「理事会から」の誌面を埋めるべく、これまでも話題の選択に苦慮してきた思い出がありますが、今回をもって最後の担当となります。しかし、今日的な話題や昨今の重要な課題についてはすでに多くの理事によって語り尽くされており、相応しい時事ネタが思い浮かばないまま原稿の締め切り日が近づいてきてしまいました。
そこでまずは日本眼科学会(以下、日眼)の理事会について、その実態を改めてご紹介させていただきます。そもそも理事会は3月、および春の日本眼科学会総会(以下、日眼総会)と秋の日本臨床眼科学会(以下、臨眼)の前日にそれぞれ1回ずつ、すなわち年にわずか3回しか開催されませんので、一般の理事は最新の話題や喫緊の課題について触れる機会がありません。したがって「理事会から」というタイトルで今日的な話題を提供すること自体、無理があります。日眼におけるほとんどの重要事項は定期的に開催されている上部組織の会、すなわち常務理事会で決定されます。常務理事会は理事長以下、庶務、会計、編集、渉外、保険、記録、そして専門医を担当する理事から構成され、眼科に関係する様々な懸案事項の解決や事務的な作業のみならず、降って湧いたような突発的出来事の対応に追われることもあります。一昨年度、日本専門医機構から言われるままに様々な制度改革とシステムの再構築を強いられた専門医担当理事などは、その典型です。
さて、理事会の場において、庶務担当理事は何でも屋的な存在であり、日眼に関わる諸問題を掌握し、報告する責務があります。最近の話題としては再生医療や細胞遺伝子治療の問題点、オンライン診療の課題などがありました。会計理事は日眼の全事業に関わる会計全般を把握し、評議員会では非常に長い時間をかけて収支報告をしなければなりません。編集担当理事は日本眼科学会雑誌とJJOの編集作業とともに、学術誌としての両誌の内容を充実させていくための取り組み、渉外担当理事は国際眼科学会(WOC)やアジア太平洋眼科学会(APAO)などの国際学会の案内や招致の状況など、保険担当理事は定期的に行われる診療報酬改定に向けて日本眼科医会や各種サブスペシャリティ学会からの要望を踏まえた原案作りなど、記録担当理事は日眼のホームページの現況報告や定期的なリニューアル作業、そして専門医担当理事は眼科専門医試験の立案と実施、生涯教育事業のほか、前述したように目まぐるしく方針が変わる日本専門医機構からのお達しを理事会や会員に周知しなければならず、それぞれ実に多くの課題を抱えています。なお、理事会の場には日本眼科医会の会長にも出席していただき、学会と医会の連携が図られています。理事長を筆頭に常任理事は本業である眼科医としての仕事に加え、行政、財政、教育、学術、その他に関わる諸問題に対して膨大な時間を捧げていることを会員の皆様に是非とも知っておいていただきたいと思います。
日眼総会と臨眼の前日に開催される理事会終了後、引き続き行われる年に2回の評議員会では、各常務理事による上記の報告のほか、直近に開催が予定されている日眼総会と臨眼の開催準備の進捗状況、すでに終了した日眼総会、臨眼に対するプログラム評価委員会からの報告、日眼の理事と日本眼科医会の役員から構成されている戦略企画会議からの報告、さらに日本眼科啓発会議からの報告などもあります。
なお、いずれ会員の皆様にもお知らせが届くことと思いますが、これまで日眼会員による選挙で選出されてきた「評議員」が今後は「代議員」という肩書となり、数名で構成される「評議員」はあらたに名誉会員から選任されます。これは現在の「評議員」の役割が「代議員」になることで変わるということではなく、「評議員」は各種の委員会委員となって公益財団法人の事業活動に直接携わるのではなく、法人の運営が適正に行われているかを大所高所から監視するという本来の立場に変更するよう内閣府から指導を受けたことによります。
理事会の概要については、毎年、日本眼科学会雑誌の7月号の巻末に理事会議事録として事業報告書や決算報告書とともに掲載されていますが、恐らくこの巻頭の「理事会から」と同じくらい、あるいはもっと目を通される会員は少ないかもしれません。いずれにしても、このような執行部の滅私奉公によって日眼の様々な事業が粛々と行われていることをご承知おきいただければ幸いです。なお、理事会および評議員会に際して配布される膨大な資料は、驚くほど少ない人数で運営されている日眼事務局の方々によって綿密に用意されています。常務理事はその資料をもとにそれぞれ詳細な報告を行っているわけですが、両者の関係は国会答弁をする大臣と、原稿を用意する官僚の関係にも似ています。1万6千人を超える巨大な組織が取り組んでいる様々な事業は、少数精鋭の日眼事務局の方々に支えられ成り立っていることを、声を大にして付け加えさせていただきます。