理事会から

2026/02/10

学会参加の意義とは? 学術的成長の3段階New

 学会参加の意義は人それぞれあると思います。勉強のため、発表のため、知人との交流を深めるため、専門医の更新のため、あるいは観光のため? 夜のご当地グルメを楽しむため? などでしょうか。しかし、ここでは学会を医師・科学者として成長するための舞台と捉え、そこには3段階の成長の過程があることを、特に日本の眼科の将来を担う若手に伝えたいと思います。この過程では第1ステージから第3ステージまで一段ずつしか進むことができず、途中のスキップはあり得ません。第3ステージは、個人の業績を超越して学問全体の進歩や科学力の底上げに直結するもので、日本の眼科の発展の礎石をなすものだと考えています。

 第1ステージ(受信):Dependency
 すべての成長は依存から始まります。まずは教わることです。しかし、学ぶにも多くのエネルギーが要ります。進歩する学問領域の情報量は増えていくばかりです。すなわち、真摯に学ぶという姿勢を選択したことこそが成長過程の大きな第一歩であり、第1ステージへと踏み出した段階と考えられます。聴講が学びの場であることはもちろんですが、筆頭演者として発表する経験はさらに貴重です。その際には、指導者に能動的・積極的に教わることです。アイデアをどんどんもらってください。与えられる環境は恵まれている証しです。ここで受動的・消極的に関わると次のステージには進めなくなります。貪欲に、しかし謙虚に学ぶ態度は、個人の高邁な意志が決めるものです。

 第2ステージ(発信):Independency
 個人が吸収する学術情報の受信量が増えていくと、知識が頭の中で統合され、問題意識といったものが生じます。眼科診療におけるアンメットニーズは何か、それらを打開したいという使命感が芽生えたり、知的欲求に駆り立てられて未知の事象を探究し、その成果を世に発信する側に立とうとします。第1ステージの既存の知識への依存から独立して、新たなアイデアを出し、自分だけが知り得た情報を与える立場に成長した段階が第2ステージです。データに基づいた解釈を加えて自説を展開するのは独立した研究者の特権です。いくつかの学会発表を経て、論文がシリーズ化すれば、オピニオンリーダーとしてさらなる発信が可能となります。しかし、そこで完成ではありません。たとえ論文を公表したとしてもその理論は独善的な「持論」に過ぎない場合もあります。さらなる成長の余地が残されているのです。

 第3ステージ(共同発信):Interdependency
 独立した研究者同士が垣根を越えて協調することにより、より高い次元の新たな情報を共同発信する段階です。研究者一人ひとりの個別な活動ではなし得ない、より包括的で公正な成果が生まれます。多施設共同研究、診療ガイドラインや診断基準の策定、コンセンサス論文の発表などを通じて、学会では各々が指導的役割を担うようになります。互いのアイデアを融合し、与え合うには、解釈や仮説の相違を建設的に受け止め、独善や偏向を排除した相互の交流が必要となります。そこでは、限られたパイを奪い合うような競争意識ではなく、逆に「成果は限りなく生み出すもの」というabundance mentalityを持った個々の集合体であるからこそ、この成熟した段階に到達できます。ですから学会参加とは、学問的のみならず社会的に人間として成長する機会でもあると思っています。学会もsociety(社会)と書きますね。いきなり第3ステージという成熟期から始まることがないのは自明ですが、最終的に到達したとしてもこれを維持するには、第1ステージの謙虚に学ぶ姿勢、第2ステージの探究と発信といった要素はいつまでも欠かせません。それぞれのステージは、次のステージを下から支える不可欠な土台として機能し続けるのです。

 おわりに
 日本の眼科学の発展は、どれだけ多くの学会員が第3ステージを体現してくれるのかにかかっていると感じています。学閥による分断では海外に対抗できません。日本眼科学会の戦略企画会議第二委員会では、Young Ophthalmologists Committee(通称YOC)を2023年に立ち上げました。期待に違わぬYOCメンバーの活躍は多くの会員のみなさまに周知のことと思います。当初は学会が主導したYOCではありますが、自治組織として長足の成長を遂げています。今後はこのような学術交流の集合体が自然発生し、次世代へと脈々と受け継がれていけば日本の眼科の将来は安泰でしょう。
 Girls and boys, be ambitious !

 

公益財団法人日本眼科学会
理事 石田  晋