ガイドライン・答申

2014/10/31

眼皮膚白皮症診療ガイドライン

 眼皮膚白皮症(oculocutaneous albinism;OCA)の研究の歴史において、1989年、富田靖らのグループ(東北大学)が世界ではじめてチロシナーゼ遺伝子変異を同定し、新しいゲノム医学の幕開けのさきがけとなったことは、日本における皮膚科研究の金字塔であるといってよい。当時の眼皮膚白皮症の分類は、チロシナーゼ陰性型と陽性型の2つに分類されていた。その後、眼皮膚白皮症の遺伝子解析が進むにつれて、チロシナーゼ活性が「ある」「なし」では説明がつかず、かなり多くのタンパク質がかかわっていることがわかってきた。そのため、現在の眼皮膚白皮症の分類は複雑になっており、専門家でもない限りその詳細を把握している皮膚科医は少数である。一見して眼皮膚白皮症とわかる病態の裏には、さまざまな分子遺伝学的な病態生理が関与している。分子遺伝学・生物学の急速な進歩により、遺伝子診断による合併症の発症予測や将来的な遺伝子治療の可能性が期待され、さらにはiPS細胞やES細胞研究の世界的な取り組みが開始されたことにより、将来的に再生医学や臓器エンジニアリングの手法を用いた根本的な治療法の開発も予想され、疫学的な検討にくわえ、科学的な根拠に基づいた医療や基礎研究の成果を医師、患者、行政そして社会に提供することは我々皮膚科医がリーダーシップをとって行うべき重要な課題である。
 まだ、眼皮膚白皮症には確立された治療法はないものの、治療の試みがなされている。治療の方向性をここにまとめることにより、眼皮膚白皮症患者に勇気と希望をもっていただく手助けになることを希望する。そしてさらに、科学的な根拠に基づいた医療を提供することは眼皮膚白皮症患者の生命予後や社会的なQOLの改善のみならず、限られた医療経済の有効な活用、ひいては国家レベルでの医療費の削減に貢献しうると考える。
 今後、診断技術や治療法の進歩に伴い、必要に応じてしかるべき時期に改訂を行っていく必要があると思われる。

眼皮膚白皮症診療ガイドライン(656KB)

眼皮膚白皮症診療ガイドライン 補遺(167KB)

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