ガイドライン・答申

2014/07/10

コンタクトレンズ診療ガイドライン(第2版)

巻頭言

 我が国において初めてコンタクトレンズが使用されてからすでに60年以上が経過した。1951年、水谷は円錐角膜の患者に対してハードコンタクトレンズを処方し、その臨床的有用性を証明したが、それ以来、コンタクトレンズ素材は飛躍的な進歩を遂げ、光学機能や装用形態の多様化の中で、個々のユーザーのライフスタイルに適したコンタクトレンズが選択できる時代が到来している。その優れた光学特性、利便性、そして美容的なメリットもあって、装用人口は増加の一途をたどり、現在では1,700万人に達するものと推定されている。
 ただ、すべてがポジティブな話ばかりではない。改良されたとはいっても、コンタクトレンズ自体は元来が異物であるため、その装用は眼表面、特に角膜組織にとって大きな負担であり、それ故に、適正な装用時間の遵守あるいは日々のレンズケアを怠ればさまざまなトラブルが生じることとなる。なかでも、角膜感染症は最も重篤な眼合併症の一つであり、先年のアカントアメーバ角膜炎のアウトブレイクはすべての眼科医の記憶に新しい事件であろう。
 2005年、日本コンタクトレンズ学会は、当時の金井 淳理事長を中心に第1版のコンタクトレンズ診療ガイドラインを発刊したが、これはちょうど薬事法改正により、コンタクトレンズがクラスIII、すなわち「不具合が生じた場合、人体へのリスクが比較的高い」という高度管理医療機器に指定された時期に合致する。これは人工腎臓透析器やAEDなどと同じ評価であり、これを契機にコンタクトレンズ販売は許可制となり、販売管理者には継続研修の受講が義務づけられた。コンタクトレンズ装用者の大半を占める若年層の視機能低下は社会にとって大きな損失であり、関係者、特に眼科医に課せられた責務には重いものがある。したがって、コンタクトレンズの安全な使用には、眼科医の診療に基づく処方が不可欠であるというのが我々の認識である。
 さて、第1版以後、シリコーンハイドロゲルレンズの普及、オルソケラトロジーレンズの認可、カラーコンタクトレンズ問題など、コンタクトレンズ診療を取り巻く環境は大きく変化している。そこで今回、現理事会のメンバーを中心に第1版の記述を見直し、第2版として改訂ガイドラインを刊行することとした。いうまでもなく、コンタクトレンズ診療は眼科専門医にとって必須のスキルである。本ガイドラインが、国民の眼の健康を守るうえにおいて、眼科医の知識整理と標準化に役立つことを心より願っている。

2014年1月
日本コンタクトレンズ学会
理事長 木下  茂
理事(学術担当) 大橋 裕一
村上  晶

日本コンタクトレンズ学会コンタクトレンズ診療ガイドライン編集委員会
委員長:木下  茂、大橋 裕一、村上  晶
委員:糸井 素純、稲葉 昌丸、植田 喜一、宇津見義一、梶田 雅義、金井  淳、小玉 裕司、澤   充、下村 嘉一、坪田 一男、濱野  孝、前田 直之、吉野 健一、渡邉  潔

日本コンタクトレンズ学会コンタクトレンズ診療ガイドラインの執筆者
糸井 素純、稲葉 昌丸、植田 喜一、宇津見義一、大橋 裕一、小川 旬子、梶田 雅義、金井  淳、木下  茂、小玉 裕司、崎元  暢、佐野 研二、澤   充、塩谷  浩、高村 悦子、濱野  孝、針谷 明美、福田 昌彦、前田 直之、水谷  聡、村上  晶、柳井 亮二、渡邉  潔

医療は本来医師の裁量に基づいて行われるものであり、医師は個々の症例に最も適した診断と治療を行うべきである。日本コンタクトレンズ学会は、本ガイドラインをもとに行われた医療行為により生じた法律上のいかなる問題に対して、その責任を負うものではない。