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はじめに 日頃より、日本眼科学会雑誌およびJapanese Journal of Ophthalmology(JJO)の編集にご尽力いただいている読者、投稿者、査読者の先生方、そして編集事務の皆様に、心より感謝申し上げます。100年以上の歴史を誇る日本眼科学会雑誌は、大学間の垣根を越えた国内のエキスパートによる査読システムによって、若手研究者の論文を磨き上げる重要な役割を担ってきました。JJOに関しても、昨年は例年の1.44倍に当たる471報もの論文が投稿され、86報の高い質を満たす論文が受理されました。これも70名近い国内審査員の先生方のご尽力の賜物です。ちなみに、JJOでは査読者のお名前と国名は謝辞として毎年6号の掲載で公開されております(こちらのサイトでもご閲覧いただけます)。 その一方で、急速な社会変化に伴い、学会誌を取り巻く環境も大きく変化しております。この寄稿では、その変化を背景に、今後の学会誌のあるべき姿について皆様のお知恵を拝借したく、現状の課題と活動を報告させていただきます。
コミュニケーションスタイルの変化による課題 小さな活字で印刷された書物から情報を得ることが負担となる方がいる一方、デジタルデバイスは拡大機能やコントラスト調整によって利便性を提供しています。しかし、操作の難しさやサポート体制の不足から、デジタルへの移行がスムーズに進まない現状も存在します。若い世代においては、活字離れが進み、映像中心のコンテンツが好まれる傾向にあります。また、SNSの普及は情報拡散のスピードを加速させ、世代間の情報格差を拡大させています。特に、真偽不明な情報を拡散しやすいSNSの特性により、情報の受け手側に正しい情報を見極めるリテラシーが求められます。このように、コミュニケーションスタイルの多様化は世代間のギャップを生み出し、正しい知識を獲得し判断する力、そして会員一人ひとりが学会活動を支える姿勢を育むことの重要性を高めています。加えて、新型コロナウイルス感染症の流行は、対面以外のコミュニケーションの普及を加速させました。眼科診療における遠隔診療の導入、職場でのWeb会議、学会のハイブリッド開催など、その影響は多岐にわたります。さらに、国際的な場で日本の眼科学の強みを伝えるためには、英語によるコミュニケーションは不可欠です。生成AI技術の進化による翻訳精度の向上は、言語の壁を克服し、優れた研究成果を世界に発信するうえで大きな力となります。しかし、真に理解されるためには、専門性の高い内容を分かりやすくかみ砕いて説明する技術、すなわちサイエンスコミュニケーション能力が重要です。ところが、そういった技術を学ぶ機会はあまりないのが現状です。急速なデジタルツールの変化にキャッチアップし、会員一人ひとりが有する特技を皆で惜しみなく発揮し、オールジャパンで眼科学の未来を切り拓くために、どのようなコミュニケーション戦略が有効となりうるのか、ご意見を賜りたいと考えております。
昨年度の活動 大鹿理事長のご提案により、学会の幕間スライドで日本眼科学会雑誌とJJOへの論文投稿を促進するため広報活動が開始されました。日本眼科学会雑誌は、全会員がアクセス可能な歴史ある和文誌としての価値を再確認し、質の高い査読システムを維持していく方針です。また、評議員の先生方のご協力のもと、全国の若手会員を対象にアンケート調査を実施した結果、専門医試験受験者を意識した早期掲載証明の発行やカラー掲載費用の減額といった要望が寄せられました。これを受け、DOIコードの付与による早期オンライン公開、専門医志向者へのカラー掲載無料化について運用を開始しております。JJOに関しても、素晴らしい研究業績をお持ちの若手会員から意見を聴取し、JJO編集委員会への提言を行いました。「JJOインパクトファクター目指せ3点」をスローガンに、JJOの過去2年間の論文を積極的に引用いただくよう、論文リストの整備と定期的なアナウンスを実施しております。インパクトファクターの向上は、世界の研究者による論文の閲読と引用を促進し、日本の眼科学研究のプレゼンスを高めることにもつながります。より一層のご支援とご協力をお願い申し上げます。
おわりに 日本眼科学会雑誌は、会員間のコミュニケーションを深め、より多くのつながりを築くための重要な役割を担っています。すべての世代に共通する唯一の解決策はありませんが、各世代のニーズを丁寧に汲み取り、ハイブリッドなアプローチで課題解決に取り組むことが重要です。結束力の強い日本の眼科学の強みを生かし、今後を担う子どもたちに誇れる未来を創造するために、編集活動へのご関心とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
公益財団法人日本眼科学会 常務理事 中澤 徹
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