2024/07/10

日眼監事の業務について

 昨年度より日本眼科学会(以下、日眼)の監事を拝命しました門之園です。私の専門とする網膜硝子体学とは何らの関連性もなく(当たり前ですが)、本職に就いた当初は戸惑いばかりでしたが、1年を経た現在、このコーナーを利用して日眼の監事職の内容および私見を述べさせていただきたいと思います。本職に対する私の第一印象は、地味ながら大事な仕事という程度の認識でした。しかし、監事職を勉強し経験するにつれ、会計責任者としての重大な責務があることを実感しました。

 そもそも日眼という団体が、公益財団法人であることやその意義を理解している会員は果たしてどれほどいるのでしょうか。恥ずかしながら私も本職に就くまではほとんど理解していませんでした。日眼が公益財団法人であるためには、公益財団法人としての以下の3原則を守る必要があります。
 1)収支相償:公益目的事業において黒字になってはいけない。
 2)公益目的事業比率:公益目的事業費が支出全体の50%以上とならなければならない。
 3)遊休財産保有制限:1年分の公益目的事業費と同額を超える財産を保有してはならない。
 これを監視するのが監事の最も重要な役割になります。
 では、この公益財団法人というシステムにどのようなメリットがあるのでしょうか? そうです、以下の税制上の特典を受けることが可能になるわけです。
 1)公益目的事業には法人税等が課税されない。
 2)収益事業の資産を非収益事業に回した場合、一定限度で収益事業の損金に算入できる。
 3)寄付をした人に税の優遇がある(寄付を受けやすくなる)。
ですから、事業活動収支決算書には、税金の支出項目がないわけです。

 そこで、日眼の令和5年度の収支報告書を確認してみることにします。法人の1年間の収入合計は、約5億7千万円であり、その多くが会員からの会費、専門医登録料と総集会登録料収入であることが分かります。とても高額です。特筆すべきは、1千万円の寄付(非課税)もいただいており、法人としては安定した収入の得られる会計状況にあるようにみえます。日眼が、長い歴史のある成熟した団体であることの証と思います。

 では、支出はどうでしょうか。人件費を除けば、総集会費、総務費、専門医制度関連費が多くを占める事業活動支出合計額が5億6千万円ほどになっています。収入と支出が大きく乖離しておらず、赤字や公益目的事業での利益も生じていないため、会計上は適切な事業運営であることがうかがえると思います。一方で、約3億円近い繰越金が資産として計上されていますが、1年分の公益目的事業費を超えるものではありません。

 先ほど監事の主な仕事が、会計監査にあることをお話しましたが、もう一つ大切な役割があります。それは、理事の職務の監視です。日眼の定款25条にも、監事は理事の職務の執行を監視すると記載されています。すなわち、理事への広い意味での提言を行う責務があります。
 ここで私が感じていることを二つ述べたいと思います。
 一つには、日眼は比較的安定した収入があることや十分な資産を保持していることなどから、より長期的な将来を見据えた政策を取ることが可能で、それが重要であると考えています。すべての眼科医にとって課題となることに対して、あらたな施策を思い切って取り続けていただきたいと思います。二つめには、日眼が所有する資産(普通預金および定期預金)のより効率的な運用も昨今の日本の経済状況を踏まえ、考える時期に来ていると思います。

 監事の仕事を通して、日眼の活動の基本である財政の安定化や透明化に寄与できればと考えています。

公益財団法人日本眼科学会
監事 門之園一明