日本網膜硝子体学会新生血管型加齢黄斑変性診療ガイドライン作成ワーキンググループ
はじめに
加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)は我が国の視覚障害の主要原因を占める難治性疾患である。21世紀に入って光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)が急速に進歩したことによって、新生血管型AMDの診断や病型分類、治療効果の評価が容易となった。さらに、2004年に国内承認された光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT)、2008年以降国内でも使用可能となった抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)薬の硝子体内注射が新生血管型AMDの視力転帰を大きく改善させてきた。
診断・治療の指針となるガイドラインの策定は、標準治療の質を担保するために重要である。我が国では、2004年に「加齢黄斑変性症に対する光線力学的療法のガイドライン」、2005年に「ポリープ状脈絡膜血管症の診断基準」、2008年に「加齢黄斑変性の分類と診断基準」、2012年に「加齢黄斑変性の治療指針」、2015年に「萎縮型加齢黄斑変性の診断基準」が発表された。しかしその後、病態理解と治療効果・長期予後についての知見が深まってきており、ガイドラインの再考が必要な時期に来ていると考えられる。例えば、2013年に登場したパキコロイドという新しい概念が広く受け入れられつつあり、2020年には国際グループによるAMDに関する用語体系の見直しを目的とした論文も報告されている。
そこで、本ワーキンググループによる情報収集、協議を行ったうえで、「加齢黄斑変性の分類と診断基準」と「加齢黄斑変性の治療指針」を更新するものとして、新生血管型AMDの診断基準・治療指針に関する新たなガイドラインを作成した。本ガイドラインでは、用語体系と病期分類を見直し、パキコロイドに関する記載を追加し、治療指針については最新のエビデンスをもとに修正を行った。なお50歳未満でもAMDと診断すべきであると考えられる症例が散見されることから、年齢に関してはその記載を診断基準から削除している。新生血管型AMD診療における最近の考え方が広く理解されるよう、全体を通して平易な記載に努めた。