先天鼻涙管閉塞診療ガイドライン作成委員会
緒 言
本診療ガイドラインに関する我々の長期目標は、“先天鼻涙管閉塞”や“子供 なみだ目”とインターネットで検索すれば、本診療ガイドラインや日本涙道・涙液学会のホームページが1ページ目でヒットし、関連する方々の疑問を解決する病気のガイドブックとなること、および本疾患に関するエビデンスの偏りの見える化です。この目標のために我々は3つのことを行いました。
1)専門外の医療関係者にも読みやすいように、眼科の専門用語はなるべく少なくし、第2章 スコープでは図や写真を用いました。
2)診療ガイドラインの標準形式であるMedical Information Network Distribution Service(Minds)形式に準拠して作成しました。
3)ややまれですが重要な類縁疾患である先天涙囊瘤(先天涙囊ヘルニア)の診療もあわせて記載しました。
Minds形式準拠とは、本診療ガイドラインが信頼に足り、偏りがないあるいはきわめて少ないことを意味します。具体的には、不偏的に文献を収集して評価し、治療や検査に関しては、有効性だけではなく、それらに伴う合併症や費用、患者さんや保護者の負担なども総合的に考慮し、そのうえでも有意義であるかを複数の委員で公平に勘案しました。
本診療ガイドライン作成で良かったことは、現時点での本疾患の俯瞰を示せたことと、ほぼインターネット上だけでエビデンス収集からガイドライン草案作成まで行うことができたことです。委員の身体的負担や環境への負荷が軽減され、今後の多施設研究や診療ガイドライン作成の新しいスタイルになりうると考えられました。
残念であったことは、本疾患に関する無作為化比較試験が少なかったこと、膨大な引用文献のほとんどは国外からの文献であり日本の実情とは異なる点が生じたこと、および医療従事者の方であってもまだMinds形式の診療ガイドラインをご存じない方も多いことでした。
今後は、このような仮想空間上での作成スタイルがさらに発展することを希望しております。本診療ガイドラインが多くの患者さんと保護者の方、医師や関連する方々のお役に立ち、疑問を解決し、眼科を受診していただくきっかけとなることを切に願っております。
日本涙道・涙液学会
(日眼会誌126:991-1021,2022)