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日本眼科学会雑誌第107巻1号に「ウイルス性結膜炎のガイドライン」として総論的情報をまとめたが、今回はウイルス性結膜炎で最も多いアデノウイルス結膜炎の院内感染に焦点を合わせて実践的なガイドラインをまとめた。 アデノウイルス結膜炎はアジアに頻発する結膜炎であり、その情報の多くが日本から世界に発信され、厚生労働省の世界に先駆けてスタートした感染症サーベイランス情報は世界でも高い評価を受けている。ウイルス性結膜炎の院内感染は一度でも起これば、医療機関と眼科医のレベルを問われかねない。我が国のウイルス性結膜炎のサーベイランス情報は、いまだ十分に活用されておらず、多くの施設で院内感染は少なからず起きている。アデノウイルスはよく知られた病原体であり、アデノウイルス結膜炎はありふれた疾患であるため軽視されがちであり、院内感染が発生して初めてことの重大さに気付いているのが現状である。特定のアデノウイルス血清型は眼科医を含めた医療関係者の接触感染で院内感染に拡大するので十分な監視が必要である。 ウイルス性結膜炎の院内感染を起こす背景はまだ完全に解明されていない現段階で、眼感染症を専門としている眼科医が現在の医学のレベルで考えられる対応を集約したのが、このガイドラインである。抗アデノウイルス薬が存在していない現在、その院内感染予防は優先課題である。現在の医学のレベルで明らかな情報を臨床現場に還元させるため、その研究成果を臨床応用することは、眼科専門医の義務でもある。この時期に日本眼科学会がこの企画を支援されたことは大変有意義なことである。 我々はウイルス性結膜炎のガイドラインを既に公表したが、依然アデノウイルス結膜炎の院内感染は発生しており、この種のガイドラインは必要である。今回は院内感染対策のリスクファクター、治療法、消毒法を中心に院内感染予防に還元できる対策をガイドラインとしてまとめた。今後ともウイルス性結膜炎の院内感染は起き続ける可能性が高いのでこの院内感染に関する対策のガイドラインを活用して、十分な知識の修得とその研鑽がなされることを心から期待する。
アデノウイルス結膜炎院内感染対策委員会 塩田 洋、大野 重昭、青木 功喜
■アデノウイルス結膜炎院内感染対策ガイドライン 執筆者 塩田 洋、大野 重昭、青木 功喜、安積 淳、石古 博昭、井上 幸次、薄井 紀夫、内尾 英一、金子 久俊、熊倉 重人、田川 義継、谷藤 泰寛、中川 尚、日隈陸太郎、山崎 修道、横井 則彦 (アデノウイルス結膜炎院内感染対策委員会)
アデノウイルス結膜炎院内感染対策ガイドライン
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