理事会から

2020/07/10

緊急事態宣言下における日本眼科学会の活動

 昨年度の役員改選にて日本眼科学会監事に再選され、監事2期目の職責に就かせていただいています。ところで、本稿を執筆している時点で新型コロナウイルス感染症に対する我が国の緊急事態宣言が約1か月延長されました(5月31日まで)。感染者数は下降傾向にも見えますが、まだはっきりそうだと断定できないようです。入院される方より、退院される方が多くなって、病床にも余裕が出てきた時点で段階的な緩和の方向にいこうというのが政府の考え方かもしれません。今回のコロナウイルスの恐ろしいところは、重症化が急激にやってくるという点です。実際に感染者の治療にあたった医師の話をまた聞きしたところでは、重症になる人は、それまで比較的元気だったのに、ちょっと咳が出だして変だと思った途端にもう動けなくなってしまうということです。本稿が掲載される7月には、事態が好転していることを切に望みます。

 さて、このような緊急事態宣言下で、日本眼科学会はどのような活動をしているのでしょうか。緊急事態ということではあっても、日本眼科学会が取り決めている事業は可能な範囲で極力実行していかなくてはなりません。直近において最も切迫した状態であったのは、事業内容の【公1】で示されている学術集会の開催です。4月16日から開催予定の第124回日本眼科学会総会を予定どおりに開催するのか否かにつき、理事会と学会総会長の間で何度も討議が行われました。選択肢は、中止か延期か通常の形式以外での開催かでした。結論は皆様ご存知のようにWeb開催でした。学会参加の単位をどのようにするかについても眼科専門医制度委員会で何度も議論されWebでの視聴の確認が取れた参加登録者には単位を認める方向で決定されたことも大きな後押しとなったと思います。本稿執筆中の現在、Webで閲覧する発表演題はどれも素晴らしいものです。今後考えなければならない課題もいくつかありますが、まずはうまくいったと言えるのではないでしょうか。

 一方、【公3】で示される、眼科専門医の認定、育成、生涯教育及び研修施設の認定事業も厳しい状況に立たされていると思います。政府が要請している三密を避ける行動に関し、専門医認定試験の実施や専門医育成や生涯教育のための勉強会等がすべてこの三密に抵触し、実施が難しい状態となっています。勉強会に関しては、学術集会と同様にWebを利用した開催が可能と思われ、現にそのような動きも出てきているようですが、専門医認定試験に関しては、地方から東京の試験会場への移動が自粛要請されている現状や、分散開催にした場合は、公平性の担保が難しいなどの点があり、専門医制度委員会が何度もWeb会議等で議論を重ね、実施日は未定ですが延期との判断になりました。大都市圏における眼科専攻医のシーリング問題も含め、懸案事項が山積していますが、ここは皆で力を合わせて踏ん張っていきたいと思います。

 では、この緊急事態宣言を受けて、日本眼科学会は学会会員や国民に向けてこれまでどのような発信をしてきたのでしょうか。学会ホームページには、全国に緊急事態宣言が発出された4月7日に先立ち、眼科医療関係者宛てに、「新型コロナウイルス感染症に対する正しい理解のために―眼科医療関係者へ―」とのタイトルで、日本眼科学会理事長と日本眼感染症学会理事長の連名で本感染症の対応に関する注意喚起が3月24日付けでなされています。さらに、4月1日付けで、「新型コロナウイルス感染症の目に関する情報について(国民の皆様へ)」とのタイトルで、日本眼科学会理事長と日本眼科医会会長の連名で一般の方に向けての情報発信がなされています。また、ともすれば、眼科受診や眼科手術全体が“不要不急”と思われがちな現状に対して、4月17日付けでは、緊急の処置、手術を要する眼科疾患を挙げて、国民の目を守るための眼科医への指針を示しています。素早い、適格な対応と言えるのではないかと思います。しかしながら、忘れてはならないのは、今回のコロナウイルスを何とか切り抜けた暁には、ただよかったと喜ぶだけではなく、うまく対応できた点、至らなかった点、あるいは、対応を間違えた点につき、率直に反省することが肝要と考えます。ほぼ誰もが経験したことがない事態に対して、その判断の適否に関して誰かを責めるわけにはいきません。それだからこそ、この貴重な体験をしっかりと明日につなげることが重要と考えます。

公益財団法人 日本眼科学会
監事 富田 剛司