2024/12/10

学会会計からの眺め

 令和5年4月より2年の任期にて、日本眼科学会の会計理事を担当しています。日本眼科学会の年間予算は約5億5千万であり、会員の会費、専門医の登録料および総集会会費が主な収入源となっています。これらはいずれも会員からの資金であるため、会計は透明であるとともに、その活動は会員に利するものでなければなりません。会計理事として学会の決算と予算を眺めると、決算からは具体的な活動実績が、予算からは学会のスタンスが見えてきます。

 まず大切なことは、日本眼科学会が公益財団法人であるため、費用全体の50%以上を公益目的事業に用いることが必須であることです。そのため具体的に、以下の公益目的事業を行っています。
 1:学術集会開催に関する事業
 2:学術書刊行に関する事業
 3:専門医認定、生涯教育、研修施設認定の事業

 1の学術集会とは、毎年春に開催する日本眼科学会総会です。日本眼科学会総会そのものも参加費を徴収して実施され、その年の学会長が運営にあたっていますが、参加費も含めた総会の収支が日本眼科学会の収支に反映されます。
 2の学術書刊行とは、日本眼科学会雑誌とJapanese Journal of Ophthalmologyの刊行です。刊行費の内訳は、印刷、製本、送料、英文校閲等ですが、送料の占める割合が多いことに気づかされます。将来の郵送料値上げを考慮すると、さらなるオンライン化が望まれます。
 3の専門医認定、生涯教育、研修施設認定の事業には、専門医認定および更新、生涯教育講座、通信教育教材、日本専門医機構関連等の費用が計上されます。

 令和5年度の決算によると、1の学術集会に約1億8千万円、2の学術書刊行に約1億2千万円、3の専門医制度の諸事業に約1億7千万円を要しました。費用全体に占める公益目的事業の割合は約83%であり、公益財団法人の条件をクリアしています。細かな項目としては、戦略企画会議で策定した各事業が行われ、臓器移植の推進(日本アイバンク協会への助成)、失明予防の推進、医学生・研修医への啓発のためのONLINE SESSION、アイフレイルなどの国民への啓発事業が行われました。令和6年度の予算は前年度をほぼ踏襲していますが、将来を見据えたデジタルトランスフォーメーション、国際交流、若手医師の育成等に予算が組まれています。これまでの会計理事も述べているように本学会の会計は健全であり、健全な運営は学会事務局の皆様により支えられています。

 無色無味に見える会計を意味付けしていくと、数字がカラーになって見えてくる気がします。日本眼科学会Webサイトの事業報告のページ(https://www.nichigan.or.jp/member/about/summary/jigyohokoku.html)に事業計画・事業報告・予算書・決算書が公開されています。興味を持ってみていただくことが、さらなる健全化につながると思われます。

  今年は「公益財団法人」に移行して12年目になります。今後も公益性の高い事業を行い、会計3原則を遵守し、「公益財団法人」であり続けることで、日本眼科学会が社会からのさらなる信頼を獲得できると思われます。会員の皆様には、今後ともご協力をお願い申し上げます。

公益財団法人日本眼科学会
常務理事 外園 千恵