ガイドライン・答申

2024/10/08

小児の眼鏡処方に関する手引き


小児眼鏡処方手引き作成委員会

緒 言

 屈折矯正は眼科の基本である。なかでも小児における屈折矯正は、単に生活視力を向上させるという以上に重要な意義を持つ。
 第一に、小児の正常な視力発達のために屈折矯正は重要である。屈折異常が放置されることによって、視力の発達が妨げられることがある。第二に、視力は学習に大きく影響する。視力障害が学習の妨げや集中力の低下につながることは珍しくない。第三に、社会的・行動的な影響が考えられる。視力の問題は子供の社会的な相互作用やスポーツなどの身体活動にも影響を及ぼす可能性がある。第四に、早期に屈折異常を発見し対応することで、他の潜在的な眼科異常を発見することができる。
 一方で、小児の屈折検査・矯正は、成人に比べて難しく、さまざまな知識と経験が要求される。まず小児は、自分の視覚障害を正確に伝えられず、また症状がないことが少なくない。健診での発見や、周囲の大人による日常生活での気づきが重要である。
 検査・診察の可否は、小児の機嫌の良し悪しや、集中力に左右される。成人のようにいつでも同じ検査・測定を高い再現性で行うことはできない。器質的疾患を有する場合、斜視や弱視がある場合、さらには全身疾患や神経発達症(発達障害)が併存するような児では、特別な配慮が必要となる。
 屈折検査では必ず調節麻痺薬が使用され、また検影法が必要になる場面もある。待ち時間や検査に時間がかかり、児の集中力がなくなると、検査が続けられないこともある。
 小児の眼は成長し、屈折度数は変化する。その変化に応じて眼鏡を適宜再作製する必要がある。また、成長に合わせて眼鏡フレームも変えていく。なにより、小児はレンズを傷つけたりフレームを変形させたりすることが非常に多く、眼鏡の状態に周囲が気を配っていなくてはいけない。
 小児における眼鏡処方にはこのように多くの手間と労力がかかり、知識も必要とされるが、これまでにその理論と実践を解説したマニュアルは存在しなかった。今回、日本眼科学会と関連学会/協会は共同で、18歳までの小児を対象とした眼鏡処方の手引きを作成した。この時期の小児においては、初回の眼鏡作製はもちろん、再作製にあたっても眼科で検査を受けるべきである。本手引きが臨床の場で活用され、小児眼科診療の一助となることを願う。

 


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