム委員会に提出していただきます。また、必要に応じて遺伝型測定の費用について相談をさせていただく可能性があります。AMED等の大型公的費用に応募する際には、ゲノム委員会の委員を分担者としていただくように依頼することがあります。