厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究班遺伝性網膜ジストロフィにおける遺伝学的検査のガイドライン作成ワーキンググループ
はじめに
遺伝性網膜ジストロフィ(inherited retinal dystrophy:IRD)は遺伝子異常に起因する家族性の網膜疾患の総称である。IRDの原因となる遺伝子を同定することは、適切な診断を行い遺伝カウンセリングを提供するだけでなく、遺伝子治療をはじめとする原因遺伝子に応じた治療を実施するために必須である。また、原因遺伝子の同定は疾患の予後予測だけでなく、的確な社会的援助や医療の質の向上に役立つことが期待される。そのためには眼科診療においてIRDに対する遺伝学的検査が、多くの患者に対し適正に行われることが重要である。一方、遺伝子解析技術の発展は目覚ましく、遺伝子診断方法も進化を続けている。このような背景のためにIRDにおける遺伝学的検査について具体的な対応を示すことが必要である。本ガイドラインは、遺伝学的検査によるIRD診療の充実とゲノム医療の発展に寄与することを目的とし、IRDの遺伝学的検査について、診療での手順と対応を示す。
(日眼会誌127:628-632,2023)