は じ め に
2025年度より日本眼科学会(以下、日眼)の「渉外担当理事」として常務理事を拝命しました。皆様、渉外という言葉にはあまり馴染みがないかもしれません。私も指名されるまで何をしているかよく知りませんでした(汗)。日眼事務局の山﨑さんにレクチャーを受けたところ、日眼と外部の組織、特に国際的な学術機関や他国の眼科学会との橋渡しを担うのがお役目でした。着任してからまだ日は浅いですが、本稿では、渉外理事の活動を通して見えてきた日眼の課題や展望、そして国際的な取り組みについてご報告させていただきます。
国際的な連携の強化
近年、社会全体でグローバル化が進んでおり、眼科領域も例外ではありません。アジアのリーダーの一員として、世界の研究者・臨床医との連携は不可欠となっています。日眼は、Asia-Pacific Academy of Ophthalmology(APAO)やInternational Council of Ophthalmology(ICO)、American Academy of Ophthalmology(AAO)、The Association for Research in Vision and Ophthalmology(ARVO)などと連携を深めてきました。
渉外理事として、これらの国際学会との窓口を担い、日本からの講演者・受賞候補者推薦やセッション企画、役員候補選定などに関与していくことになります。また、海外から日本への招聘も行っており、こうした双方向の国際的な交流を通じて、日本の眼科における臨床および研究の水準を世界に示すことができます。これは、日眼の国際的な評価を高めるうえでも重要です。
若手眼科医の国際的活躍を支援
国際連携の中でも重視しているものの一つが、若手眼科医の海外進出の支援です。自分もそうでしたが、英語での発表はハードルが高いと感じてしまいます。本学会では、若手の先生方が国際学会での発表・交流を経験しやすくなるよう、例えばAPAOのLeadership Development Programに若手の推薦を強化しています。日本からの若手の参加者が他国の同世代の医師と交流できる環境づくりに努めています。
さらに、日眼では、若手眼科医の国際活動を支援するためにYoung Ophthalmologists(YO)委員会を設置し、APAOのYO活動との連携を積極的に進めています。YO委員会は、APAOのYOシンポジウムへのパネリスト派遣や、YO Standing Committeeへの委員推薦などを通じて、若手医師が国際的な舞台で活躍する機会を広げています。
これらの活動を通じて、将来の国際的な共同研究やリーダーシップの芽を育てていきたいと考えています。
日本眼科学会が直面する課題
一方で、日本眼科学会が抱える課題も少なくありません。その一つは、国際的な情報発信力の不足です。国内における診療・研究の質はきわめて高いものの、その実力が海外で十分に認識されていない現状があります。学術誌への英語論文投稿数の増加、国際共同研究への積極的な参画、グローバルなプレゼンスの強化が今後の大きな課題です。
また、アジア諸国では急速に臨床・研究水準が向上しており、日本が「先進国」としての立場を維持するためには、継続的な努力と柔軟な国際戦略が求められます。渉外理事としては、学会としての戦略的な国際連携を企画・推進することも使命の一つと考えております。
今後に向けて
今後は、より多くの日本の眼科医が国際舞台で活躍できるよう、学会としての支援をさらに拡充していく必要があります。そのためには、会員の皆様の積極的なご参加・ご協力が不可欠です。若手からシニアの先生方まで、それぞれの立場で国際交流の担い手となっていただけるよう、日眼としても機会と仕組みを提供し続けてまいります。
最後になりますが、日本の眼科が世界の眼科領域をリードする存在であり続けるために、渉外という立場から微力ながら貢献していく所存です。引き続き、会員の皆様のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。