2021/12/10

新専門医制度への移行

 本年4月から大鹿哲郎理事長の新体制のもと、専門医制度担当の常務理事に就任いたしました三重大学眼科の近藤峰生です。これまで坂本泰二前専門医制度委員会委員長、堀田喜裕前専門医制度委員会副委員長から専門医制度について長年ご教授いただいたことをこの場をお借りして御礼申し上げます。専門医制度は、私たちが国民から信頼される眼科医であり続けるための根幹となるシステムです。また今後の専門医数の調整は将来の医師不足や医師過剰問題と直結します。緊張感を持ってこの責務を全うしたいと思います。

 新専門医制度は、いつから何が変わるのか
 2018年の4月から眼科専門研修をスタートした眼科医は、4年間の眼科臨床研修の期間を終えて来年(2022年)の6月に専門医認定試験を受験します。そして新専門医制度による眼科専門医の第1期生になります。以降の世代は、新しい日本専門医機構専門医の規則に従って5年後の更新に向けて必要な単位を取得していくことになります。この規則の詳細については、いずれ詳しく説明したいと思います。
 一方で、これまで日本眼科学会認定の専門医であった多くの眼科医が新専門医制度に乗り換えるのはいつからになるでしょうか。これについては、2022年の秋という案と2023年の秋という案のどちらかになる可能性が高く、日本専門医機構とその条件について交渉を重ねて最良の時期を検討しているところです。決定しましたら、すぐに会員の皆さんにご連絡します。

 新専門医制度への移行(乗り換え)の困難さ
 新専門医制度への移行の一番の問題は、新専門医制度の単位取得の複雑さと、それに伴うシステム構築にあります。例えば、これまでの日本眼科学会認定専門医では、5年間で100単位を取得すればよく、その単位は主に学会会場の入り口でカードを提示すれば済みました。しかし、新専門医制度の規則では「1人~4人以内の演者で1時間講演する講演・講習会等の受講による単位取得」となります。つまり新専門医制度では、特別講演、教育講演、シンポジウムなどの会場に出席して初めて単位を取得できることになります。これには、講演会場ごとにカードによる単位認証システムを導入する必要があります。地方で行われる講演会も同様です。
 さらに、「共通講習」が必修になります。これまでは「医療安全」、「感染対策」、「医療倫理」の3つが必修項目といわれていましたが、本年改訂された新更新基準ではさらに5つ「医療制度と法律」、「地域医療」、「医療福祉制度」、「医療経済(保険医療等)」、「両立支援」が加わり、共通講習は8つになりました。この8つ(特に後者5つ)の講演ができる適切な演者を確保し、共通講習に会場で出席できない会員のために日本眼科学会のホームページ上でe-learning講習が受けられる仕組みを作らなければいけません。現在、共通講習の専門の演者選定とシステムエンジニアによるe-learning受講システム作りの準備を進めています。

 移行措置期間の複雑さ、更新時の試験
 さらに複雑な問題があります。それは移行措置期間の点数配分です。日本専門医機構によれば、新専門医制度で更新を迎える眼科医は100%新専門医制度の方法で単位を取る方法よりも、決められた配分に従って新旧の方法を合算して単位を取る方法を推奨しています。この点数計算はあまりに複雑であることから、もっと簡便な方法で移行できないかを日本専門医機構と交渉中です。
 最後は、更新時の試験に関してです。最新の日本専門医機構の更新案では、「更新時に筆記試験(e-テストなども含めて)を行うことが望ましい」とされ、早かれ遅かれ更新時にはe-テストなどの試験を行うことになりそうです。これに関しては、地域の眼科医療に日々貢献している先生方を安易に不合格にする試験には決してならないよう、十分な配慮が必要と考えています。

 最 後 に
 新専門医制度に移行するという話は聞くものの、いつからどのように変わるか、不安に思っておられる会員は多いかと思います。この複雑な新専門医制度へスムーズに移行していくために、まずは専門医制度委員会を中心に十分議論して最終案を決定し、その後に内容を会員の皆様に分かりやすく説明することが重要であると考えています。どうかご理解とご協力をよろしくお願いします。

公益財団法人 日本眼科学会
常務理事 近藤 峰生